ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で、じーじ臨床心理士が公園カウンセリングや訪問カウンセリングなどをやっています。

野田知佑『ユーコン漂流』2019・モンベルブックス-野田さんと愛犬ガクのアラスカ・ユーコン川漂流記です

2023年06月27日 | 随筆を読む

 2022年8月のブログです

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 野田知佑『ユーコン漂流』(2019・モンベルブックス)を読む。

 東川の道の駅にあるモンベルに、いい本はないかな?と(いい服は?でないところがじーじらしい!)入ってみたところ、ペーパーバック版の本書を発見。

 以前、文庫本で読んだことがあるが、そろそろ中身を忘れてきていたので(?)、購入。

 値段も手頃で、なかなか格好いい本なので、袋は断わって、手に持った。

 表紙のカヌーにのる野田さんとガクの写真がいい。

 本書は野田さんと愛犬ガクが30年ほど前にアラスカのユーコン川を3年に分けてカヌーで下った記録。

 カヌーによる川下りだけでなく、現地のインディアンやエスキモーとの交遊がとても楽しい。

 現地の人々とうまく付き合えないでいる欧米人とは対照的に、野田さんの表裏のない態度での現地の人たちとの付き合いが面白い。

 そして、アラスカといえば、クロクマ。

 クロクマとの付き合い方も面白い。

 野田さんは一応、ライフルを購入するが、結果的にはライフルは鈴の役目で終わる

 クロクマの居そうなところにテントを張る時には、鈴の代わりにライフルを数回撃ち、人が居ることを知らせて、遭遇を回避する。

 それでだいたいの危険は回避する。

 一度、ガクが森の中でクロクマと闘い、野田さんのテントに逃げてくると、野田さんはライフルでクロクマを威嚇し、追い払う。

 そして、ガクに、逃げる時には、あっちへ逃げろ、と怒ると、ガクが恐縮して小さくなった、という描写には思わず笑ってしまう。

 また、食べ物がなくなって困っている時には、ガクがサケの頭を見つけてきて、それを野田さんと半分ずつ分けるなど、野田さんはガクとも対等の付き合いをする。

 そういう野田さんの姿がすがすがしいのだと思う。

 社会のゴタゴタで嫌になった時に、読むといい本だと思う。 (2022.8 記)

 

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伊坂幸太郎『砂漠』2017・実業之日本社文庫-伊坂ワールド全開の学生小説です!

2023年06月26日 | 小説を読む

 2022年7月のブログです

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 伊坂幸太郎『砂漠』(2017・実業之日本社文庫)を旭川の古本屋さんで買って読む。

 だいぶ前に単行本で読んだ記憶がうっすらとあったが、中身を忘れてしまっていて、旅先で本棚の確認もできず(かりに確認をしても見つけられるともかぎらず…)、古本のわりに少し高かったがつい買ってしまう(うちの奥さんには内緒)。

 これがいい小説。

 伊坂ワールド全開だ。

 例によって、あらすじは書かないが、盛岡から仙台の大学の法学部に進学した真面目な主人公が、友人とのつきあいの中でいろいろな経験をして、こころの幅を広げていくさまが、ユーモラスに描かれていて心地よい。

 もちろん、楽しいだけでなく、たくさんの哀しみや憤り、怒りなども丁寧に描かれていて、青春の苦しさも感じられる。

 真面目で少し堅苦しい主人公と好対照なのが、理屈より行動を重視する友人の西嶋。

 一見、はちゃめちゃな理屈と行動で回りを驚かすが、一本筋が通っていて、気持ちよい。

 彼らが、友人づきあいの中で、お互いに影響を与え合っていく様子は、読んでいてうらやましくなるような関係だ。

 西嶋が高校生の時に出会う家裁調査官は、『チルドレン』の陣内調査官を彷彿させるいい味の調査官。こういう調査官が増えてほしい。

 真面目だけではない、いろんな隠し味が散りばめられていて、それを味わうのも楽しい。

 旅先の木陰で、とても心地のよい物語を楽しめた。 (2022.8 記)

 

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こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で,じーじ臨床心理士が訪問カウンセリングや公園カウンセリングなどをやっています

2023年06月24日 | カウンセリングを考える

 こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で,じーじ臨床心理士が訪問カウンセリングや公園カウンセリング,海岸カウンセリング,里山カウンセリングメールカウンセリングを新潟市と北海道東川町(夏期)でやっています。また,面会交流の相談・援助もやっています。

