集団権自衛権。
なんか変。
集団自衛権。
もっと変。
集団的自衛権。
そう、これこれ。
よその家の奥さんの方がうんと美人に見えてしまうのはなぜか。
それは、よその家の弁当の方が豪華に見えてしまうのと同じ現象さ。
と、自分に言い聞かせるようにしている。
現場写真を印刷せねばならぬ。
デジカメのUSBコードを探す。
隠れ家は分かっている。
この作業台のこのあたりにいる。
書類の山の中に埋もれたつもりだろうがそうはいかない。
ほら、灰色の細い尾っぽが飛び出ている。
見つけたり。
こいつをつまんでひょいと引きあげる。
書類や図面の合間からスルスルとコードが顔を出す。
スルスル、スルスル、頭部のコネクターまで一気に引きあげる。
書類や図面が大きく隆起して近くにあったオロナインH軟膏を持ち上げる。
オロナインH軟膏が体勢を崩してコロコロコロと書類の上を転がる。
加速を付けて作業台の縁から飛び出る。
そのまま私の足の上にボトリ。
あ痛たーーーす!
注釈:北部九州では「あ痛たーーー」のあとに「す」が付く。
市役所に行く。
書類の訂正を命じられる。
建物用途は「事務所」ではなく、「付属駐輪場」と書くこと。
担当者の前で「付属駐輪場」と書く。
しょっぱなの「付属」の漢字が出てこない。
「付」の字はなんとかわかるが「属」の字が思い浮かばない。
さりげなくバックの中をいじくる。
時間稼ぎをして思い出そうとする。
と、何かを思いついたようにして担当者が席を立つ。
その隙に携帯で漢字を調べる。
しめしめ。
ことなきを得る。
続いて書類に「既存宅地の救済」と書き込むように命じられる。
今度は「救済」の「救」の字が出てこない。
携帯をいじる隙はない。
担当者が目の前で見ている。
仕方なく「どんな字でしたかね」と担当者に訊ねる。
担当者は手を動かして漢字の形を示す。
ふにゃふにゃした手の動き。
解読不能。
紙を出して担当者に書いてもらう。
なにやらモゴモゴする担当者。
紙に書きだすも字になっていない。
なんだ、知らないの。
私と同じ漢字馬鹿じゃん。
アメリカ海軍による台風27号の予想進路図。
気象庁の発表より先をいっている。
この分だと26号と似たコースを進みそう。
強さは26号をさらに上回る。
最大瞬間風速75m。
無茶苦茶強い。
九州とて油断はできない。
イチジク危うし。
この季節はアレルギーがでる。
鼻がモゾモゾしだしたので耳鼻科にいく。
まだ秋物の上着を出していなかったので新品のシャツをおろす。
値札とか襟の厚紙を外しシャツを着る。
耳鼻科まで車で4分。
ここの耳鼻科は手際がよい。
3分診療ならぬ30秒診療だ。
スピードを好む私にはもってこい。
待合室で待たされること3分。
先生にこんにちは、といって診察椅子に座る。
先生 「どうしましたか」
私 「鼻がモゾモゾと・・・」
といったところで女性の看護師さんが後ろから声をかける。
私の襟元に手をやりながら「シールとっときますね」。
えっ、首に貼っているピップエレキバンを取るんかい。
鼻と何の関係があるんかい。
と、慌てふためいていたら、看護師さんが取ったシールを見せてくれた。
1.5cm角の透明のシール。
中央に「L」という文字が書かれている。
おニューのシャツにシールが付いたままだったのか。
そんなんまで取ってくださるとは・・・
おとといの話。
日暮れ前にうちの庭のイチジクを眺めていた。
うちのイチジクは驚くほどに美味い。
三ツ星レストランの食材に使えるのほどの美味しさと自負している。
イチジクは熟しだしてからが早い。
赤くなりだしたら三日くらいで収穫のときを迎える。
ちょうどいま、赤くなったイチジクがひとつ実っている。
いつもはここで採ってしまうのだがほんとうはあと一日おく方がいい。
イチジクの粒粒がやや半透明になり少しジュルとなったときがベストだ。
一気に甘みが増す。
さて、ここで採るべきか採らざるべきか。
迷うところだ。
まもなく夜になる。
カラスに盗られることはない。
昼ほどには虫もいないだろう。
そう判断して、採るのを一日延ばすことにした。
しかし、まさか遠く離れた台風があれほど強くなるとは・・・
夜が深まるほど風は強まっていった。
風呂に入っているときに思い出した。
イチジクが風に落とされる。
いや、もう落ちているかもしれない。
熟したイチジクは根元がもろい。
風呂から上がったのは深夜の二時前。
さすがにこの時間には行けない。
あきらめて寝ることにした。
あのとき、採っておけばよかった。
後悔するとよけいに気になってくる。
馬鹿げているとは思いつつも気持ちを抑えることができない。
一度は消した寝室の照明をまたつける。
幸い、オカンは完全には寝ていない。
4回頼み込んで同行してもらうことにした。
ウソだろ、って顔をし続けたが私の本気度に音を上げてしまった。
後ろに立っているだけでいい。
そうと決まれば早い。
懐中電灯を片手に颯爽と外に出る。
寒いので上着は着ているが下はパンツのままだ。
だれも起きてはいない。
庭は真っ暗闇。
雨はしとしと降っている。
風はそこそこ強い。
赤いイチジクの場所は分かっている。
この枝の中ほどに・・・
ない。
落ちている。
落ちたイチジクの根元の断面に白い汁が残っている。
落ちてまもない。
ここから真下に落ちたとみるべし。
真下の枯草の中を探す。
ない。
周辺も探す。
ない。
なぜかない。
誰が盗った。
狸かムカデか。
ゾゾッ。
寒気がしてきた。
それでもあきらめない。
雨に濡れながらも草むらをかき分ける。
ふと、ひらめく。
強風にあおられて落ちたのならば真下には落ちていない。
もっと広範囲を探すべし。
半径80cmの範囲を探すべし。
3分経過。
まだない。
どこにもない。
埋もれるほどの草むらではない。
なのにない。
もうないのかもしれない。
と諦めかけたとき、少し離れたところに赤黒い塊を見つける。
これだ。
目星を付けていたイチジクだ。
即座に掴んで家に帰る。
時刻は2時を過ぎていた。
軽く洗ってラップに包んで冷蔵庫に入れる。
次の日の夜、食べた。
極上の甘さだった。
一日待ったかいがあった。
〇