I. 暴支膺懲との類似性
暴支膺懲(ぼうしようちょう)とは支那事変中、陸軍省などが中華民国の蒋介石政権に一撃を加えることで排日・抗日運動に歯止めをかけるという意味で使用した合言葉で、横暴な中国を懲らしめる、「暴戻シナヲ膺懲ス」の短縮形です。使用するきっかけは1937年7月の盧溝橋事件(7日)と通州事件(29日)が発端で暴支膺懲国民大会が各地で開催された由です(Wikipedia)。字面から解るようにきわめて上から目線で、ジャイアンがのび太に「のび太のくせに生意気だぞ!」と「理屈よりも感情」で言い切っている感があります。
夜間演習中の日本軍に中国側が実弾を打ち込み、兵一名が行方不明になったという盧溝橋事件よりも、日本人を憤慨させたのは日本軍の通州守備隊とその家族への翼東防共自治政府の中国人部隊による虐殺事件、とされる通州事件の衝撃が大きかったようです。この後日本は中国に百倍返しの仕返しをするのですが、種々写真なども残っているものの、通州事件は実際以上に残虐性が誇張された形跡もある様です。
II. 暴戻(パレス)チナヲ膺懲ス
2023年10月7日、突然のハマス戦闘部隊によるイスラエル越境攻撃で、1,400名の軍・民含むイスラエル国民が死亡、数百人が人質として連れ去られました。イスラエル政府および軍(IDF)は、直ちに報復攻撃に転じ、現在ガザ地区は無差別爆撃を受け、3,000名の子供を含む1万人以上のパレスチナ人が死亡したと報じられています。攻撃したハマスの部隊だけを戦闘対象にするのは解りますが、「暴戻パレスチナヲ膺懲ス」と言う精神で、「パレスチナ人全て」を懲らしめる事で、イスラエルに歯向かう気概を無くしましょう、という目的で行っている様にも見えます。暴支膺懲の結果、中国が日本に対する抵抗意識を無くすことはなく、却って中国人の団結を強め、結果的に大日本帝国の滅亡に至った事は歴史が証明しています。
私はイスラエルも同じ運命と思いますし、世界中の多くの識者が同じ結論に達しています。暴支膺懲のきっかけとなった通州事件が意図的に残虐性を強めて報道されたのと同様、10月7日のハマスの襲撃「アル・アクサ洪水」も残虐性、被害ともに意図的に誇張されている事がSNSの発達した現在、直ぐに白日の下に現れつつあるようです。しかもイスラエル民間人への被害の多くは実はイスラエル軍の攻撃によるものであった事も地元イスラエルのメディアで報道されています。以下にそれらをマックス・ブルメンタール氏がまとめたGrayzoneの記事の日本語訳抜粋を載せます。
(引用開始)
10月7日の証言は、イスラエル軍が戦車やミサイルでイスラエル国民を殺害したと明かした。
マックス・ブルメンタール·2023年10月27日
10月7日にハマス過激派に制圧されたイスラエル軍は、イスラエルの住宅や自国の基地さえも砲撃する命令を受けた。「生きたまま焼かれた」と言われているイスラエル国民のうち、実際に同士討ちで死亡したのは何人だろうか。10月7日のイスラエル南部に対するハマスの奇襲攻撃に関するイスラエル証人によるいくつかの新たな証言は、イスラエル軍がパレスチナ人の武装勢力を無力化するために戦った際に自国民を殺害したという証拠をさらに強めている。
地元ハアレツ紙に掲載された報告書は、イスラエル軍が、支配権を掌握した「テロリストを撃退するために」ガザへのエレズ交差点内の自国の施設に対して「空爆を要請せざるを得なくなった」と指摘した。その基地には当時、イスラエル民政局の職員と兵士がいっぱいだった。これらの報告は、たとえ多くのイスラエル人の命が犠牲になっても、イスラエル国内の住宅やその他の地域を攻撃するよう軍最高司令部から命令が出されたことを示している。
ヤスミン・ポラットというイスラエル人女性はイスラエル・ラジオのインタビューで、10月7日のハマス武装勢力との銃撃戦で軍が「間違いなく」多数のイスラエル人非戦闘員を殺害したことを認めた。「彼らは人質を含む全員を排除した」とイスラエルの特別番組に触れながら述べた。ハマスの武装集団に拘束されている間、ポラットさんはこう回想した。「彼らは私たちを虐待しなかった。私たちはとても人道的に扱われました…誰も私たちを暴力的に扱うことはありませんでした。」彼女はさらに、「目的は私たちをガザに拉致することであり、殺害することではなかった」と付け加えた。