 訪問カウンセリングは,屋内で行なう個人カウンセリングや親子・夫婦の家族カウンセリング,子どもさんの遊戯療法などで,ご自宅やお近くの屋内施設で,じっくりとご自分やご家族のことなどを考えてみます。

 料金・時間は1回50分3,000円で,隔週1回あるいは月1回などで行ないます。

 公園カウンセリングや海岸カウンセリング,里山カウンセリングは,屋外で行なう個人カウンセリングや家族カウンセリング,子どもさんの遊戯療法などで,お近くの公園や自然の中で,ゆっくりとご自分やご家族のことなどを考えてみます。 

 料金・時間などは訪問ウンセリングと同じです。

 メールカウンセリングは,メールによるカウンセリングや心理相談で,1週間に1往信で行ない,1往信700円です。

 面会交流の相談・援助は,相談はご自宅などで行ない,1回50分3,000円,援助はお近くの公園や遊戯施設,あるいはご自宅などで行ない,1回60分6,000円です。

 カウンセリング,相談・援助とも,土・日・祝日をのぞく平日の午前10時~午後3時にやっています。

 じーじのカウンセリングは,赤ちゃんや子どもさんがご一緒でもだいじょうぶなカウンセリングですので,お気軽にご利用ください。そういう意味では,深くはないけれども,現実の生活を大切にしたカウンセリングになるのではないかと考えています。

 料金は,低めに設定させていただいていますが,月収15万円未満のかたや特別なご事情のあるかたは,さらに相談をさせていただきますので,ご遠慮なくお問い合せください。

 ちなみに,消費税には反対なのと,計算がややこしいので,いただきません。

 お問い合わせ,ご予約は,メール yuwa0421family@gmail.com までご連絡ください。

   

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佐々木譲『雪に撃つ』2022・ハルキ文庫-愚直な者の生き方と愚直なおとなの恋愛を描く

2023年06月24日 | 北海道を読む

 2022年7月のブログです

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 佐々木譲『雪に撃つ』(2022・ハルキ文庫)を読む。

 これも夏休みにゆっくり読もうと楽しみにしていた本。

 実は単行本を去年の夏に東川の図書館で借りて読んでいて、さすがに物忘れのひどいじーじでもあらすじはだいたい覚えていたが(たぶん)、今回は佐々木さんの力のある文章をたっぷり楽しみながら読もうと思った。

 結果は大正解で、佐々木さんの深く美しい物語を十分に堪能させてもらった。

 あらすじは例によって書かないが、愚直な者どもの生き方と愚直なおとなの恋愛が描かれて、なかなか感動的だ。

 組織の腐敗を暴いたことから閑職に追いやられている警察官の愚直な仕事ぶり、しかし、単純と思われた窃盗事件が殺人事件に結びつくなど、意外な展開を見せる。

 社会派の佐々木さんらしく、技能実習生の問題を背景に据えて、実習生の支援組織の人々とのやりとりも温かく描かれて、印象深い。

 一方、愚直なおとなの恋愛のほう。

 離婚経験者同士の不器用な恋愛が今回も歯がゆい。

 不器用さでは引けを取らないじーじだが、思わず、もう少しうまくやれよ、と声を掛けたくなるほど。

 しかし、これがおとなの恋愛かもしれない。

 そういえば、『マチネの終わりに』の恋愛もかなりの不器用だった。

 不器用だが、愚直な恋愛も、味があっていいかもしれないとも思う。 (2022.7 記)

 

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なまはげさん・秋田・イージス-じーじのひとりごと・セレクト

2023年06月23日 | ひとりごとを書く

 2020年お正月のブログです

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 ニュースを見ていたら、秋田でじーじの大好きな(?)なまはげさんが大活躍をしていた。

 わるい子はいねか?~、いいですねぇ。

 あんななまはげさんが毎年やってくると、秋田にはわるい子はいなくなっちゃうだろうな、と思ってしまう。

 秋田の人たちがイージスの計画に大反対なのも、きっとなまはげさんに鍛えられたからにちがいないと思う。

 この際、なまはげさんには秋田だけでなく、ぜひ全国に出張してもらいたい(特に、あそこ(?)とあそこ(?)からですかね?)。

 世界文化遺産のなまはげさんのちからで、にせものでない、本当に「美しい」(?)日本の国、になるといいなぁ。

 じーじの初夢で終わらないでほしいなぁ。(2020.1 記)

