「憲法施行70年」シリーズ② (教科書ネット21ニュース)
◆ 憲法・教育基本法の視点から森友学園問題を考える
◆ 森友学園問題の要点は3つある
森友学園問題は主に3つの問題があります。
① 国有地をタダ同然で売却した問題、
② 森友学園の小学校開設の申請を規定を変えて認め「認可適当」と決定した問題、①②ついて、誰が、何故、さらに政治家などが関係した問題、
③ 森友学園・塚本幼稚園の教育内容の問題です。
森友学園の教育は、明らかに憲法・教育基本法に反する偏向教育、洗脳教育ですが、その内容は、安倍首相・安倍政権が推進する道徳の教科化や新学習指導要領がめざす教育を先取り・体現していたものといえます。
本稿ではこの問題を中心に明らかにしたいと思います。
◆ 森友学園の教育は洗脳教育
安倍首相は、当初、森友学園の籠池泰典理事長は「私の考えに非常に共鳴している方だ」「妻から(籠池)先生の教育に対する熱意はすばらしいと聞いている」と持ち上げていました。
ところが、森友学園問題がメディアで報じられ、国会でも追及を受けるようになると、「教育者の姿勢としていかがなものか」などと、「森友・籠池切り捨て」に露骨に動きはじめました。
森友学園が経営する塚本幼稚園の偏向教育は異常です。
毎朝の朝礼で、園児に「日の丸」の前で、「教育勅語」を暗唱させ、「君が代」を一斉唱和させ、「日の丸行進曲」や「愛国行進曲」、「海ゆかば」などの軍歌も斉唱させています。園児に年1回伊勢神宮にお泊り参拝させ、自衛隊の行事に園児を参加させ、「軍艦マーチ」などを演奏させています。極めつけは、15年の塚本幼稚園の運動会で次のような「宣誓」を園児たちが唱和したことです。
幼稚園児が教育勅語や「宣誓」で叫んだような内容が理解できるとは思えません。それを暗唱させるのは教育ではなくて洗脳、刷り込み、マインド・コントロールです。
戦前、戦中の子どもたちも、こうした洗脳によって、「軍国少女」「軍国少年」にされ、戦場に駆り出されたのです。
森友学園が開設を予定した小学校は、校内に神社を造り、日本で唯一の神道系小学校で、日本の文化や伝統、歴史を学ぶことによって愛国心を育むことを教育理念としています。
森友学園の教育は、憲法・教育基本法に明らかに違反した教育だといえます。森友学園の新理事長に就任した籠池泰典氏の長女籠池町浪(ちなみ)氏は、これまでの異常な教育は06教育基本法第2条の愛国心など教育目標を生かそうとした「前理事長なりの努力と工夫の結果」だったとして、今後は1947年教育基本法の指針に基づき教育内容を見直すという声明文を発表しました。
◆ 安倍首相夫妻は森友学園の教育を絶賛していた
名誉校長を引き受けていた安倍昭恵夫人は、3回も塚本幼稚園で講演していますが、2014年4月には、園児たちが、「日本国、日本国民のために活躍されている安倍晋三内閣総理大臣を、一生懸命支えていらっしゃる昭恵夫人、本当にありがとうございます。ぼくたち・わたしたちも頑張りますので、昭恵夫人も頑張ってください」と唱和すると、安倍昭恵夫人は「感動しちゃいました」と涙を流していました。
15年9月5日、名誉校長の名で行なった講演では、「こちらの教育方針は大変、主人も素晴らしいと思っている。(卒園後)公立小学校の教育を受けると、せっかく芯ができたものが揺らいでしまう」と、公立学校の教育内容に否定的な発言をし、だから、塚本幼稚園の(洗脳)教育を続けるためにも小学校をつくるのだと、その意義を語っていた。
昭恵夫人は名誉校長として次のように挨拶しています。
籠池氏は日本会議・日本教育再生機構を通じても安倍首相とつながっています。森友学園の幼稚園教育や開校を目指した小学校での教育は、日本会議の教育方針の具体化といっても過言ではありません。それは同時に、安倍政権がめざす「戦争する国」の教育を体現したものです。
◆ 松井知事と安倍首相がめざした教育と森友学園
森友学園が小学校開設に動きだした一つのきっかけは2012年2月26日にあります。
この日、育鵬社教科講をつくっている日本教育再生機構が、大阪で「教育再生民間タウンミーティング」を開催しました。
この集会に、安倍晋三首相(当時は野党で前首相ですがここでは首相と表記します)はパネリストとして出演し、松井一郎大阪府知事、八木秀次「再生機構」理事長と共演し、安倍首相と松井知事がはじめてドッキングしました。
この集会で安倍首相は、1947年に制定された憲法と教育基本法は「戦後レジーム(体制)」そのものであり、この「戦後レジーム」から脱却するのが自分の信念だといい、自分の誇りだとする2006年の「教育基本法改正の一丁目一番地は道徳教育」であり、「伝統と文化、郷土愛、愛国心も書き込んだ」と自画自賛しています。