アパッチ攻撃ヘリコプターも、10月7日のイスラエル軍の対応に大きく関与した。パイロットらはイスラエルのメディアに対し、何の情報も持たずに戦場に緊急発進し、ハマスの戦闘員とイスラエルの非戦闘員を区別できず、それでも「弾倉を空にする」決意をしたと語った。「対象があまりにもたくさんあるので、何を撃てばいいのかジレンマに陥っている」と、あるアパッチパイロットはコメントした。
ハマスの制服を着た武装集団が撮影したビデオは、ハマスの武装集団が10月7日にカラシニコフ銃で多くのイスラエル人を意図的に発砲したことを明らかにしている。しかし、イスラエル政府は検証済みのビデオ証拠に満足していない。その代わりに、過激派が捕虜をサディスティックに焼き殺し、生きたまま放火する前に強姦したと主張するために「見分けがつかないほど焼かれた遺体」の写真を配布しながら、「首を切られた赤ん坊」という信用できない主張を押し続けている。
イスラエル政府がハマスの残虐行為を強調する目的は明らかである。ハマスを「ISISよりも悪い」と描きながら、イスラエル軍が継続的に行っているガザ地区への砲撃への支持を集めることであり、発表時点でイスラエルの攻撃により、少なくともガザで2500人の子供を含む7000人以上のパレスチナ人の死者が出ている。ガザでは何百人もの負傷した子供たちが、新型兵器による「4度の熱傷」と外科医が表現したものの治療を受けているが、西側メディアの焦点は依然として10月7日に「生きたまま焼かれた」とされるイスラエル国民に向けられている。
しかし、イスラエル軍司令官が下したイスラエル国民への射撃命令の証拠が増えていることは、西側メディアに提示された黒焦げのイスラエル人の死体、瓦礫と化したイスラエルの家々、焼け落ちた車両の塊などの最も不快な画像の少なくとも一部が、実際にはイスラエル軍の戦車兵とヘリコプターのパイロットが自ら砲爆撃した結果だったのだ。実際、10月7日、イスラエル軍はガザ地区の民間人に対して行っているのと同じ戦術で、つまり重火器の無差別使用で自国民の死者数を増やしたようだ。
(引用終了)
III. ハマスとウクライナの戦術の違い
軍事力の比較ではハマス<イスラエルであり、ウクライナ<ロシアである点で、ハマスとウクライナは同じです。しかし今回の戦争では、ハマスはイスラエルに勝つだろうと私は思います。それは弱者が強者と闘う場合の定石の戦い方をハマスが採っているからであり、イスラエルが採っている戦術が稚拙すぎるからです。この一か月でイスラエルは1万人の民間人を虐殺していますが、ハマスを掃討する戦争の効率としては悪すぎる事は軍事・軍略に長けていなくても解ると思います。イスラエルはエジプトなどとの正規軍同士の戦争では、奇襲や機略を用い、優秀な司令官と勇敢な兵で第三次までの中東戦争に勝ち抜いてきました。アラブ諸国の正規軍は、米軍の論理的で洗練された軍組織の戦い方には慣れておらず、米軍の支援を受けたイスラエル軍に苦戦してきたことは確かです。しかし、ベトナム戦、21世紀に入ってからの対ゲリラ部隊が中心となった「テロとの戦争」では米軍は結局敗退してきました。それでもCOIN(Counterinsurgency)戦術に徹する事で、「部隊がいる地域」では敵を制圧できました。
現在イスラエルはガザに侵攻していますが、彼らの広報が宣伝するほどにはハマスを駆逐する戦果が上がっていないのが実情の様です。それどころか地下トンネルを駆使したハマスの戦術で戦車や装甲車の多くが破壊され、準備不足の予備役(しかも戦意moraleは低い)達の犠牲も増加しています。イスラエルの兵たちはベトナム戦争時の米軍兵と同様、世界からもイスラエル国民からも批判され、世論調査で27%の支持率しかないネタニヤフ政権の維持のダシに使われていると理解しています。トンネルと要塞のネットワーク、地雷原、狙撃兵、IED(簡易爆弾)、そしてハマスとパレスチナ住民の強い敵意にさらされながら路上で白兵戦を戦う予備役のイスラエル兵達が勝てる訳がありません。
