2023年4月のブログです
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河合俊雄さんの「最終講義-発達障害の心理療法と物語の縁起」(2023・河合隼雄財団)のビデオを観る。
文字通り、河合さんの京都大学での最終講義。
ご自分が大学院生の時に担当をした小学校低学年の発達障害の男の子のプレイセラピーの事例検討を通じて、発達障害の心理療法について論じる。
これがすごい。
当時のケースを40年後の今の河合さんがコメントをしていくのだが、そのコメントの数と奥深さがすばらしい。
じーじは家裁調査官の時に、先輩から、仮説は少なくとも三つ以上持ちなさい、と教わったが、河合さんはケースの仮説を十も二十も提示して、その有効性を検証する。さすがだ。
そして、発達障害については、世間的には訓練や教育が有効で、心理療法には否定的な空気がある中で、河合さんは心理療法の有効性を強く示唆する。
訓練や教育だけでは解決できないような、子どもの深い部分での障害を、プレイセラピーの中で、子どもの物語の変容を通じて変えていく手だてを示す(これで合っていると思うけど…)。
治療者が子どものこころの世界に降りていき、くたくたになりながらもつきあい、子どもが自然と変わる様子が示され、興味深い。
しかも、今の河合さんから見たすばらしいコメントと解説が添えられるので、観ているわれわれは素敵な劇を見ているような印象を受けて、感動的にすら思える。
ちからのある臨床家というのは本当にすごいなあ、と感心させられる。
今回は山王教育研究所のご紹介でこのビデオを拝見したが、ご配慮に感謝したい。
もっともっと勉強を深めて、臨床のちからをつけていきたいと思う。 (2023.4 記)