2020年9月のブログです
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小倉清さんの『子どもの危機にどう応えるか-時代性と精神科臨床』(2020・岩崎学術出版社)を読みました。
新刊です。すごいですね。
そして、とてもいい本です。
小倉さんの最近の論文からちょっと古い論文までが並んでいて、それに小倉さん自身がコメントをつけています。
このコメントがすごいです。辛口コメントばかり。
人間、年を取ると、人にはともかく、自分には甘くなりがちですが、小倉さんは昔の自分にも容赦がありません。
冷静に、しかし、「熱く」、昔の自分に注文をつける小倉さんは、とても素敵です。そして、尊敬できます。
例によって、印象に残ったことを一つ、二つ。
一つめは、母乳を拒否した2歳の女の子の症例。
家族や他人とうまく関係が持てないで騒ぐ女の子の初診で、小倉さんが女の子の心中を察知して、尊重し、何もしゃべらないままに診察を終えます。
そして、それが、次回以降の治療に繋がったというケースです。すごいです。まるで手品のよう。
しかし、小倉さんならではの技です。
こんなことができるのは、あとは田中千穂子さんくらいではないでしょうか。
二つめは、思春期に現れる乳幼児期来の諸問題、という論文。
子どもの課題と諸問題を年代別に実に細かく、丁寧に説明をされていて、勉強になります。
やはり当然ですが、治療者が子どもを尊重し、耳を傾け、丁寧に聴くことや心中を察することなどの大切さを改めて思い知らされます。
さらに真剣に学んでいこうと思いました。 (2020.9 記)
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2021年3月の追記です
こんなことができるのは、田中千穂子さんくらいでは?と書いたのですが、もう一人、山中康裕さんを挙げるのを忘れていました(山中さん、ごめんなさい)。 (2021.3 記)