2024年12月のブログです
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あだち充さんの『じんべえ』(1997・小学館)を久しぶりに読む。
今年の能登半島地震で崩れた本の山を積み直していると(今もなんと(!)作業継続中です)、下のほうに偶然、見つける。
1997年の本で、その後、一度、読んだ記憶がかすかにあるが、すごく久しぶり。
作業を中断して、読んでしまった。
もともとは、「ビックコミックオリジナル」に連載されたらしい(「ビックコミックオリジナル」は『家栽の人』(知っているかなあ?)を連載していたことがあり、なかなかいいおとなのマンガ雑誌だ)。
血のつながらない娘を育てる中年男子とその娘を描くおとなのマンガ。
両者の微妙な心理がとてもうまく、丁寧に描かれていて、感心する。
下手な小説より、心理描写が繊細で、すごいと思う。
無理に例えるならば、荻原浩さんの小説をマンガにしたような感じ(荻原さんの小説を知らない人は、何のこっちゃ、と思うだろうが、知っている人はうなづいてくれるかもしれない)。
中年男子の生きる辛さや哀しみ、優しさ、怒りなどと、少女の淋しさや哀しみ、喜びなどが、あだちさんの美しいマンガで、ユーモラスにうまく描かれる。
名作だと思う。
それにしても、あだちさんのマンガは、人間関係が複雑で、優しいが、哀しい物語が多い。
まさか、売り上げを伸ばすためにあえて複雑な人間関係にしているわけではないのだろうが(多少、そういうこともあるのかもしれない(?)。あだちさん、ごめんなさい)、それにしても物語が哀しすぎる。
まあ、人生は哀しいものだから(?)…ねぇ。
こういう表現にしないと描けないものを、あだちさんがなにか人生に感じているのだろうなあ、と思う。
いずれにしても、マンガではあるが、すごい名作だ。 (2024.12 記)