『笛物語』

音楽、フルート、奏法の気付き
    そして
  日々の出来事など

フルート奏者・白川真理

「のせる」から「つまむ」に

2021-03-04 01:25:39 | 気付き
右手の話です。

左手親指は、元々が「曲げる派」だったので、今回の「自動音量調整レバー」(勝手に仮のネーミング)を行うのには丁度良かったのですが、問題は右親指。

ずっと伸ばした側面にフルートを載せて吹いていた。

一時、勝手に曲がっていた時期もあったものの、結局はまた伸びて。

今回、「浮き構え」とそれに伴う新たな手の内とその操作による「自動音量調整レバー」を行ってみて愕然としたのは、この親指の状態により、右腕全部、いや、右半身全部がザザザっと変化すること。

のばした親指の時は、いわば縄をかけられたよう、

それが、カクカクと曲げた状態の時は、その縄が解かれて、自由の身に。

特に、腕全体の内側の感覚の差が著しい。

これは、今までに感じたことのないものでした。

・・ざくっと半世紀、縛られ続けていたんだね、私の右腕は・・
はいはい。伸ばして載せるのが「普通」だったからね。

と、なんともやるせない心の声。

この「自動音量調整レバー」は、私の感覚では、カクカク親指にして「浮き構え」をやり続けているような感じ。

即ち、「浮き続ける」ことの出来る技。

とはいえ、最初は苦労しました。

ゆっくりの時はともかく、早いパッセージではまだまだ。

その上、低音の時などはキーを押さえ損なって,鳴らなかったりもして、びっくり。

大概、モデルチェンジする時は、驚くくらいにスルっと新たなものが古いものと入れ替わるのですが、こんなに難儀しているのは、今回が初めてです。

それだけ、右親指の間に合わせが刷り込まれていたのだと思う。半世紀分だもの、しょうがない。

でも、それでも、敢えて練習しない1週間にし、0から右手を工夫することで、ここ2日ばかりで、ようやくメドが立ちました。

「つまめばいいんだ」というのが結論。

それも、例えば、電車の中で、軽くバーに触れる程度の「つまむ」
・・まあ、昨今は電車ではもうどこにも触れないけれど・・

ガシっと握りしめなくても、チョンと触れるだけでも転びにくくなる、といった感じです。

「つまむ」ができるのも、数年前に気付いて実践している

「頭を使う」

という技をやっているからこそ。

頭は頭でも、その中身ではなく、頭の重さを利用。

左腕と頭で楽器を挟むようにし、頭の重さを載せることで、本来アンバランス(右側が重い)なフルートの重心を変化させ、釣り合わせる、という凄い?技。

もう何年も前からこうしていたのに、まだ親指に楽器を載せていたのだなあ・・

今は「つまむ」

それも、フルートの腹?に親指先端を突き刺すような感じの「つまむ」です。

これらのカクカク親指にした後の「自動音量調整レバー」による変化は、多分過去最大。

「水月・浮雲」の評判が、ありがたいことにとても良く、それはもちろん嬉しいけれど、

でも、あのCDの音とは、全く異なる別世界、格違いの音が出た。

自動で音量が調節できる、ということは、実感としての吹き方はみな同じ。

より「生」の実感からは遠ざかる。

もしかしたら、これこそが、師・植村泰一先生が仰っていた

「自分には聴こえないように吹くんだよ」

ではなかろうか?

音量をわずかに上げるレバーを操作すればよいのだから、使う息はより少なくても良い。

ピアニシモの吹き方がそのままフォルティシモにもなる、って?

本当にそうなのだから、魔法みたいです。

家電の省エネ化がどんどん進化しているのだそうですが、そんな感じ。

・・かつては、なんと無駄に息を使ってしまっていたんだろう・・

それにしても、「虎拉ぎ」や「浮き構え」を思いつかれる甲野先生、って・・

本当に、とんでもない方なのだなあ、と改めて感じ入ってしまいます。