風の生まれる場所

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言葉へ置き換えていけたら・・・

闇の子供たち

2008年08月07日 10時51分18秒 | 医療





これは、事実か、真実か、現実か
(パンフレットのコピーより)


広島に原爆が投下された日、私は娘と渋谷にある映画館(シネマライズ)へ向かった。
世界を知るために、現実を、私が海外で浴びせられてきた質問、
“日本人のあなたは日本人が行っている現実を知っているの?”と
再度、向き合うためでもあった。


原作、梁 石日(闇の子供たち 幻冬舎文庫)
監督、阪本 順治
出演、江口 洋介、宮崎あおい、妻夫木 聡、豊原 功補、鈴木 砂羽、佐藤 浩市 他
音楽、岩代 太郎 ・ 主題歌 桑田 圭祐
http://www.yami-kodomo.jp/


幼児売春宿、臓器密売の“闇”がテーマとなっている作品だ。
“値札のついた命”
生きたままって知っていましたか?
臓器を提供する子供です・・・・・・
http://www.yami-kodomo.jp/


21歳になったばかりの私は、当時まだビザの必要な韓国へ行った。
理由は戸籍の取り扱いについて、この国のシステムを知るためだった。
が、機内には男性客がほとんどで、女性は・・・といえば、数人、おそらく片手で足りただろう。

同行していた方は在日韓国人男性であったので、その異様な光景について、
“現実をみる覚悟があるなら案内する”として、男性客が韓国へ向かう理由を、現実を
衝撃的に目の当たりに突き付けてきたのだった。
現実をみろ、と言って。

セックス産業、つまり、カラオケと看板の書かれた店内で行われていたのは、
ストリップなど生易しい、公開セックスとでもいうのだろうか。
私は店外へ出て、食べたものがなくなるまで吐き、最後は胃液の苦味が口中に広がった。

その後、フィリピンへ。
性産業はもっと過激になっていた。
つまりどのようなことかと言うと、私がそのときに目にした子供の最低年齢は10歳の少女、
スラム街へ行けば父親が日本人だという子供を容易に目にすることができた。
もちろん、父親がわかっている子供もいる場合もあるが、養育しているはずはなかった。
なぜならば、日本には家族がいる。
責任など負うはずがないだろう。
(もちろん、日本人側が被害を受けている場合もあることは存じていますので
すべてではないことをどうかご了承ください)

宗教上の理由で、堕胎せず子供を産んでいる。
(堕胎を推奨するものではありません)
相手にする客を目撃できたので、その日本人は70歳近い人もいた。
またしても私は吐いた。
そして、日本人なのになぜフィリピンで起こっていることを知らないの?と叱咤された。

タイやカンボジアでも同じだった。
高級ホテルに泊まる外国人の客室から、
午前5時、朝食のビュッフェを楽しみにする客と鉢合わせしない時間帯に少女たちは帰宅する。

去年の9月に療養のために滞在したバンコクでは、
同行者たちの一部が買春目的だったようで、
夕食を共にするたびに、その話題で男たちは盛り上がっていた。
しかも高級ホテルやレストラン、
食事がすすむはずもなく、
私は周囲にいる日本人ビジネスマンたちの冷めた、軽蔑した視線にただ言葉もなく、
深々と頭をさげるのが精一杯だった。

その後、タイやインドでは臓器移植について尋ねられることが多かった。
尋ねられる・・・というよりも、あなたは知っているの?と厳しい言葉を浴びせられた。
それは“臓器提供者が生きたまま”であることだ。

“金持ちの国のやることは違うな。臓器まで買いにくるのか!”と
同じ日本人だということで、私が責められた。

私は金持ちでもなければ、日本は金持ちでもないと説明しても
高額な臓器を買える客は、日本人と欧米人が圧倒的なのだそうだ。


私は臓器移植についての賛否は正直持ち合わせていません。
それは、当事者でないので、わからないしか言えないからです。

大切な人、自分、家族の命を助けたいとは誰しもが思うでしょう。
それがお金でどうにかできるのであれば、工面し、最善の方法をと考えるのは自然です。
が、私たち日本人はそこに臓器売買が絡み、
助かりたいと藁をも縋る思いの人たちに忍び寄る魔の手を考えたことがあるでしょうか?

死んだ子供、人間の臓器を提供していると思うのはあまりにも性善説過ぎます。
ここには貧困という悪循環が関与し、
安い労働力で安く物を消費する私たちの生活全般に、
彼らの存在を垣間見ることができるのです。
冷静にニュースを見ていれば、
そうしたことが今後、日本でも多発することは予測できるでしょう。
現に安い賃金で外国人労働者は日本で従事しています。


私は作家でもジャーナリストでもありません。
見たことをそのまま湾曲せず、書いているに過ぎません。
なぜかわかりません。
が、20カ国の渡航先でみてきたものは、“人間の光と影の両面”、
その表裏一体である“現実”でした。

私は批判などするつもりは毛頭ありません。
が、それが人間なのでしょう。
私たちが生きている世界なのでしょう。

そして、自分のできることをこつこつと積み重ねていく。
それを再認識させられた映画でした。


ぜひ、劇場へ。
http://www.yami-kodomo.jp/