ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で、じーじ臨床心理士が新潟市で公園カウンセリングなどを相談、研究しています

小倉清『子どもの危機にどう応えるか-時代性と精神科臨床』2020・岩崎学術出版社

2024年09月30日 | 子どもの臨床に学ぶ

 2020年9月のブログです

     *

 小倉清さんの『子どもの危機にどう応えるか-時代性と精神科臨床』(2020・岩崎学術出版社)を読みました。

 新刊です。すごいですね。

 そして、とてもいい本です。

 小倉さんの最近の論文からちょっと古い論文までが並んでいて、それに小倉さん自身がコメントをつけています。

 このコメントがすごいです。辛口コメントばかり。

 人間、年を取ると、人にはともかく、自分には甘くなりがちですが、小倉さんは昔の自分にも容赦がありません。

 冷静に、しかし、「熱く」、昔の自分に注文をつける小倉さんは、とても素敵です。そして、尊敬できます。

 例によって、印象に残ったことを一つ、二つ。

 一つめは、母乳を拒否した2歳の女の子の症例。

 家族や他人とうまく関係が持てないで騒ぐ女の子の初診で、小倉さんが女の子の心中を察知して、尊重し、何もしゃべらないままに診察を終えます。

 そして、それが、次回以降の治療に繋がったというケースです。すごいです。まるで手品のよう。

 しかし、小倉さんならではの技です。

 こんなことができるのは、あとは田中千穂子さんくらいではないでしょうか。

 二つめは、思春期に現れる乳幼児期来の諸問題、という論文。

 子どもの課題と諸問題を年代別に実に細かく、丁寧に説明をされていて、勉強になります。

 やはり当然ですが、治療者が子どもを尊重し、耳を傾け、丁寧に聴くことや心中を察することなどの大切さを改めて思い知らされます。

 さらに真剣に学んでいこうと思いました。          (2020.9 記)

     *

 2021年3月の追記です

 こんなことができるのは、田中千穂子さんくらいでは?と書いたのですが、もう一人、山中康裕さんを挙げるのを忘れていました(山中さん、ごめんなさい)。          (2021.3 記)

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 ゆうわファミリーカウンセリング新潟(じーじ臨床心理士・赤坂正人・個人開業)のご紹介

 経歴 1954年、北海道函館市に生まれ、旭川市で育つ  

    1977年、ある四流私立大学文学部社会学科を卒業、浦和、新潟家庭裁判所などで家庭裁判所調査官として司法臨床に従事する  

    2014年、定年退職間際に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士)を修了 

    2017年、臨床心理士になる

 仕事 個人開業で、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを研究しています

 学会 精神分析学会、遊戯療法学会会員

 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

 住所 新潟市西区

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井上靖『北の海』1975・新潮文庫-旧制高校に不合格になった少年の旧制四高柔道部体験記と青春の物語

2024年09月30日 | 小説を読む

 2023年8月のブログです

     *

 旭川生まれの井上靖さんの『北の海』(1975・新潮文庫)を旭川の古本屋さんで見つける。

 かなり厚い本だが、110円。

 1975年(昭和55年)の文庫本、じーじが大学3年生の時の本だ。

 この青春もの(?)、なぜかじーじはきちんと読まずにきてしまった。

 暇な夏休みでもないと(いつも暇だが…)、厚い本はなかなか読まないかもしれないと思い、清水の舞台から飛び降りる覚悟で読む。

 これが面白い。

 時は大正15年。

 青春小説だが、相当に男の世界。

 なにしろ、世の中にあるのは柔道のみ(!)、勉強も女子も関係のないという世界。

 これは相当に(?)、気持ちのいい世界だ。

 今の芸能界など、吹っ飛んでしまう。

 こういう世界があったんだなあ、と思う。

 しかし、この時代にも戦争の予兆はある。

 なにせ、主人公の父親は軍医で、台湾に赴任中だ。

 父親への反感と時代への反感、男子の青春もなかなか大変だ。

 そういう主人公が友達や先輩に囲まれ、少しずつ成長していく。

 おそろしく真面目だが、不器用なユーモアがきいていて、読んでいて楽しい。

 文章も良質で、いい小説だと思う。

 あらすじはあえて書かないが、気持ちのいい小説だ。

 夏休みにいい本に出会えたと思う。       (2023.8 記)