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 2020年初夏の追記です

 イージス・アショアの計画が中止になった。

 やはり、なまはげさんの力はすごいですね。

 防衛庁をやっつけちゃうんですもんね。

 こんどは沖縄の辺野古に出張してほしいな。 (2020.6 記)

 

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平野啓一郎『マチネの終わりに』2019・文春文庫-素敵な男女の切ない恋愛物語

2023年06月22日 | 小説を読む

 2022年7月のブログです

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 平野啓一郎『マチネの終わりに』(2019・文春文庫)を読む。

 平野さんの小説を読むのは初めて。

 旭川の古本屋さんで、本の帯に映画で主演をした石田ゆり子さんがうつっている本書を見つけて、美人恐怖症のじーじだが、つい購入してしまった。

 210円。安い。

 しかしながら、これがなかなかすごい小説。

 あらすじだけをたどれば、下手をすると何ともない小説になりかねないかもしれないが、平野さんのていねいな文章のちからもあってか、切ないけれども、なかなか重厚な物語になっている。

 主人公の男女が少しかっこう良すぎるが、しかし彼らも悩み多き普通の人々であり、内省的であるがゆえに、その悩みや不安に深みを与えている。

 読者が一緒に体験をする物語のテーマは重層的で数多くあり、重みのあるどきどき感が最後まで続く。

 驚いたのは、過去は変わる、あるいは、変えられる、というテーマ。

 精神分析でも重要で、じーじも時々考えさせられるテーマ。

 このテーマをめぐっても、物語が進行して、なかなか興味深かった。

 もともとは毎日新聞に連載された小説とのことだが、こんなすごい小説を連載する毎日新聞を見直した。

 久しぶりに小説の世界にどっぷり浸った一冊だった。

 210円でこんな幸せな時間を過ごせたことをうれしく思う。 (2022.7 記 )

 

 

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伊坂幸太郎『クジラアタマの王様』2022・新潮文庫-現代社会のあやうさとその中での生きざまを描く

2023年06月21日 | 小説を読む

 2022年7月のブログです

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 伊坂幸太郎さんの『クジラアタマの王様』(2022・新潮文庫)を読む。

 この本も夏休みにゆっくり読もうと思って楽しみにしていたもの。

 旭川の本屋さんで買って、すぐに読む。

 不思議な小説、物語である。

 伊坂ワールド全開。

 例によって、あらすじはできるだけ書かないが、まずは、夢が真実か、現実が真実か、というテーマが描かれる。

 ロールプレイゲームとの関連もテーマらしいが、もっと深い世界を描いているような気もする。

 胡蝶の夢、という言葉も出てきて、司馬遼太郎さんをはじめとして、夢と真実は小説家にとっては大きなテーマなのかもしれない、とも思う。

 次に、小説家のすごさを感じた部分。

 昔から、小説家は社会のカナリアのような存在、人が気づかないことに先に気づく、と言われるが、この小説はまさにそう。

 コロナ騒動を、騒動にさきがけて、あるいは、騒動と同時に、これだけ描いた小説はすごいと思う。

 マスコミのいいかげんさ、怖さ、社会のいいかげんさと怖さ、などなどが鋭く描かれる。

 改めて、怖い社会になってきているな、と思うし、ここで、自分らしく生きていくことは、おとなでもなかなか大変だなと思う。

 ましてや、子どもは…。

 コロナはコロナにとどまらず、差別、金儲け、戦争、などなどと問題は広がる。

 このような世の中で、人はどう生きるのか。

 それが多少のユーモアをともなって物語られる。

 とても怖いが、同時に、勇気をもらえる小説ではなかろうか。 (2022.7 記)

 

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椎名誠『おれたちを齧(かじ)るな-わしらは怪しい雑魚釣り隊』2022・小学館文庫

2023年06月19日 | 随筆を読む

 2022年7月のブログです

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 シーナさんの『おれたちを齧(かじ)るな-わしらは怪しい雑魚釣り隊』(2022・小学館文庫)を読む。

 この本も夏休みにゆっくり読もうと楽しみにしていた本。

 旭川の本屋さんで購入。

 大人気シリーズ第7弾、とあって、文庫本はだいたい読んでいるつもりだったが、もうそんなに出ているんだ、と改めてびっくりする。

 本の帯に、ブリだってボラだって出世するのに、どうしておれたちはいつまでも賢くならないのだろうか…、とあるが、シーナさんとその仲間たちの釣りとキャンプとお酒の旅はいつ読んでもおかしい。

