2009年2月15日。ロンドン Wigmore Hall。
Mozart: Flute Quartet in D, K285
Mozart Piano Quartet in G minor, K478
Schubert String Quintet in C, D956
English Chamber Orchestra Ensemble
Simon Crawford-Phillips: Piano
William Bennett: Flute
Stephanie Gonley: Violin
Annabelle Meare: Violin
Jonathan Barritt: Viola
Caroline Dale: Cello
Jesper Svedberg: Cello
再び音楽モードに入っていて、朝チケットを取る。Wigmore Hallは最前列がかぶりつきで好き。今日はA8。
フルートのベネット氏-絶対何処かで聞いたことのある名前だ。。。と思う。会場に行っても更に考え続ける。演奏を聴くうちに、確信に変わる。そう、20年前(1989年!)、地元のホールでこの人の演奏を聴いている。そして、演奏の後の打ち上げで、一緒にお鮨を食べた(結局食べ物の記憶!)。
休憩時間に楽屋に伺う。もう20年前で、記憶もおぼろげ、とのこと。何でも奥様が日本人とか。なるほど、昔の記録によれば、アンコールで朧月夜、浜辺の歌、赤とんぼを演奏されているが、そういうことだったのだ。
残念ながら、その時伴奏者を務めていらしたベンソン氏は半年前に他界されたとのこと。20年という年月をいやがうえにも感じる。
休憩後のシューベルトは秀逸であった。活き活きとした演奏に、引き込まれ、体が動きそうになる。
シューベルトの弦楽五重奏曲。そのユニークな編成(ヴィオラではなくチェロが2本)と死の年の作品で最後の室内楽曲ということで有名。遺作のピアノソナタD960と極めて似たメロディーが使われている。そのためか、同じように若草色の草原を疾走するイメージがある。ピアノソナタ程の悲劇性は感じないが、何かに突き動かされているように最後へ向かって盛り上がってゆく。
思わず、こういう素晴らしい作品を作るインスピレーションを与えられる代わりに余命1ヶ月と平々凡々と平均寿命を全うする人生とどちらを選ぶだろう?なんて馬鹿なことを想像してしまう。
前者を受け入れて、こんなに素晴らしい作品を残してくれたシューベルト、ありがとう。私は貴方の作品を、聴き、演奏する楽しみをこれからまだまだ充分に味わった後に旅立ちたいと思います。家のスタインウェイで弾くD960は、本当に美しいことを今日も発見しました(全然弾けていないけれど、それでも非常に美しい)。