   

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河合隼雄『カウンセリングの実際』2009・岩波現代文庫-河合隼雄さんのカウンセリングに学ぶ

2024年09月29日 | ユング心理学に学ぶ

 2011年のブログです

     *

 河合隼雄さんの『カウンセリングの実際』(2009・岩波現代文庫)を再読しました。

 引越しのドサクサなどで原本の『カウンセリングの実際問題』(1970年・誠信書房)が行方不明となっていましたが、文庫本で再読できました。

 この本は、娘が大学生の時、カウンセリングのレポートの参考文献に図書館から借りてきて、なかなかいいセンスをしているなと感心をしたことがありました(その娘も結婚し、孫が生まれ、今ではじーじはじいじと呼ばれています)。

 前置きが長くなりましたが、今読んでもとてもいい本です。

 息子さんの河合俊雄さんが解説で書いておられますが、若い時の河合さんの体当たりのカウンセリングの詳細がわかりますし(ここまでするのかという驚きもあります)、受容するためには理解しなければならないという言葉など、最近の議論を先取りして考察している鋭い部分もありました。

 これからも大切な一冊になると思われる河合さんのすばらしい本だと思いました。          (2011.7 記)

     *

 2023年2月の追記です

 娘が大学生の時、河合さんの本を借りてきたのですが、カウンセリングのレポートをなかなか書けずに苦戦をしていたので、じーじがワープロで、こんな感じで書くといいんじゃない?と下書きをしてみました。

 すると、娘はなんと、その下書きをまったく書き直しもせずにそのまま提出してしまいました(もう時効だと思うので、大学の先生がた、お許しください)。

 幸い、D評価ではなかったのでなんとか面目がたちましたが、あぶない瞬間でした(?)。 

 よい子のみなさん、宿題は自分でやりましょうね。              (2023.2 記)

     *

 2024年3月の追記です

 じーじの孫娘たちは宿題の作文が苦手で、じーじの家に来ると、いつもママと苦戦しています。

 じーじが、あんなことやこんなことをああいうふうに、こういうふうに書けばいいんじゃないかい、と話しても、うーん?、とうなっています。

 やっぱり下書きをしないとだめなのかなあ(?)。         (2024.3 記)

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南木佳士『海へ』2004・文春文庫-山国暮らしの内科医と海沿いの街で暮らす親友の物語です

2024年09月29日 | 小説を読む

 2023年8月のブログです

     *

 南木佳士さんの『海へ』(2004・文春文庫)を旭川の古本屋さんで見つける。

 今年の旭川では、古本屋さんめぐりばかりをしていて、そうすると一期一会というと大げさだが、読みたい本に時々出会う。

 そんな貴重な古本が1冊110円で買えてしまうので、年金暮らしのじーじにはありがたい。

 もっとも、売る時はとっても安くてかなしくなるが…。

 南木さんの『海へ』は、昔、なんとなく読んだような気もするのだが、記憶があまりはっきりしていないので、読んでみた。

 読んでみたが、過去に読んだことがあるのか、それでもはっきりしない(?)。

 困ったものだ(こういう時に旅先だと本棚を確認できないのがつらい。じーじのばあい、確認しても見つかるとは限らないが…)。

 しかし、フロイトさんによれば、大切な夢は何度も見るから心配ない、という。

 ならば、読書も同じで、大切な本は何回でも読めるから心配ないのだろうと思う(じーじの新説?)。

 さて、本書、死者を看取りすぎて鬱病になった内科医が、学生時代の親友の誘いで海辺の町に遊びにいく物語。

 山国暮らしの内科医が、海暮らしの親友を訪ねるが、それぞれに抱えた問題があり、生きることの辛さや哀しさに出会う。

 なかなか辛い出会いが多いが、過去も現在も良質の物語が描かれる。

 物語の基調はあいかわらず暗いが、底のほうに少しだけユーモアが出てきている感じがする。

 単行本は22年前の本。

 南木さんも、少しだけ明かりが見えてきた時期だったのかもしれない。       (2023.8 記)

