ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で、じーじ臨床心理士が公園カウンセリングやメールカウンセリングなどをやっています

NHK・Eテレ「日曜美術館・相原求一朗」-北海道の山々を描いた画家に想う

2024年12月22日 | 北海道を読む

 2018年のブログです

     *

 たまたま、NHKのEテレを観ていたところ、今日の日曜美術館の特集が画家の「相原求一朗」さん。

 絵のことには全く疎いじーじですが、相原さんのことは知っています。

 まだひとり旅を始めたばかりの頃、じーじはどさんこの画家さんである坂本直行さん(六花亭の包装紙の絵の画家さんです)の絵が見たくて、帯広近郊の中札内村にある六花亭の美術村に行きました。

 そこで、坂本さんの絵を十分に堪能したあと、美術村の中をぶらぶらしていたら、相原求一朗美術館というのがあって(知らなかったとはいえ、相原さん、ごめんなさい)、入ってみました。

 すると、そこには、北海道の山々の絵がたくさん。

 どれもが、北海道の山らしい雄大な絵ばかりで、すっかりお気に入りになってしまった記憶があります。

 じーじにしては珍しく、椅子に座ったりして、見入ってしまったことを思い出します。

 じーじが知っている山だけでなく、知らない山も、なんとなく北海道らしくて(それがなぜかは、うまく言葉にできませんが)、すごいな、と思いました。

 帰りには坂本直行さんの絵はがきだけでなく、相原さんの絵はがきも買い求めるほどでした。

 今日のテレビを観ていると、相原さんは戦争中に満州にいたことがあり、戦後、それと似ている北海道を訪れるようになったとのことでした。

 満州では戦友が亡くなったりと辛い思い出があったようで、それが北海道の山の絵を描くなかに投影されているようです。

 確かに、重苦しいような印象もありますし、しかし、雄大な、爽快さみたいなものも感じられますし、ひと言では言い表せない深みみたいなものが感じられます。

 番組のゲストのかたが、見る人によって、いろいろな想いが湧いてくるのでしょうね、とおっしゃっていましたが、同感です。

 偶然でしたが、朝からいい番組を観れて、とても幸せな気分でスタートした日曜日です。        (2018. 12 記)

 

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宮下奈都 『神さまたちの遊ぶ庭』2015・光文社-北海道の「大地」と「人々」の「大きさ」を味わう

2024年12月16日 | 北海道を読む

 2016年のブログです

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 素朴で,穏やかで,温かい小説をたくさん書いておられる宮下奈都さん。

 そんな自然体の宮下さんが北海道での自然たっぷりの生活を記したエッセイ集『神さまたちの遊ぶ庭』。

 とても面白く,興味深くて,一気に読んでしまいました。

 北海道を愛する夫の希望で,福井からトムラウシに移り住んだ宮下さんご夫婦と3人の子どもたちの笑い話のような,しかし,大自然での素敵な生活を綴ります。

 エゾシカやキタキツネ,さらには,ヒグマも出てくるという知床並みの秘境。

 トムラウシは日本百名山トムラウシ山のふもとにあり,大雪山国立公園の真ん中にあるので,当然といえば当然ですが,びっくりすると同時に,うらやましくなります。

 ちなみに,「神さまたちの遊ぶ庭」とは,アイヌ語の「カムイミンタラ」の訳で,大雪山のことを指します。

 大自然とその中にある小さな学校と温かい地域の人々の中で,子ども達はどんどんたくましくなり,おとなたちも変化してきます。

 広い大地と自然豊かな環境は,いつのまにか人々を癒し,成長のエネルギーを与えてくれるのかもしれません。

 近くのスーパーまではなんと車で30分!

