2024年4月のブログです
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中井久夫さんの『精神科治療の覚書』(1982・日本評論社)をかなり久しぶりに読む。
中井さんの名著なのに、再読がすっかり遅くなった。反省。
中井さんが日々の精神科治療で経験されたことをすごく細やかに、ていねいに記されていて、勉強になる。
真摯な精神科医はこんなにもいろいろなことを考えて治療をされているのか、と本当に感心させられる。
それでいて、そこから患者さん中心の精神医学が立ち上がってくるさまが見えてくるようですごい。
例は違うかもしれないが、松田道夫さんの『育児の百科』を思い出す。
松田さんも、子どもの症状をていねいに細やかに記して、そこから親ごさんが安心できるような情報を導き出すが、そこがそっくりな印象を受ける。
患者さんや家族を大切にする大家は分野が違っても、同じような作業をされているのかもしれないなあ、と思ったりする。
もう一つびっくりしたのが(一回読んでいて、今ごろ、びっくりした、もないが…)、この本で中井さんがすでに「ハムレットの原理」に触れている点。
患者さんの話を「聴く」ということは、その訴えに関して、中立的な「開かれた」態度を維持すること、「開かれた」ということはハムレットがホレイショにいうせりふ「天と地の間には…どんなことでもありうる」という態度、と述べられていて、19世紀のある治療者(誰かな?)が「ハムレットの原理」と名づけている、と紹介されている。
この「ハムレットの原理」を中井さんは患者さんに「ホレイショの原則」と呼んでいたらしいし、じーじの考えではこれはわからないことにすぐに結論を出さずに耐えて考え続けることでもあると思う。
今頃、中井さんの先見の明に触れられて、お粗末なじーじだが、勉強の楽しさを十分に味わえた1か月であった。 (2024.4 記)