2024年5月1日米国下院は、320対91で全米の大学でガザ紛争をめぐるイスラエルへの抗議運動が高まる中「反ユダヤ主義拡大法案(Antisemitism Awareness Act)」を成立させ、教育省に対して反イスラエル(=反ユダヤ主義)を取り締まらない大学の補助金を切る事を許す法案を通しました。先だって2023年12月には「反イスラエル=反ユダヤ」とする決議が議会で承認されたことは前回紹介した通りです。全米の大学では、反ユダヤではなく、イスラエルのガザ住民への攻撃に抗議する活動が広まっていますが、これは米国で憲法に保障された基本的人権である「言論と集会の自由」に基づいた「平和的活動」であり、この基本的人権の大学という自由な場においての発動を、権力を持って排除・制限する事は憲法違反以外の何物でもありません。しかも抗議をしている学生にはかなり正当なユダヤ人学生も混ざっています。
全米に広がる抗議行動(色が濃いほど多い)(オレンジは警察の介入)
rakitarouは5月2日から米国テキサス州サン・アントニオで開催された米国泌尿器科学会に参加してきましたが、帰路ボストンに寄り、ハーバード大学におけるパレスチナ支援学生達の構内占拠の様子を外からですが眺めてきました。ピケを張っていたのは、大学の広大な敷地の中で地下鉄駅に近い中庭の一角のみで、極めて牧歌的でのんびりした雰囲気でした。その地域のみは、入るのは学生証の提示をセキュリティの警備員に示さねばならないのですが、その場所以外は観光客も自由に出入りでき、学生達もキャンパスでのんびり過ごしている感じでした。既に対応が悪いとリベラル派の学長が頸になった大学ですが、今回の法に基づいて警察権力で排除を強要する様な事態には決して見えませんでした。
ハーバード大学内のピケ 同敷地に入るには学生証の提示が必要
それ以外の学内は極めて平穏で何の混乱も見られませんでした
下院議長のマイク・ジョンソン氏は、「反ユダヤ法の成立」を受けて、ユダヤ人学生が「反ユダヤ主義にならず、イスラエルを批判する抗議の形態があるのか?」という質問に答えようとしなかった、とCNNで報じられています。
素朴なユダヤ人学生の質問にも答えられない下院議長。民主主義はどこへ?
「米国大学の反イスラエル抗議行動はけしからん」と公言するネタニヤフ首相
またこの法案成立の前に、ネタニヤフ首相が「米国の学生による反イスラエルの抗議行動は反ユダヤ主義として取り締まらねばならない。」とメディアで訴えた事に対して、「外国の首相が米国の憲法上の権利について干渉することを政府は受け入れるのかyes, noで答えよ。」という記者の質問に対して「そ、その件について彼のコメントに同意するものではありません・・(would not equate)」というしどろもどろの回答しかできませんでした。
外国の首相に言論を取り締まれと言われて政権は服従するのか?という記者の質問にしどろもどろの報道官
BLM、アンティファによる街を破壊しつくす様な暴力的抗議活動を現在の米国リベラル政権は強権的に規制するどころか警察予算を削って奨励さえしてきました。国境の閉鎖を拒み、不法移民の流入を奨励し、ギャングや中国を含む第三国のスパイやテロリストの流入さえも目をつむってきたのが現在のバイデン政権です。しかしイスラエルのパレスチナ虐殺に対する平和的な学生による大学内の抗議は緊急立法による暴力的排除まで行う米国の現状は既に民主主義や建国の理念など消滅し、市場原理主義(金が全てに勝る)による社会支配の完成形と言えます。
共産主義リベラルは「伝統的な家族」を否定し「固有の文化による社会のつながり」を否定し、子供は社会の共有物と見なすことを是としました。市場原理主義と共産主義くずれのサヨク(ネオコン)が結び付いて支配者となった現在の米国は、その最上層を特殊な兼帯で固くつながるユダヤ思想(他の人は被支配の対象、既存社会は破壊の対象)が支配層を固め、米議会の立法さえ思いのままにしている様に見えます。
アンティファの暴力、雪崩の様な不法移民流入は奨励し、「反シオニズムだけは力づくで抑え込む」現在の状況を見ると、市場原理主義とネオコンが支配する米社会の宿痾を見る思いです。