 しかし,通勤に2時間以上かかる都会に比べて,どっちが不便だ?!,と著者は静かに訴えます。

 便利さに馴れて,大切なものを見失いがちな私たちに,いろいろなことを考えさせてくれる一冊だと思います。       (2016 記)

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 2023年10月の追記です

 子どもたちが小さかったころ、まだ家族がじーじと一緒に北海道旅行をしてくれて(?)、トムラウシ温泉の東大雪荘に泊まったことがありました。

 とてもいい宿で、特に露天風呂は最高でした。

 翌朝、朝食会場に行くと、登山客でいっぱいで、家族でまとまって座る席がありませんでしたが、登山客のかたが席を譲ってくださって、ありがたかった思い出があります。

 登山客のかたはこころが優しいんだなと思った記憶があります。         (2023.10 記)

 

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竹田津実『オホーツクの十二か月-森の獣医のナチュラリスト日記』2006・福音館書店-北海道を読む

2024年10月31日 | 北海道を読む

 2015年のブログです

     *    

 竹田津さんの2006年の本です。

 先日,ご紹介した竹田津さんの『北の大地から』を読み返して,とても良かったので,さっそくこの本も購入して読みました。

 この本も『北の大地から』と同じく,落ちついた文章と美しい写真が印象的です。

 文章はユーモアの中に静かな怒りがこめられていて,自然を愛する竹田津さんの素朴で素直な思いが伝わってきます。

 12か月の文章の中で私が一番印象に残ったのは,やはり子ギツネのヘレンのお話。 

 ヘレンは目,耳,鼻などの障害で,一人では(一匹というべきか?)生きていけない状態で竹田津さんがお世話をしますが,味方と敵の区別がつかず,竹田津さんご夫婦にもはむかいます。

 しかし,竹田津さんの奥さんが,ヘレンを抱いて子守唄をうたってあげると,なんと落ちついて眠ります。

 このエピソードは,子守唄と母性のすごさを感じさせらた一瞬でした。

 人間のすごさかもしれません。 

 しかし,こんなすごい人間が,竹田津さんが怒るような自然破壊もしてしまいます。

 冷静に,温かく,賢く,ゆったりとなどなど,バランスよく生きていきたいなと考えさせられる一冊でした。         (2015 記)

 

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竹田津実『北の大地から』1993・恒文社-北海道・道東・ポンヤンベツ川

2024年10月30日 | 北海道を読む

 2015年のブログです

     *  

 竹田津さんは北海道在住の獣医で写真家,エッセイスト。

 映画<キタキツネ物語>を作った人でもあります。

 その竹田津さんの22年前のエッセイと写真の本です。

 特に,写真は秀逸で,もっと大きな写真集で見てみたいようなすばらしいものばかりです。

 舞台は道東を流れる一本の川。

 その変わりざまとそこに関わる農家や漁業,林業の人たち,そして,そこに生活をする人々を冷静な文章で描きます。

 その文章は冷静ながらも,抑えた怒りがにじみます。

 あからさまな怒りにならないのは,誰もがそこで生きているせいでしょうか。

 自分も加害者であるという事実が筆を抑えるかのようですが,しかし,なんとかしようよ,なんとかしなければ,という熱い思いが伝わります。

 批判は簡単ですが,堅実な変革は痛みを伴い,ゆっくりとしか変わらないようです。

 今度は道東の小さな川を眺めに訪れたいと思いました。        (2015 記)

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 2020年春の追記です 

 コロナがなかなか収まりません。今年の夏、じーじは北海道に行けるでしょうか。少し心配になってきました。       (2020.4 記)

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 2023年秋の追記です

 なんのかんのといいながら、ここ4年の間も北海道におじゃましました。

 フェリーの会社はおかげさまでコロナにそれほど神経質ではなく、あやしいじーじとタントくんを運んでくれています。感謝です。

 今年の夏も東川の図書館では、ブログの作成や更新などでお世話になりました。こちらもおおらかで助かっています。

 一度、机の目の前に中国人のすごい美人ちゃんが座って、じーじの美人恐怖症が悪化しそうになりましたが、困ったのはそれくらいでした(それと、アメリカ人の美人ちゃんに写真を撮られそうになったピンチ(?)もありましたが、今となれば笑い話です)。        (2023.10 記)