 

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小倉清『児童精神科ケース集-小倉清著作集別巻1』2008・岩崎学術出版社-正直さのちからに学ぶ

2024年09月28日 | 子どもの臨床に学ぶ

 たぶん2015年ころのブログです

     *   

 小倉清さんの『児童精神科ケース集-小倉清著作集別巻1』(2008・岩崎学術出版社)を再読しました。

 この本もかなり久しぶりの再読になってしまいました。

 いい本なのにもったいないというか、全くの勉強不足です。

 内容は11の症例報告と1つの公開ケーススーパーヴィジョンなどですが、やはりいずれも相当に「熱い」です。

 症例は多少の失敗も含めて、正直にていねいに検討がなされていて、とても参考になります。

 いい治療者というのは、本当に正直に失敗を含めて報告し、検討をするのだな、と改めて尊敬をさせられます。

 症例全体を読んで感じたのは、家族との関係がうまくいった症例で予後がいいな、ということ。

 症例の病理の深さによって仕方がないことだと思うのですが、家族の抵抗に遭い、治療が困難になるケースが多いようです。

 じーじも家庭裁判所で仕事をしている時に同じ印象を持ちましたが、病理の深い事例では家族との連携が難しく、事案の解決が困難になりやすい傾向があると思います。

 しかし、家族も悩んでいたり、不安に陥っているのも事実であり、そういう家族をも含めた援助が大切になるのだろうなと思います。

 一方、公開ケーススーパーヴィジョンもすばらしい内容です。

 こららは、ケース提供者が小倉さんで、スーパーヴァイザーがなんと小此木啓吾さん。

 1973年の精神分析学会での企画の報告です。

 小此木さんはじーじも調査官研修所でお話を聞いたことがありますし、このブログでも何冊かの本を紹介させていただいていますが、この頃から切れのいいご指導をされていたようで、このスーパーヴィジョンでも、明確化の質問や質問の仕方、タイミングがみごとで参考になります。

 小倉さんも正直な返答を返し、小此木さんと小倉さん、そして周りの方々も含めて、一つのケースがだんだんと解明される様子は読んでいて本当に感動的です。

 正直で、ていねいな臨床家の見本を間近に見るようで、自分も心して臨床に臨んでいきたいなと思いました。          (2015?記)

     *

 2021年秋の追記です

 正直、というのは、臨床家にとってすごく大切だって思います。

 失敗を正直に報告することだけでなく、カウンセリングの中で自分がどんなことを感じているかとか、どういう気持ちになっているのかに正直でないと(それを言葉にするかどうかはまた難しい議論になるのですが)、カウンセリングがうまくいかないように思います。

 奥が深い世界です。         (2021.9 記)

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 ゆうわファミリーカウンセリング新潟(じーじ臨床心理士・赤坂正人・個人開業)のご紹介

 経歴 1954年、北海道函館市に生まれ、旭川市で育つ  

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    2017年、臨床心理士になる

 仕事 個人開業で、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを研究しています

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 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

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藤原伊織『テロリストのパラソル』1998・講談社文庫ー元東大全共闘のくたびれたアル中中年が小さな女の子のために走りまくる