前にも指摘した様に、ウクライナは制空権がなく軍事力も弱い状況で「攻撃を続ける」事でロシアの数倍犠牲を強いられ続けています。西側の戦略を無視した兵器供給によって、武器の質は良くても計画的な戦争には勝てない状況のまま既に100万人近い死傷者を出して「兵が枯渇」した状態です。9月頃「勝った」と大騒ぎだったロボティネ村は1mも進まないまま冬を迎えています。大きな犠牲で敗退したバフムト近郊のアディフカでは、最近ロシア軍が機甲部隊を進めて来て「攻撃」体制になったため、ISR(情報・探知・偵察)が全て明らかな状態では「守備」が圧倒的に有利なために、軍備の少ないウクライナ軍は進撃するロシア軍に打撃を与えて一矢報いることができています。ウクライナは昨年3月までの散発的戦い方を続けて、ウクライナ・ロシア双方が同程度の犠牲を強いられていた時点で和平交渉を締結していれば、かなり有利な条件で和平に持ち込むことができたと思われますが、ロシアに勝てると勘違いした英米が和平交渉を破棄させた結果、現在の様な多大な犠牲を強いられた上に敗北する結果になったのです。
IV. Two State Solutionが唯一の解決法
結局PLOのアラファト議長とラビン首相の1993年オスロ合意に戻るのが最も堅実な和平案ではないだろうか。争い事の解決法は、第三者から見る見方が最も冷静で正しいものである。
隣人同士がこれだけ殺し合いをしてしまうと、「仲良く土地を分け合って住みましょう」という解決は困難である事は解ります。それは「感情」の問題だからです。しかし感情に任せてどちらかが絶滅するまで殺し合いを続ける事が「賢者の選択」でない事は第三者的には明らかです。前のブログ「戦争に勝つとは」で定義した様に、相手国民を全て殺せば「戦争に勝った」と言えますが、現代世界でそれは通用するでしょうか。パレスチナ人を全て殺したイスラエルという国を、アラブ・アフリカを含む国際社会は受け入れるでしょうか。「相手国の国民を全て殺した者勝ち」という絶望世界に人類は生きたいと思わないでしょう。冷静に思考すれば、1947年の国連案による2国共存が最も幸福度の高い解決策だったと思います。この時は、イスラエル国民は分割案を受け入れ、アラブ諸国が反対して、その後の数次にわたる戦争につながって行き、結局パレスチナの領土が減少していって現在に至ります。今回、イスラエルは「下手を打った」のです。大日本帝国が戦後5分割されて明治初期の領土に戻され、今に至ったのと同様、イスラエルは1947年の国連分割案、せめて1949-67のgreen lineまで譲歩して平和を築いて世界に再度受け入れてもらったらどうかと思います。「俺たちは日本人の様な劣等民族ではない!」と一喝されそうですが。
イスラエルは今回の失敗で大きな譲歩を迫られるだろう。
同様にウクライナもロシア語話者の国とウクライナ語話者の国に二分割するのが平和に暮らす道でしょう。本当はミンスク合意が賢者の選択であった事は明確なのですが、昨年3月のそれに準じた和平案を英米のネオコンがロシアに勝てるという誤った認識で潰しました。今ロシアの圧勝でウクライナ戦争が終了すると、資金を投入してきた欧米の取り分が消滅する事を怖れたグローバル陣営は、戦争継続にこだわるゼレンスキーの首を挿げ替え、取り分のあるうちに戦争を終結させる算段を始めています。ザルジニー将軍の副官殺害やゼレンスキー大統領選挙の取りやめ、復活など、水面下で多くの陰謀が渦巻いている様です。
中国の国内情勢も高官の突然の辞任など不安定さを見せていますが、ネオコンは台湾有事による中国弱体化を目指している様ですが、現状維持のTwo state solutionが最も中国の国益に叶う事は、習近平氏は知り抜いています。私の知る台湾の知識人達も戦争など望んでいません。日韓の首脳(高官レベルで)とも米英の戦争屋達に知られない様に、策略にのらない打ち合わせをしている事と思います。