 

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加賀乙彦『海霧』1992・新潮文庫-北海道の大自然の中の精神病院で働く心理療法士を描く

2024年10月24日 | 北海道を読む

 2018年のブログです

     *  

 加賀乙彦さんの『海霧』(1992・新潮文庫)を再読しました。

 久しぶりでしたが、いい小説で、いい物語を十分に堪能しました。

 加賀乙彦さんはご存じのように精神科医で小説家、その加賀さんが描く心理療法士はなかなかリアルです。

 描かれるテーマは恋愛、精神科医療、精神病院のあり方、精神病、心理療法、加えて、漁業、貧富の問題、そして、信仰、などなど、多様で多層的です。

 さらには、北海道の自然も魅力たっぷりに、しかし、自然の厳しさも含めて、美しく、確かな日本語で丁寧に描かれます。

 思わず引き込まれてしまい、ボランティアの最中にも読んでしまい(メンバーさん、ごめんなさい)、あっという間に読みおわりました。

 読後感はいいです。

 とても充足した感じです。

 結末は明るくはなく、幸せでもありませんが、なにか満たされたものを感じます。

 あらすじはあえて書きませんが、あらすじより行間にただようものを感じるのがいいのかもしれません。

 美しく、確かな日本語の合間から豊かな世界が垣間見れるような感じがします。

 精神的に少しだけ豊かになったような錯覚を覚えます。

 そう、おそらくは錯覚なのかもしれません。

 しかし、その錯覚があれば、しばらくはこころ豊かに過ごせそうな予感がします。

 そんないい小説です。

 どさんこのじーじは、小説の舞台となった自然豊かな道東の森や海にまた行きたくなりました。

 来年の夏が楽しみです。      (2018. 10 記)

 

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道下俊一『霧多布人(きりたっぷじん)になった医者-津波の村で命守って』2004・北海道新聞社

2024年10月14日 | 北海道を読む

 2017年のブログです

     *   

 道下俊一さんの『霧多布人(きりたっぷじん)になった医者-津波の村で命守って』(2004・北海道新聞社)を読みました。

 いい本です。涙が出ました。

 道下さんは道東の霧多布の診療所で長くお医者さんを続けたかた。

 元々、北大医学部から1年交代の約束で霧多布に赴任したものの、1年後に北大に戻ろうとすると、地元の人たちに引き留められ、とうとう47年も診療所のお医者さんを続けられたという人です。

 その熱意と責任感と頑張りには本当に頭が下がります。

 道下さんはもともとは内科が専門ですが、田舎の診療所ではなんでもできなければ一人前とは言えませんし、住民の方々に信頼してもらうこともできません。

 命が懸かっている緊急を要することの場合には、できないなどと言わずに果敢に挑戦されます。

 もちろん、どうしても無理な病気や怪我の時には釧路の病院を勧める柔軟さもお持ちですが、いかんせん、47年前の貧しい漁村では、病院代や交通費もままならなくて、診療所を頼りにする人が多かったようです。

 そんな中で、夜中も休日もなしに、住民の健康を守るために、一所懸命に医療に従事する姿が描かれます。

 また、子どものために剣道を教えたりもして大活躍です。

 後輩の心配をするようになった頃、村の出身で東大医学部に進んだある若者が、僻地医療への情熱を燃やして研修先の北大から霧多布の診療所に赴任してくれることになり、道下さんの熱意は受け継がれていくことになります。

 それも道下さんの頑張りの結果なのでしょう。

 この本をじーじは旅先の旭川の本屋さんで見つけました。

 2004年の本ですから、ずいぶん気づかないで過ごしてしまいました。

 しかし、今になってでも読めたことは幸せです。

 どさんこの素晴らしい先輩の活躍を読んで、自分も少しでも頑張ろうと思いました。       (2017.7 記)