2024年09月28日 | 小説を読む

 2023年7月のブログです

     *

 藤原伊織さんの『テロリストのパラソル』(1998・講談社文庫)を久しぶりに読む。

 1995年江戸川乱歩賞受賞作で、1996年の直木賞受賞作。

 東大全共闘で学生運動を闘った主人公が、今はアル中の中年バーテンダー。

 真昼の公園でウィスキーを楽しんでいたところ、偶然、爆弾事件に巻き込まれ、その直前に知り合った小さな女の子のために(?)、真相解明に走りまくる。

 いろんな登場人物が出てくるが、じーじには、主人公がただ小さな女の子のために走るまくる小説と読める。

 この小説については、特に、あらすじを書くのは「犯罪行為」(?)だと思うので、いつも以上に気をつけたい。

 描かれるのは、学生運動と個人、学生運動と恋愛、学生運動と暴力、暴力と警察・国家権力、やくざと警察、組織と個人、お金の魔力、人間の弱さ、などなど。

 それらが、主人公の飾らない生き方とともに、対比的にあぶりだされる。

 決してスマートではなく失敗だらけの中年男子。

 ただ、一本筋が通っているというか、頑固なところが魅力的だ。

 じーじの大好きな男性像。

 いい小説だ。

 途中から仲間になる、警察をくびになったやくざ屋さんの中年男子とともに、真相解明に走りまくる姿はまったくのハードボイルド小説だ。

 ハラハラ、ドキドキの連続で、小心者のじーじには少し心臓に悪い。

 しかし、とても良質で、後味のよい小説を楽しませてもらった。      (2023.7 記)

 

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小倉清『思春期の臨床-小倉清著作集2』2006・岩崎学術出版社-子どもの精神科医のていねいな面接に学ぶ

2024年09月27日 | 子どもの臨床に学ぶ

 たぶん2015年ころのブログです

     *   

 小倉清さんの『思春期の臨床-小倉清著作集2』(2006・岩崎学術出版社)を再読しました。

 この本もずいぶん久しぶりで、ところどころにアンダーラインや付箋があったのですが、例のごとく(?)ほとんど覚えておらず、またまた新鮮な気持ちで読ませていただきました。

 思春期の患者さんに対する小倉さんの思いもとても「熱く」、生半可な気持ちで関わることを戒められている箇所が多くあり、襟をただされる思いでした。

 また、この本では懐かしい論文に出合うことができました。

 例によって覚えてはいなかったのですが(?)、まずは「弱い父親-臨床ケースをとおして」という論文。

 これはずいぶん前に出た『父親の深層』(1984・有斐閣)という論文集に載っていたらしいのですが、まったく気がつきませんでした(小倉さん、ごめんなさい)。

 この本は、じーじが家庭裁判所で仕事をするようになって少したった頃の本で、日本の深層というシリーズの一冊でした。

 他に『母親の深層』や『子どもの深層』などという、どれもすばらしい執筆陣による、すばらしい内容のシリーズで、当時、熱中して読んだ記憶があります。

 そこに執筆されていたというのはさすが小倉さんです。

 もう一つの論文は、「過食の治療」。

 この論文は下坂幸三さんの編集した『過食の病理と治療』(1991・金剛出版)に収められていたらしいのですが、これも気がつきませんでした(小倉さん、またまたごめんなさい)。

 『過食の病理と治療』という本もとてもいい本で、何度か読んでいますが、この当時、下坂さんは摂食障害に関する本をたくさん出されていて、どの本も奥が深く、とても勉強になりました。

 特に、家族面接の記述がすばらしく、じーじも家庭裁判所で親子面接の時に参考にさせてもらったりしていました。

 親子面接や夫婦面接はその後も続けていますので、ずいぶんお世話になっていることになります。

 小倉さんのこの本を読むと、現場でその時にていねいな仕事をすることが即学問になるのだなと感心をさせられます。

 同じようなことはとてもできませんが、少しくらいは真似てもいいのかもしれません。

 さらに勉強を深めたいと思います。              (2015?記)

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    2014年、定年退職間際に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士)を修了 

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 仕事 個人開業で、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを研究しています

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 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

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堀江敏幸『雪沼とその周辺』2008・新潮文庫-のんびりと懐かしい感じの物語

