全ての勝負事、戦いにおいては、「相手を見くびれば100%負ける」(常に全力で戦え)という法則があります。「敵を知り、己を知れば100戦危うからず」も同じ事です。現役の外科医時代においても、「これは楽勝」と考えた手術で手痛いしっぺ返しを食らって途中から全力で回復戦に臨まねばならない事態が多々ありました。敵を見くびれば負けるのです。
第二次大戦において、「享楽主義のアメリカ人など初戦でダメージを与えれば容易に折れる」と見くびってパールハーバーに臨みましたが、結果は眠れる獅子を起こし、最終的に原爆を2発も落とされて、日本を5分割され、80年後の今も日本は米国の隷属国です。
自分に都合が良い解釈ほど非現実的なものはない。
I. テロリスト(抵抗者)を殺せば後は全員服従する?
「抵抗者(テロリスト)を殺せば後は全員服従する」のであれば歴史は太古の時代から変わっていないことになりますが現実は異なります。「力でねじ伏せれば従う」は時の支配者が陥る陥穽ですが、短期的には成立しますが、長期的には相手を絶滅させない限り100%いつかはこちらが負けます。だから「テロリストを殺せば後は全員服従する」という論理で行動する者は「阿呆」「無知性」「間抜け」と断定して良い。米国はテロリズムで英国から独立を勝ち取ったにも関わらず、2001年からの「テロとの戦い」で負け、世界中から嫌われます。同じ過ちをシオニスト・イスラエルは現在繰り返しています。そして100%負け、下手をすると数年でイスラエルは地上から消滅する(パレスチナという多民族国家が成立し、その中でユダヤ教を信奉する一部ユダヤ人が他の世界と同様生活する)ことになるでしょう。イスラエル軍部が声明を出した様に、ハマスは思想であり、組織ではないので殲滅は不可能だからです。
II. ロシア本土に進撃すればロシア人は怯む?
8月14日時点でのクルスク侵攻でウクライナ軍が軽車両で一時的に通過した村の範囲(白丸)と、実際確保している地域(緑)
ロシア本土に進撃すればプーチン体制が弱るどころか、ロシアの団結が一層高まり、プーチン体制が盤石になる事位理解できないのでしょうか。911で米国人は怯み、アルカイダに降伏しようという機運が高まる、ハマスが攻撃すればイスラエルは怯んで要求を呑む、そのような理論が100%誤りであるのと同様、テロとの戦争や本土進撃は愚策の限りです。では実質publicity stuntでしかない本土進撃でしたが、多大な犠牲と準備を要した攻撃の意図がそれだけであったかは最近明らかになった事象で明確になりました。
ロシアがトレードを持ちかけていると(夢見る)ザハロワ報道官を使ったフェイク動画 ウクライナは思い通りにゆかず、ザポリージャ原発にやけくそドローン攻撃
ウクライナ軍は計画ではクルスク原発の奪取を目論み、クルスク原発と欧州最大の発電力を持つロシアが開戦2日後に占領したザポリジャ原発をトレードする事を本気で考えていた様です。それはザハロワ外務省報道官がクルスクからの撤退とザポリジャ原発をトレードしたいというフェイク動画をウクライナ側が製作したことからも明らかでした。思惑に失敗したウクライナは肝心のザポリジャ原発にドローン攻撃を仕掛けて冷却塔に火災を生じさせました(ロシア側がタイヤを燃やして煙を出しているという説明もある)。いずれにしてもロシアは住民に避難命令を出しており、住民避難後は進出したウクライナ軍に躊躇なく誘導爆弾で殲滅攻撃を行うことができるでしょう。寄せ集めと言っても3,000名以上のまともなウクライナ兵を東部戦線から引き揚げて攻撃に使い、ロシア軍の集中砲火で犠牲にしてしまうのですから、ドンバスの東部戦線が崩れる速度が一層早くなることは否めません。しかも今回の攻撃では、ウクライナ軍は軍事施設ではなく、民間人を攻撃対象にしたのでロシアはウクライナ軍を「テロ組織」と断定、今後は停戦交渉を行わないと通告した様です。この愚策でハンガリーのオルバン首相の仲介も無駄になり、ウクライナの損失は計り知れないと思います。愚かな指導者(既に前大統領でしかない)と無責任なアドバイザー兼スポンサー(米英)の現実を我々日本人は良く見ておくべきです(後から米国からかかった分の金を出せ<復興資金として>と言われるでしょうが)。
ウクライナは卑怯な攻撃により既に国家としての交渉権を失ったとするノーボスチの記事
III. イランは攻撃するか?
5000kmのジャミング能力を持つムルマンスクシステム
パレスチナにはハマスを含めて14の抵抗組織がありますが、7月下旬に中国で署名された北京宣言で中国の王毅外相は、パレスチナを一つの国家とし、まずイスラエルとの停戦を実現した後、パレスチナ統一政府によるガザとヨルダン川西岸地域の統治、パレスチナの正式国連加盟の3段階を提示しました。また王毅外相は、イランに対して中国は外交的立場において常に後援すると伝えています。ロシアは5,000Kmの範囲の電波障害を起こす能力がある「ムルマンスク・システム」を既にイランに搬入していて、イスラエル、米国のミサイル防衛システムの無力化に貢献しています。今やBRICSの主要国ロシア、中国、イランが一体化しつつあり、インドやトルコが中立的静観に回ると、元々戦争をしたくない米国(裏でイランに多くの譲歩をしているという情報もある)は最終的にイスラエルを見捨てる選択を強いられる可能性も出てきました。
パレスチナ統一となる北京宣言 イランに攻撃をとどまらせるため、裏で譲歩を強いられた米国