先日リヨンに行った際、村上春樹の『神の子供たちは皆踊る』のフランス語版『Apres le tremblement de terre』を購入して、会社の行き帰りなどに読んでいた。これまで、どんな本も外国語で読むことをしなかった私であるが、今回初めて日本語で読んだことの無い本を読了した。
この『神の子供・・・』は阪神淡路大震災に何らかの形で絡んだ短編からできている。それぞれ、奇妙な話ばかりなのだけれど、私のフランス語力不足ではなく(多分)、書いて欲しい、と思うことが書かれていないことに気がついた。肩透かしを食らった、とでも言うのだろうか。想像させることが村上の得意技だとよく思うのだけれど(私はいろいろと想像させられてしまう、担がれやすい読者だ)、この短編は「肝心なことを言わない」ことによって想像させることを狙っているのではないかと思われた。書くことを生業としている村上が書かないことによってお金を稼ぐ。。。?
読了できた理由の一つに、訳の上手さなのかもしれないが、生き生きとした日常のフランス語会話が、そのまま伝わってくる感じがしたことも挙げられよう。更に小説の中に出てきたカエルが知人のフランス人にそっくりに感じられたことも、面白みを増してくれた。「Mais bien-sure, mais bien-sure」(maisを短く切る感じで)という何気ない言葉に、誰とは言わないけれど知人の顔を思い出して、電車の中にもかかわらず笑ってしまった(誰か分かっても絶対本人には言わないように!しるぶぷれ)。
ダメです、言えません。。。