2024年09月27日 | 小説を読む

 2019年のブログです

     *

 堀江敏幸さんの『雪沼とその周辺』(2008・新潮文庫)を読みました。

 夏休みに東川町にいる時に、なんとなく堀江さんの世界にはまってしまい、ずいぶん小説やエッセイを読んでしまったのですが、今もその余韻が続いていて、またまた読んでしまいました。

 特別大きな出来事もなく、ドラマチックでもなく、淡々とした日常が綴られるのですが、きれいな映像を見ているかのように、気持ちが落ちつきます。

 懐かしさ、のんびり、おっとりとした世界、なんとなく心が澄んでくるような世界、しかし、一方で、切なさや寂しさ、哀しみがにじんでいるような世界。

 おおげさではないものの、生きることのいろいろな場面がめぐります。

 大きくはないけれど、小さい喜び、しかし、哀しみや苦しみも伴ないます。

 基本にあるのは愚直な真面目さ。

 真面目さだけが取り柄の真摯な人生、そして、それは喜怒哀楽、清濁を合わせた大きな世界です。

 語彙不足もありますが、今のじーじのちからでは、読んだ感じをこれ以上、言葉にするのは難しいです。

 本書は、川端康成文学賞と谷崎潤一郎賞を受賞していますが、それにふさわしいおとなの良質な小説だと思います。     (2019.9 記)

 

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袴田事件再審無罪と兵庫県知事失職のニュースを見て思ったこと-じーじのじいじ日記(2024.9.26)

2024年09月26日 | じいじ日記を書く

 2024年9月26日の日記です

     *

 夕方のニュースを見る。

 袴田さんの再審裁判、無罪。

 良かった。

 裁判所が捜査機関の捏造3件を認定する。

 裁判所の冷静な勇気に感動するとともに、捜査機関のメンツを保とうとする姿勢に醜さを感じ、さらに、国家権力の怖さを実感する。

 今後、可能な限り、警察、検察の責任を追及し、きちんと処罰をしてほしい。

 一方、兵庫県知事。

 失職を選択し、出直し選挙に立候補するという。

 辞職は頭にないといい、道義的責任も否定する。

 しかし、県職員が自殺をしており、その原因は明らかに県知事にあるのではないか。

 公益通報に当たらないと強弁するが、職権乱用の責任は逃れられないだろう。

 マスコミも知事の言い逃れをだらだらと放送するだけで、責任追及ができていない。

 子どもたちがこういうニュースを見て、言い訳を上手にすれば、この世の中はなんとかなると誤解するのが怖い。

 勉強だけができて、公務員として出世しても、人の痛みがわからない人間ではだめだ。

 頭がいいだけの自己愛おぼちゃまだ。

 知事の資格はないと思う。

 せっかくのビールをおいしくいただけるようなニュースをマスコミにはお願いしたい。     (2024.9 記)

 

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小倉清『子どもの臨床-小倉清著作集1』2006・岩崎学術出版社-子どもの精神科医のていねいな面接に学ぶ

2024年09月26日 | 子どもの臨床に学ぶ

 たぶん2015年ころのブログです

     *    

 小倉清さんの『子どもの臨床-小倉清著作集1』(2006・岩崎学術出版社)を再読しました。

 この本も前に何回か読んでいますが、今回はたぶん5年ぶりくらいです。

 いつものことながら(?)、多少の記憶はあったのですが、内容をほとんど忘れていて、時々、アンダ-ラインのところや付箋のところに出合うと、懐かしさを覚えながらも、また新鮮な気持ちになって読ませてもらいました。