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 同年秋の追記です

 7月にこのブログを書いたところ、後日、ある読者さんから、ブログを読んで、この本を注文しました、というメールをいただきました。

 びっくりしていましたら、さらに後日、その読者さんのブログに、この本を丁寧にご紹介いただきました。

 とてもうれしかったです。どうもありがとうございました。        (2017.  9 記)

 

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佐々木譲『雪に撃つ』2022・ハルキ文庫-愚直な者の生き方と愚直なおとなの恋愛を描く

2024年09月19日 | 北海道を読む

 2022年7月のブログです

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 佐々木譲『雪に撃つ』(2022・ハルキ文庫)を読む。

 これも夏休みにゆっくり読もうと楽しみにしていた本。

 実は単行本を去年の夏に東川の図書館で借りて読んでいて、さすがに物忘れのひどいじーじでもあらすじはだいたい覚えていたが(たぶん)、今回は佐々木さんの力のある文章をたっぷり楽しみながら読もうと思った。

 結果は大正解で、佐々木さんの深く美しい物語を十分に堪能させてもらった。

 あらすじは例によって書かないが、愚直な者どもの生き方と愚直なおとなの恋愛が描かれて、なかなか感動的だ。

 組織の腐敗を暴いたことから閑職に追いやられている警察官の愚直な仕事ぶり、しかし、単純と思われた窃盗事件が殺人事件に結びつくなど、意外な展開を見せる。

 社会派の佐々木さんらしく、技能実習生の問題を背景に据えて、実習生の支援組織の人々とのやりとりも温かく描かれて、印象深い。

 一方、愚直なおとなの恋愛のほう。

 離婚経験者同士の不器用な恋愛が今回も歯がゆい。

 不器用さでは引けを取らないじーじだが、思わず、もう少しうまくやれよ、と声を掛けたくなるほど。

 しかし、これがおとなの恋愛かもしれない。

 そういえば、『マチネの終わりに』の恋愛もかなりの不器用だった。

 不器用だが、愚直な恋愛も、味があっていいかもしれないとも思う。       (2022.7 記)

 

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河﨑秋子『颶風(ぐふう)の王』2018・角川文庫-どさんこ女流作家による人と馬のすばらしい物語

2024年09月12日 | 北海道を読む

 2020年7月のブログです

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 河﨑秋子さんの『颶風(ぐふう)の王』(2018・角川文庫)を読みました。

 川﨑さんの本も初めて。

 作家の紹介欄に、羊飼い、1979年北海道別海町生まれ、とあります。

 どさんこさんですね。

 この本も旭川の本屋さんの北海道本のコーナーで見つけました。

 すごい物語です。

 東北や北海道根室を舞台とした、馬と人の物語。

 あらすじはあえて書きませんが、馬と人との交流がきれいごとに終わらずに、描かれます。

 物語自体も何代にもわたってすごいものがありますが、そこに内包されているものがすごいとしか言いようがありません。

 日本が近代化する中で、捨て去ってきた大切なもの。

 声高にそれを叫ぶわけではありませんが、読んでいるとだんだんとこころにしみ込んできます。

 あらためて、自然との調和の大切さを感じさせられます。

 読後感の心地よい、スケールの大きな良質の物語です。      (2020.7 記)

 

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原田マハ『さいはての彼女』2013・角川文庫-北海道を舞台にした女性を描く小説たち