そして、安倍首相は当時、大阪市議会で審議されていた「国旗国歌起立条例案」、大阪府議会で審議中の「教育行政基本条例案」について、これを支持する意見を述べます。
安倍首相は、大阪の教育基本条例は教育基本法と方向が同じ、教基法を地域で具体化するものだと称賛しました。
この集会で、安倍首相と松井知事は壇上で固く握手して、自民党と維新が連携して教育再生政策を進めることを確認しました。
当時、大阪市と大阪府の自民党議員団は「国旗国歌起立条例」「教育基本条例」に反対していましたが、この安倍発言の直後に賛成にまわり、「教育基本条例」には「愛国心」を盛り込む修正で可決されました。
安倍首相は、この大阪教育基本条例は安倍教育改革を具体化、推進するものとして、松井知事と連携して進めることを約束しました。
この条例の内容は、森友学園で行われていた教育そのものであり、この条例を実施していくモデルとして森友学園・籠池氏に白羽の矢を立てたのではないかと推測されます。
森友学園が小学校用地を探し始めたのはこの1年後の2013年からです。
安倍首相と松井知事は、06年教育基本法、大阪教育基本条例を具体的に実行するモデル学校として、森友学園を考え、塚本幼稚園が行っている教育を小学校でも実行するものとして瑞穂の國記念小学院の設置・開校を全面的にバックアップしてきたのではないでしょうか。
いま、安倍政権は戦争法によって日本を「戦争する国」に変え、それに必要な「人材」育成をめざす道徳の教科化や新学習指導要領など「教育再生」政策を進めています。安倍首相がめざす、憲法改悪を先取りして国のかたちを変える教育のモデルが森友学園の教育だといえます。(たわらよしふみ)
『子どもと教科書全国ネット21ニュース 113号』(2017.4)
◆ 憲法・教育基本法の視点から森友学園問題を考える
俵 義文(子どもと教科書全国ネット21事務局長)
◆ 森友学園問題の要点は3つある
森友学園問題は主に3つの問題があります。
① 国有地をタダ同然で売却した問題、
② 森友学園の小学校開設の申請を規定を変えて認め「認可適当」と決定した問題、①②ついて、誰が、何故、さらに政治家などが関係した問題、
③ 森友学園・塚本幼稚園の教育内容の問題です。
森友学園の教育は、明らかに憲法・教育基本法に反する偏向教育、洗脳教育ですが、その内容は、安倍首相・安倍政権が推進する道徳の教科化や新学習指導要領がめざす教育を先取り・体現していたものといえます。
本稿ではこの問題を中心に明らかにしたいと思います。
◆ 森友学園の教育は洗脳教育
安倍首相は、当初、森友学園の籠池泰典理事長は「私の考えに非常に共鳴している方だ」「妻から(籠池)先生の教育に対する熱意はすばらしいと聞いている」と持ち上げていました。
ところが、森友学園問題がメディアで報じられ、国会でも追及を受けるようになると、「教育者の姿勢としていかがなものか」などと、「森友・籠池切り捨て」に露骨に動きはじめました。
森友学園が経営する塚本幼稚園の偏向教育は異常です。
毎朝の朝礼で、園児に「日の丸」の前で、「教育勅語」を暗唱させ、「君が代」を一斉唱和させ、「日の丸行進曲」や「愛国行進曲」、「海ゆかば」などの軍歌も斉唱させています。園児に年1回伊勢神宮にお泊り参拝させ、自衛隊の行事に園児を参加させ、「軍艦マーチ」などを演奏させています。極めつけは、15年の塚本幼稚園の運動会で次のような「宣誓」を園児たちが唱和したことです。
「おとなの人たちは、日本がほかの国々に負けぬよう、尖閣諸島・竹島・北方領土を守り、日本を悪者として扱っている中国、韓国が心改め、歴史教科書で嘘を教えないようお願いいたします。安倍首相、ガンバレ!、安倍首相、ガンバレ!、安保法制国会通過よかったです!」塚本幼稚園に学んだ子どもが、街を歩いている時に、旗(日の丸ではない)が飾ってあるのを見て、突然、直立して「きょういくちょくご、チンおもうに…」とはじめてびっくりしたというお母さんの話や、テレビに安倍首相が写ったら子どもが「ばんざい!」と叫んだというお母さんの話もあります。
幼稚園児が教育勅語や「宣誓」で叫んだような内容が理解できるとは思えません。それを暗唱させるのは教育ではなくて洗脳、刷り込み、マインド・コントロールです。
戦前、戦中の子どもたちも、こうした洗脳によって、「軍国少女」「軍国少年」にされ、戦場に駆り出されたのです。
森友学園が開設を予定した小学校は、校内に神社を造り、日本で唯一の神道系小学校で、日本の文化や伝統、歴史を学ぶことによって愛国心を育むことを教育理念としています。
森友学園の教育は、憲法・教育基本法に明らかに違反した教育だといえます。森友学園の新理事長に就任した籠池泰典氏の長女籠池町浪(ちなみ)氏は、これまでの異常な教育は06教育基本法第2条の愛国心など教育目標を生かそうとした「前理事長なりの努力と工夫の結果」だったとして、今後は1947年教育基本法の指針に基づき教育内容を見直すという声明文を発表しました。