 論文集なので、いつもの「熱い」小倉さんが、それを内に秘めながらも、冷静に論述しているところが印象的です。

 巻頭論文は精神分析学会の学会賞受賞記念講演の論文。

 しかし、臨床現場第一主義の小倉さんらしく、ほとんどを事例のお話で通しているところがすごいなと思いました。

 論文はいずれもていねいな面接風景の描写とそれへの具体的な治療者・患者関係の考察で、とても勉強になります。

 そしてここでも治療者が生き残ることというテーマが出てきました。

 統合失調症の治療の例で、その困難さとそこで治療者が何があっても生き残ることの治療的重要さを強調されています。

 ふだん精神科デイケアでボランティアをさせていただいていて、少しずつ感じたり、考えたりしていることに、理論的なバックボーンを与えていただいている感じで、とても力になりました。

 今後もていねいに読み込んでいきたいなと思いました。            (2015?記)

     *   

 2018年の追記です

 去年秋の精神分析学会で、久しぶりに小倉さんのお姿を拝見しました。

 とてもお元気そうで、司会までされていました。

 最近は母子のデイケアで活動をされているそうで、その成果を学べる日も近そうです。

 そこからいろいろと深く学べることを楽しみにして、日々の勉強や生活を頑張りたいと思います。               (2018.10 記)

     *

 ゆうわファミリーカウンセリング新潟(じーじ臨床心理士・赤坂正人・個人開業)のご紹介

 経歴 1954年、北海道函館市に生まれ、旭川市で育つ  

    1977年、ある四流私立大学文学部社会学科を卒業、浦和、新潟家庭裁判所などで家庭裁判所調査官として司法臨床に従事する  

    2014年、定年退職間際に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士)を修了 

    2017年、臨床心理士になる

 仕事 個人開業で、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを研究しています

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 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

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新井満『尋ね人の時間』1991・文春文庫-おとなの哀しみと父娘の面会交流を描く

2024年09月26日 | 小説を読む

 2020年9月のブログです

     *

 本棚を眺めていたら、読んで、読んで、と言っている本があった、ような気がして、新井満さんの『尋ね人の時間』(1991・文春文庫)を読む。

 新井さんは新潟市出身の作詞家で、小説家。

 今は北海道に住んでいるらしい(なんだか身近な感じ)。

 『尋ね人の時間』は1988年の芥川賞受賞作。

 おそらく20数年ぶりに読んだが、例によって、当然、あらすじも忘れていて、新刊同様に読む。

 これがなかなかいい。

 落ちついたおとなの小説という感じ。

 びっくりしたのだが(一度読んでいて、びっくりした、もないが)、離婚で別れた小学生の娘との面会交流の場面が出てくる。

 面会交流の場面が出てくる小説としては、かなり早いほうではないだろうか。

 父娘の派手ではないが、しんみりとした交流がとてもいい。

 小説全体もおとなの哀しさがよく描けていて、いいと思う。

 新井さんの他の小説も読みたくなったが、見つけ出せるかどうか。

 こちらも年末までのお楽しみかもしれない。          (2020.9 記)

 

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岩宮恵子『生きにくい子どもたち-カウンセリング日誌から』2009・岩波現代文庫-ていねいな子どもの心理療法に学ぶ

2024年09月25日 | 子どもの臨床に学ぶ

 たぶん2014年ころのブログです

     *   

 岩宮恵子さんの『生きにくい子どもたち-カウンセリング日誌から』(2009・岩波現代文庫)を久しぶりに再読しました。

 文庫本は2009年以来の2回目だと思うのですが、だいぶご無沙汰をしていました(岩宮さん、ごめんなさい)。

 もっとも、1997年に出た単行本も何回か読んでいるので、この本にはずいぶん勉強をさせてもらっている本です(岩宮さん、ありがとうございます)。

 本の中では、とても丁寧な心理療法の様子が、たいへんこまやかに描かれていて、すごく参考になります。

 事例のひとつは、過剰適応の小学男子のケース。

 チックとおねしょという症状で来談をしますが、箱庭をする中で、自らのこころの無意識の部分をうまく統合して、生き生きとした自分を取り戻します。

 もうひとつは、拒食症の小学女子のケース。

 食事だけなく、唾も飲みこめないという重症例で、心理療法も難航をしますが、箱庭や絵画をやる中で、治療者との信頼関係を深め、少しずつ外界との接触を増やして、ついには病いを克服します。