 みんな社会人としてはなかなかの仕事をしている人たちばかりだが、シーナさんと遊ぶ時には子どものように無邪気になるところが面白い。

 たとえば、海仁さん。

 シーナさんが昔、初めて小笠原に旅行をした時に、編集者として同行した若者。

 酒を呑まず、笑わせるのに苦労するという真面目で博学な編集者だが、その後、怪しい雑魚釣り隊に加入、エースとして活躍する。

 ところが、大物を釣りあげると興奮をして怪我を頻発するという癖があることが判明、そういう次第を綴るシーナさんの筆が優しい。

 そして、ドレイのみなさん。

 今の世にドレイ(?)が存在するというところに、この集団の特異さと面白さがある。

 下手をするとユーモアを解さない人たちに非難されかねない前近代的制度だが、このドレイのみなさんたちへのシーナさんのさり気ない優しさがまたいい。

 毎回、同じようなできごとが続くが、しかし、変化も確かにあり、ここら辺がこのシリーズの魅力なのかもしれない。

 どこを読んでも決して飽きない面白さがあるというのは、やはりシーナさんの才能なのだろうと思う。

 電車の中で読むには少し危険な本だが、ずっと続いていってほしいと思う。 (2022.7 記)

 

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瀬尾まいこ『傑作はまだ』2022・文春文庫-50歳のややひきこもりの作家と初めて会う息子との物語

2023年06月18日 | 小説を読む

 2022年7月のブログです

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 瀬尾まいこさんの『傑作はまだ』(2022・文春文庫)を読む。

 夏休みに読もうと楽しみにしていた小説。

 旅先の旭川の本屋さんで購入。 

 ゆっくり読もうと思っていたが、なかなか面白くて、1日で読んでしまう。もったいない。

 本の帯には、50歳の引きこもり作家の元に、生まれてから一度も会ったことのない25歳の息子が、突然やってきた、とある。

 若気の至りで生まれた息子に20年間、写真と引きかえに養育費だけを送っていた父子関係が突然変わる。

 びっくりする物語の始まりだ。

 現代っ子の息子と世間知らずの父、二人の織りなす物語が楽しい。

 少しのユーモアと少しの真実が色を添える。

 一見、悩みのなさそうな息子だが、しかしなにやら、少しだけ影を引きずっている風でもあり、気にかかる。

 息子のおせっかいで町内会に入ることになってしまった作家は、おっかなびっくりながらも新しい人間関係を少しずつ築く。

 同じように少しひきこもりの傾向のあるじーじは、人間とはなんとやっかいなものかと思う。

 しかし、そのわずらわしさが同時に喜びでもあるわけだろう。

 子どもを産んだら、子どもだけしか見えなくなった、という息子の母親の言葉も逞しく、重い。

 そして、それが驚くようなラストに続く。

 小説だなあ、と思うが、いい小説だ。

 そして、希望を持てる物語だと思う。 (2022.7 記)

 

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荻原浩『花のさくら通り』2015・集英社文庫-『オロロ畑でつかまえて』、『なかよし小鳩組』、そして……

2023年06月12日 | 小説を読む

 2020年夏のブログです

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 荻原浩さんの『花のさくら通り』(2015・集英社文庫)を読みました。

 これも旭川の本屋さんで見つけました。

 面白かったです。

 そして、いい小説です。

 ユニバーサル広告社という小さな広告会社をめぐる小説で、『オロロ畑でつかまえて』『なかよし小鳩組』に続く第3弾。

 前2作もとても面白い小説でしたが、今回もすごいです。

 今回はある商店街が舞台ですが、主人公だけでなく、その他の登場人物がとても生き生きとしています。

 商店街の変革をめぐるドタバタ劇は、やはり組織と個人の問題や生き方の問題に繋がっていて、じーじには結構、重いテーマですが、荻原さんは一見軽快に描きます。

 加えて、主人公と、その別れた妻に引き取られた娘とのやり取りが少しの哀しみをそえます。

 さらには、若いカップルの許されない(?)恋愛、中年男性の生き様、などなど、さまざまな人間模様が展開します。

 荻原さんはこれらを軽快にとても面白く描きますが、その底には深い哀しみや憤りや怒りなどが渦巻いているように感じられます。

 生きることの喜びと切なさ、じーじがこう書くとなんだか陳腐になってしまいますが…。

 ラストがまたいいです。

 良質の映画を観ているようです。 (2020.8 記)

 

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