2024年09月06日 | 北海道を読む

 2020年7月のブログです

     *

 原田マハさんの短編集『さいはての彼女』(2013・角川文庫)を読みました。

 原田さんの小説を読むのは初めて。

 旭川の本屋さんでいい本はないかな、と眺めていたら、北海道本のコーナーに置いてありました。

 本の帯に、疲れた心にビタミンチャージ!、とあって、じーじもビタミンが欲しくなりました。

 しかも、写真を見ると、すごい美人ちゃん。

 美人恐怖症のじーじでも魅かれてしまいます(?)。

 4つの短編小説からなりますが、どれもが北海道に関係した小説で、どさんこのじーじには見逃せません。

 仕事に疲れた頑張り屋ウーマンさんなどが主人公ですが、ここに耳の不自由な少女が絡んできます。

 みんなが格好よすぎるところが少しだけ欠点ですが、今どきのキャリアウーマンや少女たちがよく描けています。

 そういった主人公たちが、あることを機に、仕事中心で置き忘れてきた何かに気づく瞬間を、とてもうまく切り取っています。

 あるいは、何かをきっかけに、人生の大きな決断を下すさまがいさぎよいです。

 女性のほうがいさぎよいのかもしれません。

 読後感はすがすがしいです。

 ビタミンチャージ!です。     (2020.7 記)

 

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せきしろ『バスは北を進む』2019・幻冬舎文庫-北海道・道東での子どもの頃の思い出を綴る

2024年08月29日 | 北海道を読む

 2019年のブログです

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 せきしろさんの『バスは北を進む』(2019・幻冬舎文庫)を読みました。

 この本も旭川の本屋さんで見つけました。

 せきしろさんの本は初めてです。

 それにしても、せきしろ、って不思議なペンネームですね。本名なのかな?

 北海道の道東、それも網走やオホーツク沿岸地方での子どもの頃の思い出が淡々と綴られます。

 北海道の道北、旭川で子ども時代を過ごしたじーじにも同じような思い出があって、なんだか懐かしいです。

 本当に懐かしい。

 そして、なんとなく、温かいです。

 北海道は外は寒い日が多いのですが…。

 詩のような、こころがくつろぐ世界。

 ふるさとって、そういうものでしょうか。

 再び訪れると、風景はさびれているのですが…。

 さびれていても、ふるさとはふるさと。

 大切な存在。

 大切な思い出です。

 いいふるさとがあることは幸せなのかもしれません。      (2019.8 記)

 

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佐々木譲『真夏の雷管-北海道警・大通警察署』2019・ハルキ文庫-おとなの男女を描く良質の小説

2024年08月03日 | 北海道を読む

 2019年夏のブログです

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 佐々木譲さんの『真夏の雷管-北海道警・大通警察署』(2019・ハルキ文庫)を読みました。

 旭川の本屋さんで見つけて読みましたが、とても面白かったです。

 佐々木さんは北海道在住の小説家。北海道を舞台にした良質の小説をたくさん書かれています。

 本作もネグレクト気味の小学生をめぐって、警察官、母親、そして、爆弾犯人が、それぞれの立場からおとなのあり方を提示し、関わります。

 そして、小学生もそれぞれのおとなの真摯な態度に何かを学ぶようです。

 佐々木さんの小説は文章がうまく、かつ、スピード感がすごいです。その読後感もとてもすがすがしいです。

 解説の池上冬樹さんも述べておられますが、佐々木さんの小説は犯人への目線が温かで、アメリカの警察小説のように一方的に邪悪な人物ではなくて、犯罪に至る経過が丁寧に描かれているのが特徴的です。

 どこか家裁調査官の非行少年へのまなざしを思い浮かべられるようなところがあります。

 そこが佐々木さんの小説の魅力です。

 警察官も、弱さも強さも抱えている普通の存在で、右往左往してしまいます。

 特に、男女関係はとても不器用で、しかし、そこが微笑ましいですし、魅力的でもあります。

 北海道に来て、北海道が舞台のいい小説が読めて、最高の贅沢です。     (2019.7 記)

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 2020年冬の追記です

 佐々木さんの北海道警シリーズにはまってしまった勢いで、今日は『真夏の雷管』をまた読んでしまいました。

 前回からまだ半年で、あらすじはさすがの忘れん坊のじーじでもある程度は覚えていたのですが、佐々木さんの文章がスピード感があって、かつ、その表現がおとなの味わいに満ちているので、一気に読まされてしまいました。