 最後にすばらしいかぐや姫の絵を描いてカウンセリングルームを去っていくのですが、岩宮さんは彼女が本当にかぐや姫のような世界に生きていたことを理解して治療は終結します。

 いずれも感動的なケースで、岩宮さんは多少の失敗場面も正直に提示をし、それらも含めて心理療法の全体を丁寧に細やかに検討しています。

 とても勉強になるいい本です。

 丁寧な心理療法は、読む人のこころまでを、豊かに、優しく、温かくしてくれるものだと思います。        (2014?記) 

     *  

 2018年秋の追記です

 今日、新潟で開催される箱庭療法学会で岩宮さんの講義があるので、じーじも参加を申し込みました。

 どんなお話が聞けるか、とても楽しみです。         (2018. 10 記)

      *  

 同日夕方の追記です

 箱庭療法学会に行ってきました。

 岩宮さんのワークショップ、よかったです。

 若手治療者の事例を検討したのですが、岩宮さんならではの見立てがいろいろ聞けて、勉強になりました。

 印象に残ったのは、直接、現実に触れられないクライエントさんの象徴的な物語についていくことの大切さ。

 事例ではアニメの世界に付き合うことで、クライエントさんが元気になる過程がすごいと思いましたし、それをわかりやすくお話してくださる岩宮さんの力量に改めで感心させられました。

 さらに勉強をしていこうと思います。         (2018. 10 記)

     *

 2021年秋の追記です

 岩宮さんもこの本で失敗場面をきちんと提示して、事例全体と心理療法について検討をされておられます。

 すごいことだと思います、本当に。         (2021.9記)

     *

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    2014年、定年退職間際に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士)を修了 

    2017年、臨床心理士になる

 仕事 個人開業で、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを研究しています

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 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

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樋口有介『八月の舟』1999・ハルキ文庫-高校男子のやるせなさ、切なさ、不安を描く

2024年09月25日 | 小説を読む

 2021年8月のブログです

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 樋口有介さんの『八月の舟』(1999・ハルキ文庫)を久しぶりに読みました。

 何度か読んでいるのですが、感想文は初めて。

 高校生のやるせなさや切なさ、不安などが淡い恋と一緒にうまく描かれています。

 主人公は母子家庭で育つ男子高校生。

 高校生にしてはニヒルな人生観を持っていますが、好きな女の子にラブレターをうまく書けないでいて悩むという、高校生らしさ(?)もあります。

 例によってあらあすじはあえて書きませんが、不良の親友やその女友達、その周りの同級生やおとなたちとのやりとりが、軽妙でかつ少しだけ哀しいです。

 解説の諏訪来人さんが、樋口さんの小説は、世の中の人間はすべてが努力をしても成功するわけではないが、でも悪いことばかりでもないと励ましてくれる、と述べておられますが、うまい表現だと思います。

 ここには、努力をすれば必ず報われる、という安直な人生観を否定し、しかし、頑張ればそれなりのことはある、という実直な人生観があるようです。

 そして、かなわないことへの哀しみ、やりきれなさ、失望などが避けられないことも経験します。

 これらが、硬直な人生論でなく、すてきな物語として美しく語られるところが魅力です。

 文句なしに面白く、そして、少しだけ哀しい小説です。 

 暑い夏にも、清涼な読書ができて幸せです。      (2021.8 記)

 

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田中千穂子『母と子のこころの相談室』2009・山王出版-こまやかで丁寧な母子面接に学ぶ

2024年09月24日 | 子どもの臨床に学ぶ

 2013年のブログです

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 今年は新潟も大雪で、しばらく冬眠をしていました(冬眠をするなんて、クマさんのようですね)。

