8日、モスクワのクレムリンで開いた軍人へ勲章授与式で、大統領選への出馬を請われるプーチン氏㊧=AP
プーチン大統領が5選出馬を表明したロシアは、伝統的な帝政への回帰を見せている。終身大統領の座も視野に入れたプーチン氏は現代版の帝国を護持することをもくろみ、既存の国際秩序を危うくする。「皇帝(ツァーリ)」の野望と命運はウクライナ軍事侵攻の行方が握る。
「すべてのわが国民とすべてのドンバス、われらの再統合された土地を代表し、あなたに選挙に参加するようお願いします」。8日、侵攻で功績のあった軍人への勲章授与式で、ウクライナ東部の占領地ドンバスの軍人がプーチン氏に懇願するように語った。
「出馬する」と厳粛な表情で答えるプーチン氏。まるで民衆が皇帝に直訴しているような光景だった。20世紀初めまでの帝政ロシアを想起させた。舞台を整え、台本を用意したのは大統領府だろう。前日には上院が選挙日程を2024年3月17日と決めた。
16世紀にイワン4世(雷帝)が正式に皇帝を名乗って以降、ロシアは1917年の革命まで、長く専制君主の国だった。ロシアの政治にはいま、そうした帝政に回帰するような風潮が広がる。
絶対的な権力をふるう皇帝は死ぬまで皇帝の座から降りなかった。独裁的なプーチン氏もさらに2期12年、2036年まで国家元首にとどまろうとするだろう。再び改憲すれば終身大統領も可能だ。2000年に始まった治世は終わりが見えない。
プーチン氏に帝政に似た権威主義政権の必要性を説いたのは、君主制主義者だった20世紀のロシア思想家イワン・イリインだ。彼の著作をプーチン氏が愛読し、政権内にも広めた。ウクライナを巡る西欧との対立に備えるよう説いたのもイリインだ。
感化されたプーチン氏もロシアの帝国的性格を肯定し、称賛してきた。千年にわたり「ロシアは多民族、多宗教の国家として形成されてきた」との信念を持つ。広大な領土と多民族・多宗教の国家体制を護持しなければらないと信じ切っている。
現代にあってはもちろん、かつての帝政に戻れるわけではない。それでも、権力維持のために憲法の改正や言論の統制、野党の弾圧をいとわない内政、勢力圏にウクライナをとどめようとする領土拡張の野望も、ロシアの歴史的な回帰を映している。
プーチン氏を支持する保守派の多くも、ロシアの帝国的な性格を信じる。その広大な領土を統治し、守るためには、「皇帝」とも称される強い指導者が必要だと考えている。最大の保守派団体であるロシア正教会がその代表だ。
「わがロシアの祖国とすべてのロシアの民族のため、これからも仕事を続けていただけるように」。11月28日にモスクワで開かれた保守派の大会で、ロシア正教会のトップ、キリル総主教はプーチン氏にこう5選出馬を切望した。
5選が確実なプーチン氏を脅かすものは何だろうか。ロシア帝国が打倒されたのはロシア革命だ。革命の原因は、第1次世界大戦にいたる戦争の長期化による混乱と戦況の悪化にあった。国民は帝政と経済悪化への不満を高めた。
プーチン氏も同じく侵攻の長期化に直面する。いまのところ内政や経済の混乱を抑え込んでいるが、戦況が悪化すれば、内部崩壊を起こす可能性は否定できない。反対に「勝利」を宣言できれば、プーチン氏の治世がさらに長期に及ぶ可能性は高まる。
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露骨なお世辞に反吐が出ますね。 まあ、独裁国家だから暗殺されてしまうので仕方ないとは思いますが。
プーチンは、既に失脚しているのではないだろうか? 明らかにこの顔はプーチンではないですね。 失脚していなければ何故、影武者を使う必要があるのか???