テレ朝news では、
宿舎のほど近くにある集落でも行方が分からなくなっている犠牲者が大勢います。このため、軍の兵士らのほか、考古学者らが招集され、遺跡を発掘する方法で犠牲者らの遺骨の収集に当たっていました。
考古学者:「我々は遺骨を集めています。行方不明となっている人の身元特定につながることを願っています」
と現場の、細かいジャリをふるいにかけて小さな欠片になったイスラエル人犠牲者の遺骨を探しているのですが、無茶苦茶にも程がある
78年前の沖縄戦では無く1カ月前の戦闘なのですから、考古学者の力は必要ではない。今回のイスラエル軍は人質もろとも無差別的にハマス殲滅では自国の領域内でも4000度の高熱の残虐兵器「白リン弾」を使った攻撃したのですよ。まさに鬼畜の所業
同じく最新の読売新聞「シファ病院に1万5000人、迫るイスラエル軍の戦車…爆発は「ガザのテロ組織が発射」と主張」
では、
国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は職員の死者数が10日、101人になったと発表した。イスラエル政府は10月7日以降のイスラエル人の死者数を約1400人から約1200人に下方修正した。(★注、一カ月以上経ってからの下方修正は、信用度が大幅に低下する)
アメリカやイスラエルが最も得意とする情報宣伝戦で、遥かに弱小なパレスチナに大負けしているのですから、いくら軍事的に大勝利しても、戦争には絶対に勝てない。
イスラエルの最善の落としどころとしては、1993年オスロ合意しかなかったが、欲を出し過ぎて自分から滅亡に向かってまっしぐらに暴走しています。
そもそもオスロ合意とは冷戦崩壊で後ろ盾を失ったPLOが無きの涙で調印した極度にパレスチナが譲歩した一方歴な代物。本来は1994年の全人種による総選挙の南アと同じ一人一票の民主主義の大原則しか円満解決の方法はありません。正当な、全ての難民の帰還権を認めれば、イスラエルは即座に崩壊します
相手の戦闘員をいくら上手に殺しても、巻き添えで自国民を無差別に殺すようでは、近代国家とは言えないし、とうてい「国軍」とは呼べないイスラエルのディフェンスホース(自衛隊)は解体するしか道はない
そういえば、地獄の沖縄戦までの大日本帝国と同じで、イスラエルも10月7日のアルアクサ洪水作戦までは一度も自国内での戦闘経験が無かったが、これが最悪の結果を招く
イスラエルの有力紙ハーレツなどはマックス・ブルメンタール氏がまとめたGrayzoneの記事を掲載
現在は戦闘中なので、イスラエル市民もメディアも批判を控えているが、終わった途端に一斉に大騒動が勃発する
ガザ完全制圧(戦争の大勝利)後には、人質にされた自国民をハマス戦闘員もろともに残虐に殺したイスラエル軍は、韓国の野党系ハンギョレ新聞は「イスラエル軍がハマスとの戦闘で勝利した瞬間、イスラエルは戦争の敗北という毒杯を仰ぐことになるだろう。」「それと共に中東で享受していた米国の影響力も蜃気楼のように消える運命にある。』
と文学的に大敗北を指摘している
イスラエルが1150人のパレスチナ人捕虜を3人のイスラエル兵と交換したジブリール合意を阻止する目的の極秘命令ハンニバル指令が発動されたのでしょう
2014年8月1日、ガザのラファ検問所付近で、ハマスの戦闘員がイスラエル軍将校のハダル・ゴールディン中尉を捕らえ、イスラエル軍が2000発の爆弾、ミサイル、砲弾その地域で、100人以上のパレスチナ民間人とともに自国の兵士を殺害した。
今回のアルアクサ洪水作戦では自国内で大々的にハンニバル指令を実効したとすると、ハマスとの戦争が終わった途端。ハンギョレ新聞が言うように毒杯をあおって御臨終。もちろんハンニバル指令のイスラエル軍全面支持のアメリカの権威も自業自得で「終わり」です