『笛物語』

音楽、フルート、奏法の気付き
    そして
  日々の出来事など

フルート奏者・白川真理

専門誌「ザ・フルート」8月号 コンサートレビュー掲載

2022-06-12 00:36:54 | 音楽・フルート
3月26日のコンサート
https://blog.goo.ne.jp/pipipipi/e/cc381e212fa19949f930922fc3bd27e0

のレビューが専門誌「ザ・フルート」8月号に掲載されました。



今回は人生初のゾーンに入れた本番で、貴重な経験となったのだけれど、ようやくのリアル開催で、音楽を会場にお越しの皆様と共有できたことが何より幸せだった。

人柄が温かかどうかははなはだ疑問ではあるし、過分なレビューだけれども、植村先生や甲野先生とのご縁をいただいてから今日までの、約20年間、取り組んできたことを評価していただけたことが、とても励みになりました。

ありがとうございました!

(レビュー記事)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

フルート奏者として武術の術理を楽器演奏に取り入れ活躍する、白川真理さんのフルートコンサートが約2年3か月ぶりに開催された。

コンサートはバロック音楽を中心に演奏された。

目で見ていても分かる、身体や呼吸に無理のない白川さんの自然な奏法により、19世紀に作られたというルイ・ロットの温かい音色が会場中に響き渡った。

またテレマンとバッハ親子の親交や、ビーバー作品に出てくるラメント・バスなど、白川さんの穏やかな語り口で紡がれるMCにも大変興味をそそられた。

各作品に込められた感情的な部分を汲み取った演奏は、ある時は物悲しく嘆くように、ある時は踊るように明るく華やかに演奏され、大変ドラマチックなものだった。

休憩後には使用しているルイロットの話もあり、後半1曲目のダッラーバコの演奏では、よりルイ・ロットの響きに注目して聴くことができた。

ラスト3曲は白川さんご自身の作品。

本コンサート初演の「ウクライナの風」は昨年秋ウクライナ生まれの作曲家・カプースチンの探求をきっかけに作曲したのだそう。

旋法を取り入れた異国情緒あふれるメロディの中には爽やかさも感じられる。

ウクライナへ思いを馳せ、平和を願う気持ちがより強くなった。

「浮雲」と「水月」はどちらも日本の寺社仏閣にインスピレーションを受けた楽曲で、思わず"和の心"がくすぐられる。

宇高さんのギターソロも大変美しく、引き込まれた。

「浮雲」は広大な空と雲をイメージさせるようなメロディが印象的で、「水月」は添えられた「恋の歌」に準えるような切ない旋律とハーモニーが魅力的。

アンコールはバッハの「シチリアーノ」を宇高さんとともに演奏され、終始白川さんのお人柄が溢れる、ぬくもりに満ちたコンサートだった。
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偶然、同じ頁に、同門で、ロットを吹いている若手・河野彬くんの意欲的なリサイタルのレビューが掲載されていたのも嬉しかった。



レビューは音楽評論家でかつて私のセカンドCDの帯も書いてくださった、笛吹き仲間でもある西村祐氏。
辛口ながらも愛情と理解溢れる語り口はいつも音楽に誠実だ。

河野くんに最初に会ったのは植村先生の講習会で、まだ高校生だったっけ。
元気の良い、感じの良い坊やが居るなあ・・と思っていたら、ぐんぐんと成長して、良い音楽家になっていてびっくり。

こうして次世代の笛吹きにも、植村先生の教えが引き継がれていることがたまらなく嬉しく、頼もしい。

この中で、西村氏がロットについて的確に評しているので、部分記載をさせていただきたいと思う。

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フルートの「ストラディヴァリウス」とも呼ばれる銘器を数多く生み出した工房だが、扱いや演奏が難しいことでも知られ、その楽器の個性を充分に引き出すことは簡単ではない。
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・・そう。
  簡単ではない・・・
この文章を読んで、ある日の光景がバっと浮かんできた。
15年程前のことだったか。

植村先生がコンサートの打ち上げの席で仰っていた。

「ロットがね、僕に言うんだよ。おまえはまだ俺でこんな音しか出せないの?って。」

あの神がかり的な演奏の後でそう思うのか?と横で目を丸くして聞いていた私に、Iくんだったか、T先生だったかが、冗談めかして笑いながら言った。

「白川!おまえが言うんじゃないよ!」

もとよりそんな恐れ多いことは当時、思いもしなかったけれど、こうして気付きと変化が続いている今、やはり、私も毎回同じことを感じている。

それは敢えて吹きにくいロットを選んだ笛吹き、みな同様ではないかと思う。



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