 信ずることのすごさ、信ずる者同士の良さ、不器用でも思いやることの大切さ、などなどが描かれています。

 改めて素敵な小説だと思いました。     (2020.1 記)

 

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佐々木譲『樹林の罠』2022・角川春樹事務所-北海道警察の組織悪を暴いてしまった仲間たちの絆を描く

2024年07月31日 | 北海道を読む

 2023年7月のブログです

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 佐々木譲さんの『樹林の罠』(2022・角川春樹事務所)を読む。

 北海道警察・大通警察署シリーズの最新刊。

 まだ文庫本になっていないので、東川の図書館で単行本を読む。

 図書館で読んだ本の感想文を書くのは初めてかもしれない。

 主人公は何年か前に仲間とともに北海道警察の組織悪を暴いてしまったせいで、閑職に追いやられている佐伯宏一刑事。

 彼とその時の仲間たちがまたまた組織と対立してしまう物語だ。

 例によってあらすじは書かないが、やはり、組織と個人の問題、組織悪、官僚化などの問題が背景に浮かぶ。

 力のある者が、組織の都合で閑職に追いやられる世界。

 ここでは、北海道警察がやり玉に挙がっているが、他の警察や他のお役所、企業でも事情は同じであろう。

 佐伯刑事は殺人事件の合同捜査本部には呼ばれず、与えられた目の前の小さな事件に部下とともに取り組むが、地道な取り組みがだんだんと殺人事件の解決に近づく。

 昔、一緒に組織悪を暴いてしまった仲間たちのなにげない応援や協力の姿が楽しい。

 年配者や若者、女性が、誰に指示されたわけでもなく、力を合わせる姿は、日本の組織では夢物語のように思える。

 自立した個人というのは、組織のゆがみを乗り越えられるかもしれないという夢を与えてくれるかのようだ。

 ここがこのシリーズの読みどころなのかもしれない。

 組織に埋没しない自立した個人。

 まだまだこのシリーズが続いていくことを祈りたい。      (2023.7 記)

 

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佐々木譲『警官の酒場』2024・角川春樹事務所-仲間たちの信念と矜持、絆を描く

2024年07月29日 | 北海道を読む

 2024年7月のブログです

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 佐々木譲さんの『警官の酒場』(2024・角川春樹事務所)を読む。

 北海道警察・大通警察署シリーズの最新刊。第1シーズン完!とある(しくしく)。

 まだ文庫本になっていないので、楽しみにしていた東川の図書館で読む(?)。

 図書館で読んだ本の感想文を書くのはこれがたぶん2冊目(ごめんなさい、佐々木さん。文庫本になったら買いますね)。

 主人公は何年か前に仲間とともに北海道警察の組織悪を暴いて、捜査の第一線から外されている刑事。

 力のある者が、組織の都合で閑職に追いやられる世界。

 しかし、その実績を買われて最近は警部昇進試験の話がやかましい。

 もっとも、主人公は父親の介護を抱えて、身動きができない状態。

 以前、付き合っていた仲間の女性刑事との仲も未解決(?)だ。

 そんなところに、闇バイトによる強盗殺人事件が発生。

 詳しいあらすじは書かないが、主人公たちが、携帯の窃盗事件などを地道に捜査していると、偶然にも闇バイトの凶悪事件に近づいていく。

 さらに、ここに、以前の巻で、覚せい剤の前科があるというだけで、愛する女性と別れることになった若い刑事も絡む。

 さまざまな愛情と葛藤を抱えながらも、昔、一緒に組織悪を暴いてしまった仲間たちのなにげない応援や協力の姿が楽しい。

 信念と矜持によって自立した個人というのは、組織のゆがみを乗り越えられるかもしれないという夢を与えてくれるかのようだ。

 この仲間たちが気楽に集えるブラックバードという酒場が最後の舞台。

 覚せい剤の前科にとらわれて愛する女性を失った若い刑事が、おれはもう、警官でなくてもいい、と言って人質になり、命がけで女性を救うラストは美しい。

 若い刑事の行動を見て、主人公も先に進む決意をするところで、物語はいったん終了する。

 いい小説だなあ、とつくづく思う。     (2024.7 記)