◆ 安倍首相夫妻は森友学園の教育を絶賛していた
名誉校長を引き受けていた安倍昭恵夫人は、3回も塚本幼稚園で講演していますが、2014年4月には、園児たちが、「日本国、日本国民のために活躍されている安倍晋三内閣総理大臣を、一生懸命支えていらっしゃる昭恵夫人、本当にありがとうございます。ぼくたち・わたしたちも頑張りますので、昭恵夫人も頑張ってください」と唱和すると、安倍昭恵夫人は「感動しちゃいました」と涙を流していました。
15年9月5日、名誉校長の名で行なった講演では、「こちらの教育方針は大変、主人も素晴らしいと思っている。(卒園後)公立小学校の教育を受けると、せっかく芯ができたものが揺らいでしまう」と、公立学校の教育内容に否定的な発言をし、だから、塚本幼稚園の(洗脳)教育を続けるためにも小学校をつくるのだと、その意義を語っていた。
昭恵夫人は名誉校長として次のように挨拶しています。
「籠池先生の教育に対する熱き想いに感銘を受け、このたび名誉校長に就任させていただきました。瑞穂の國記念小學院は、優れた道徳教育を基として、日本人としての誇りを持つ、芯の通った子どもを育てます。そこで備わった『やる気』や『達成感』、『プライド』や『勇気』が、子ども達の未来で大きく花開き、其々が日本のリーダーとして国際社会で活躍してくれることを期待しております」と。森友学園の籠池泰典理事長は日本会議大阪の運営委員、妻で副園長の諄子氏も日本女性の会大阪の幹部です。さらに、育鵬社版教科書を作成している日本教育再生機構とも関係が深いといえます。
籠池氏は日本会議・日本教育再生機構を通じても安倍首相とつながっています。森友学園の幼稚園教育や開校を目指した小学校での教育は、日本会議の教育方針の具体化といっても過言ではありません。それは同時に、安倍政権がめざす「戦争する国」の教育を体現したものです。
◆ 松井知事と安倍首相がめざした教育と森友学園
森友学園が小学校開設に動きだした一つのきっかけは2012年2月26日にあります。
この日、育鵬社教科講をつくっている日本教育再生機構が、大阪で「教育再生民間タウンミーティング」を開催しました。
この集会に、安倍晋三首相(当時は野党で前首相ですがここでは首相と表記します)はパネリストとして出演し、松井一郎大阪府知事、八木秀次「再生機構」理事長と共演し、安倍首相と松井知事がはじめてドッキングしました。
この集会で安倍首相は、1947年に制定された憲法と教育基本法は「戦後レジーム(体制)」そのものであり、この「戦後レジーム」から脱却するのが自分の信念だといい、自分の誇りだとする2006年の「教育基本法改正の一丁目一番地は道徳教育」であり、「伝統と文化、郷土愛、愛国心も書き込んだ」と自画自賛しています。
そして、安倍首相は当時、大阪市議会で審議されていた「国旗国歌起立条例案」、大阪府議会で審議中の「教育行政基本条例案」について、これを支持する意見を述べます。
安倍首相は、大阪の教育基本条例は教育基本法と方向が同じ、教基法を地域で具体化するものだと称賛しました。
この集会で、安倍首相と松井知事は壇上で固く握手して、自民党と維新が連携して教育再生政策を進めることを確認しました。
当時、大阪市と大阪府の自民党議員団は「国旗国歌起立条例」「教育基本条例」に反対していましたが、この安倍発言の直後に賛成にまわり、「教育基本条例」には「愛国心」を盛り込む修正で可決されました。
安倍首相は、この大阪教育基本条例は安倍教育改革を具体化、推進するものとして、松井知事と連携して進めることを約束しました。
この条例の内容は、森友学園で行われていた教育そのものであり、この条例を実施していくモデルとして森友学園・籠池氏に白羽の矢を立てたのではないかと推測されます。
森友学園が小学校用地を探し始めたのはこの1年後の2013年からです。
安倍首相と松井知事は、06年教育基本法、大阪教育基本条例を具体的に実行するモデル学校として、森友学園を考え、塚本幼稚園が行っている教育を小学校でも実行するものとして瑞穂の國記念小学院の設置・開校を全面的にバックアップしてきたのではないでしょうか。
いま、安倍政権は戦争法によって日本を「戦争する国」に変え、それに必要な「人材」育成をめざす道徳の教科化や新学習指導要領など「教育再生」政策を進めています。安倍首相がめざす、憲法改悪を先取りして国のかたちを変える教育のモデルが森友学園の教育だといえます。(たわらよしふみ)
『子どもと教科書全国ネット21ニュース 113号』(2017.4)
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