風の生まれる場所

海藍のような言ノ葉の世界

空や雲や海や星や月や風との語らいを
言葉へ置き換えていけたら・・・

30歳男、年収2000万超

2008年08月18日 11時44分46秒 | エッセイ、随筆、小説





「なんだか落ちている声だね?」と男。
「あんた、何時に電話をかけてきていると思っているの?
しかも、仕事でもあるまいし・・・」と私。

昨夜は午後9時半にはベッドに入っていたし、
夜中、覚醒してしまい、一気に放送している“花男”をみて、道明寺をみてにやにやして
朝5時に慌てて二度寝を試みたのだった。

東の空が白けて、空が高くて、空が軽い。
ベランダで深呼吸をして、朝一番の新鮮な空気を部屋中に取り込んでから、
ふわふわの毛布に包まって眠った。
当然、夢も“花男”、
とっても幸せな気分で、うきうきしていた・・・・のになのだ。
携帯が鳴り響いたのは。

「午前8時前だよ。
しかも、いい夢を遮断されて、彼氏でもない男の声で起こされるのは心外」と私。
「いやさ~、生きていくのって思ったよりしんどいよね~~~」と男。
「あんた、なに言ってるの?健康なだけましよ。サーフィンでもして心身海で清めろ」と私。
「最近、どうなのよ?」と男。
「こっちも大変で・・・・とでも言うと思っているの?私はそんなにやわじゃない!!」と私。

確か、最後の電話は“30歳にして年収2000万越すなんてすごくね~~~?”だった。
だから私は金の価値と本人の価値がずれ過ぎている、とひねくれたことを返した。
15年近く知り合いでいると、彼の危うさが手に取るようにわかるからだ。
案の定、金よりも生活や安泰が確保されなければ、
金なんかあっても幸せなど感じられない、そういった内容に終始した。

「すこしは不調を抱える人間が社会に復帰することがどれだけ大変なのか、
バカ経営者のひとりとして、考えることでもあったわけ?」と私。
朝からずいぶんときつい言葉を食らわしていると自覚しつつも、
彼にはまともな経営者になってもらいたいという親心なのだ。

「障害については無知だからわからないし、
実際、利益をあげなければならない資本主義社会では、
そこまでの余裕がない・・・」と男。
「資本主義の行き着くところは、金になるものを仕事と呼び、
臓器まで売買することよ」と私。

貧しい人たちは勉強ができなかった、学歴がない・・・だけの理由で
貧しいわけではない。
私たちは富める者とそうではない者との差異を
誤解したまま、ある種、洗脳に近いかたちで「自己責任」という便利な表現の下、
それを信じてやまないだけだ。
でもそれは誤解で、貧しい人たちが一方的に悪いわけではない。
むしろ、富める者、資本主義という構図が、
そうしたものを生むことを私たちは忘れてしまっている。
今後、政府は国民の貯蓄を投資にまわすべく、対策を講じているのが現実なわけだし。

「年収2000万男、ついに泣き言?」と私。
深いため息だけが受話器から伝わってくる。
私は社会からお休みをもらって、前線にいないだけ、世の中の渦に巻き込まれずに済んでいる。
だから、今まで見ようともしなかった社会の構図というものを
身をもって体験できているだけ有難いと思った。

さて、これから検査だ。
真夜中に花男を観て、検査を受ける緊張がほぐれた。
寝ぼけずに済んでよかったな、と盟友からもメールが届く。
ちくしょう!!

主治医いわく、病院での症例3人のうちひとりである私は、
ある眠剤で寝ぼけてしまう。
この前は無意識のまま、とうもろこしを美しく食べ、
そのかすがちゃんとゴミ箱に捨てられていた。
あるときは、夜中に掃除をしているらしい。

さて、話を戻そう。
お金は大切で、便利だ。
お金があることで医療にもかかれる。
食べることもできる。
ときどき、映画を観たり、欲しいものを買ったり、学業のために費やし、本も、
旅行にも年に何回か行くこともできる。

が、お金があるからと幸せになれるわけではない。
とはいえ、お金がないのも困る。
すべてほどほど、いい加減、塩梅が大切なのだろう。