ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で、じーじ臨床心理士が公園カウンセリングや訪問カウンセリングなどをやっています。

菅佐和子『思春期女性の心理療法-揺れ動く心の危機』1988・創元社-こまやかな心理療法に学ぶ

2024年10月02日 | 心理療法に学ぶ

 2022年10月のブログです

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 菅佐和子さんの『思春期女性の心理療法-揺れ動く心の危機』(1988・創元社)をかなり久しぶりに読む。

 じーじが若いころ、家庭裁判所で非行少女の援助に苦労していた時に参考に読んだ本。

 しばらく若い女性のカウンセリングをしていなかったので(?)、ご無沙汰していた(菅さん、ごめんなさい)。

 しかし、読み返してみると、とてもこまやかな心理療法で、今でも勉強になる。

 菅さんは、河合隼雄さんが京大の大学院の先生になった時の一期生。

 それまでロジャース派の来談者中心療法を勉強されていた菅さんが、河合さんの指導を受けて、さらに力をつけていった様子がうかがわれる。

 もっとも、河合さんのお考えもあって、コチコチのユング派ではなく、あくまでも菅さんの個性を活かしたていねいなご指導を受けたようで、かなり柔軟で、こまやかなカウンセリングをなさっていることが読み取れる。

 事例が中心の本で、クライエントさんは、強迫症の中2女子、いじめられっ子の中2女子、不登校の中1女子、拒食症の中3女子、抑うつ症の高2女子、などなど。

 いずれもかなり難しそうな事例で、心理療法も難航するが、菅さんは右往左往しながらも、なかなか落ち着いたカウンセリングを実践していらっしゃる。

 その菅さんの心中の右往左往が正直に報告されて参考になるし、全般的にとてもていねいで、こまやかなカウンセリングがされていて、読んでいて脱帽する。

 じーじも、初心にかえって勉強しなくっちゃ、と思わせられる、いい本だ。

 最近、勉強をさぼりがちのじーじには、いい刺激になる一冊だった。      (2022.10 記)

 

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木村敏『臨床哲学講義』2012・創元社-こころ・自己・生命を考える

2024年10月01日 | 精神科臨床に学ぶ

 2020年10月のブログです

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 木村敏さんの『臨床哲学講義』(2012・創元社)を再読しました。

 なんと8年ぶり。ご無沙汰してしまいました。

 木村さんは精神科医で精神病理学者。

 このブログでも何冊かの本を紹介させてもらっていますが、人と人のあいだ、とか、自己論、とかで有名です。

 じーじは、きっかけをよく記憶していないのですが、家裁調査官になって少しして、河合隼雄さんや土居健郎さんらに続いて、木村さんの本を読んだように思います。

 難しい内容でしたが、わからないなりにも頷けるところがあり、調査官研修所の修了論文は大胆にもユングと木村さんのことを書きました(今考えると、若気の至りで恥ずかしいです)。

 その後も木村さんの本を追いかけていますが、とにかく難しいので、どこまで理解できているか心もとありません。

 今回の本は、連続講演の記録ですので、少しは読みやすいのですが、中身はレベルが高いので、やはりなかなか難解です。

 それでも、印象に残ったことを一つ、二つ。

 一つめは、精神の病いは、症状だけではなく、生き方や対人関係のあり方が大切だということ。

 現代の精神医学は、症状をDSMなどのマニュアルによって判断し、薬を処方しますが、本当に治療をするためには、人間学的な理解が大事になるといいます。卓見だと思います。

 二つめは、ちょっとびっくりしたのですが、フロイトさんの死の欲動への評価。

 フロイトさんが晩年に唱えた死の欲動については、精神分析家の間では評判があまり良くありませんが、木村さんの生命論とかなり近いところがあるようです。

 人が生まれ、死ぬということはどういうことなのか、かなり根源的なところを議論されていて、なかなか刺激的です。

 難しい本ですが、さらに読み深めていこうと思います。       (2020. 10 記)

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 同日の追記です

 木村さんの自伝(『精神医学から臨床哲学へ』2010・ミネルヴァ書房)を読んでいると、小学校時代、運動が苦手でいじめられっ子だった、と書かれています。

 そういえば、中井久夫さんもいじめられっ子だったとのこと。

 こんな大学者さんたちでも、子どもの時には苦労をされたのですね。        (2020. 10 記)

 

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椎名誠『にっぽん・海風魚旅 怪し火さすらい編』2003・講談社文庫-シーナさんのフォトエッセイです

2024年10月01日 | 随筆を読む

 2021年9月のブログです

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 本棚を眺めていたら、読んで!読んで!と訴えられているような気がして、つい読んでしまいました。

 シーナさんの『にっぽん・海風魚旅 怪し火さすらい編』(2003・講談社文庫)。

 かなり久しぶりです。

 週刊現代に「海を見にいく」と題して連載されたシーナさんのフォトエッセイをまとめたもの。

 本の帯には、旨いモノ、そして原色の子供に出会った、とありますが、日本各地の子どもたちの生き生きとした表情がとても魅力的で、じーじはこれを見ているだけで、じわーんとしてきました。

 旅をした場所は、土佐、能登、西表、瀬戸内、五島列島、北陸、甑島、そして、野付半島、などなど。

 シーナさんがあとがきで、海を見にいく、じゃなくて、海を食いにいく、だった、と書いていますが、おいしいものをたくさん食べ、当然、おいしいビールもたくさん呑み、そして、きれいな景色とすてきな人々の写真をたくさん撮っています。

 もっとも、シーナさんのこと、今の日本の不必要な海岸工事や投げっぱなしの産業廃棄物、さらには、過剰な管理や注意書きには苦言を呈します。

 しかし、それ以上に、地方の人々の素朴さや子どもたちの礼儀正しさに感動をします。

 まだまだ地方にはきれいな景色や素朴な人情が残っているのだなと改めて感心させられます。

 そういう良さを旅では発見できるのかもしれないと思うことができます。

 また旅に出たくなってきました。

 本書は続編も出ていますので、そちらも楽しみです。       (2021.9 記)

  

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