 ようやく目覚めました。

 転勤の荷物整理の中で、田中千穂子さんの『母と子のこころの相談室』を再読しました。

 とてもよかったです。

 このすごさは読んでみなくてはわからないだろうなと思います。

 じーじが今回、読んでいて特にすごいなと思ったのは、プレイセラピーの時に砂をかけてきた子どもに対して、田中さんが、砂かけばばあが来た!、と言って、砂をかけられるという困難な事態の時に、それを砂かけばばあごっこという遊びにしたという事例。

 美人の田中さんでも時にはばばあ(?)になるんだと妙に感心をしてしまいました。

 また、じーじも尊敬をしている精神分析の藤山直樹さんの論文からの引用がたくさんあることに改めて気づき、これも大きな収穫でした。

 今、じーじは放送大学大学院の修士論文を作成している真っ最中なのですが、いい本を再読できたなと本当に思えました。        (2013.3 記)

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 2019年12月の追記です

 久しぶりに再読をしました。やはりいい本です。

 田中さんの丁寧でこまやかな臨床の様子がわかりやすく描かれていて、勉強になります。

 今回も一番印象に残ったのは、砂かけばばあごっこのシーン。

 プレイセラピーで砂をかけられて困っている時に、砂かけばばあが登場するという、その即興性と創造性に感心させられます。

 じーじもいつか砂かけじじい(?)になってみようかと思います。

 全編に子どもさんとおかあさんへの深い愛と確かな経験が満ちていて、感動的です。

 初学者のじーじにはまだ気づけない部分も多いと思いますので、さらに勉強を深めたいと思います。        (2019.12 記)

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 ゆうわファミリーカウンセリング新潟(じーじ臨床心理士・赤坂正人・個人開業)のご紹介

 経歴 1954年、北海道函館市に生まれ、旭川市で育つ  

    1977年、ある四流私立大学文学部社会学科を卒業、浦和、新潟家庭裁判所などで家庭裁判所調査官として司法臨床に従事する  

    2014年、定年退職間際に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士)を修了 

    2017年、臨床心理士になる

 仕事 個人開業で、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを研究しています

 学会 精神分析学会、遊戯療法学会会員

 論文「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

 住所 新潟市西区

 mail  yuwa0421family@gmail.com    

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荻原浩『なかよし小鳩組』2003・集英社文庫-ハチャメチャで魅力的な登場人物に笑ってしまいます

2024年09月24日 | 小説を読む

 2020年9月のブログです

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 本棚を眺めていると、なんと、荻原浩さんの『なかよし小鳩組』(2003・集英社文庫)が目にとまりました。

 このあいだ、シリーズ第3作の『花のさくら通り』を読んだばかり。

 ユングの共時性、でしょうか(?)。

 これは読まない手はありません。

 しかも、例によって、ほとんど内容を忘れてしまっているので、新刊同様にワクワクしながら読んでしまいました。

 面白かったです。

 この本も電車の中で読んではいけません。

 メインの登場人物は第3作とほとんど同じですが、ゲスト(?)がすごい!

 ヤクザさんです。

 小鳩組。   

 かわいい名前ですが、本物のヤクザさんたちです。

 あらすじは書きませんが、お話は主人公たちとヤクザさんたちのドタバタ劇。

 ヤクザの怖さも出てきますが、ホロッとする場面もあります。

 そして、ラストがすごい!

 驚愕のラストです。

 読後感はとても爽快!

 いい小説です。

 荻原さんはあいかわらずいい仕事をしています。      (2020.9 記)

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 同日の追記です

 シリーズ第3作、第2作と読んだので、次は当然、第1作『オロロ畑でつかまえて』となりますが…。

 『なかよし小鳩組』は、なぜか、読んで、読んで、という感じで、本棚の一番前にあったのですが、『オロロ畑』はどうでしょうか。

 ざっと見た感じでは、見当たりませんね。

 またまたかなりの恥ずかしがり屋さんのようなので、年末にかけてのお楽しみになりそうですね。

 

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