  

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椎名誠『流木焚火の黄金時間-ナマコのからえばり』2016・集英社文庫-北海道東川町が出てきます!

2024年07月21日 | 北海道を読む

 2016年のブログです

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 シーナさん、こと、椎名誠さんの『流木焚火の黄金時間-ナマコのからえばり』(2016・集英社文庫)を読みました。

 シーナさんが週刊誌サンデー毎日に連載をしているエッセイをまとめたナマコのからえばりシリーズの堂々第7巻(あれ?なんか宣伝ふうになってしまいました)。

 いつものように身辺雑記を記しながらも、世の中のおかしなことを爽快に滅多切りにしています。

 シーナさんはじーじより10歳としうえの(じーじが勝手に)尊敬をしている人生の先輩ですが、いつもその鋭くも正確な感性にとても共感ができるので、すごく気持ちよく読み進めることができます。

 そして、今回も、いつもの調子で、大笑いやくすくす笑いをしながら、ウンウンとつよく頷きながら読んでいると、なんと!「北海道の東川町で考えた」という文章が出てきました。

 シーナさんの写真展を写真の町宣言をしている東川町で開催することになり、お話もしてきたという記事です(じーじもぜひ行きたかったです)。

 写真甲子園のことや樹木に囲まれた家々のこと、大雪山の湧き水による水道のことなど、さすがは一流の作家さん、とても丁寧でわかりやすい文章で綴っています。

 そして、最後に、東川町の写真による町おこしについてふれ、安直なテーマパークなどで町おこしするよりもずっと大切な取り組みではないか、とここでも鋭い問題提起をされています。

 ひさしぶりに痛快なシーナ節を聞いて、おいしいビールを呑むことができそうです。     (2016.8 記)

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 2020年11月の追記です

 シーナさんがもし、写真甲子園の審査員になったら、じーじは何を差しおいても東川町に行きます。

 来年あたり、コロナを怖がりつつ群れているであろう東京オリンピックに背を向けて、写真甲子園を観にいきたいものです。     (2020. 11 記)

 

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玉村正敏ほか『東川スタイル-人口8000人のまちのが共創する未来の価値基準』2016・産学社

2024年07月20日 | 北海道を読む

 2016年のブログです

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 この本は道の駅ひがしかわで買いました。

 新潟にいた時にはノーチェック、旅ではこういう楽しみがあるからやめられません。

 まとめたのは慶応大学の先生たちでコンセプトもすばらしいのですが、同時に、インタビューを担当した吉田真緒さんの飾りのない素直な文章が、東川町の水や空気のようで、すがすがしく、心地よい感じです。 

 昔はほかの町と同じようで、過疎化に悩んでいた町が、どんなふうに変わってきたのかを、その変化を担ってきた人たちを主体として、徹底的に取材をし、その底に流れる考え方や生き方に迫っています。

 下手な小説より感動的ですが、決して劇的なものではなく、ふつうの人たちがふつうの暮らしを大切にしている中で、変化が自然に起こってきていることがすごいと思います。

 いわば、うまくいっている時のカウンセリングみたいな感じで、押し付けでなく、自然な変化を促すような印象を受けます。

 人も町も、おいしい空気と水があれば、そして、それを大切にしていくように暮らしていれば、人や町そのものをも育むことになるのかもしれません。

 シンプルだけど、大切なことに気づかせてくれた一冊です。      (2016.8 記)

 

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