バイデン米政権は中国を最大の競争相手と位置づけている(13日)=AP
2024会計年度(23年10月〜24年9月)の米国防予算の大枠を定める国防権限法が22日、成立した。
インド太平洋を対象に地上発射型ミサイルの配備戦略をつくる。アジアで米軍の態勢強化を目的とする予算は前年度より3割近く増やした。
バイデン大統領が22日、国防権限法に署名した。国防予算は約8860億ドル(約127兆円)で23会計年度に比べて3%多い。長期的に最大の競争相手とみなす中国への対処に重点を置き、ウクライナやイスラエル支援も推進する。
地上発射型ミサイルをめぐる戦略では、インド太平洋地域での配備先の候補を示す。関係国に配備を受け入れてもらうための措置や同ミサイルの運用方針も盛り込む。中国を射程に入れるには日本やフィリピンの協力が必要になるとの見方が多い。
米太平洋陸軍は24年、地上発射型の中距離ミサイルをアジアに展開する計画だ。米国とロシアの中距離核戦力(INF)廃棄条約が19年に失効し、米軍は開発に着手した。同条約は射程500〜5500キロメートルの地上発射型ミサイルの保有を禁じた。
米軍の態勢強化を使途とする太平洋抑止イニシアチブに147億ドルを計上した。前年度を28%上回った。滑走路や軍事施設の整備に使ったり、同盟国との軍事演習を増やしたりする見通しだ。弾薬の調達にも充てる公算が大きい。
在日米軍の運用体制の見直しに向けた報告書を24年6月までに提出するよう国防長官に要望した。中国抑止に向けて自衛隊との統合運用を深めるために必要な米軍の体制づくりを分析する。
米国と日本、オーストラリア、インドを中心として、インド太平洋で海洋監視の枠組みを立ち上げるようにバイデン政権へ求めた。支援を通じてアジア諸国の海洋監視能力を向上させたり、監視強化を目的に先端技術の活用を進めたりする。
4カ国は「Quad(クアッド)」として海洋の安全保障問題に取り組んでおり、国防権限法はさらなる協力を訴えた。
欧州地域ではウクライナ安全保障支援イニシアチブに3億ドルを使う。同イニシアチブは米軍の在庫から武器を直ちに送らず、防衛企業と契約を結んで新しい武器を生産する。供与に時間がかかるため、ウクライナへの長期支援の意味合いが大きい。
国防権限法は上院の同意を得ずに北大西洋条約機構(NATO)を離脱することを禁じた。トランプ前大統領が24年の大統領選で勝利した場合に備える狙いとみられる。前大統領は在任中にNATO離脱を示唆していた。
中東地域では、イスラエルが長期的に必要とする弾薬の種類や数量を詳細に分析する。イスラエル軍のパイロットに空中給油機の訓練を提供し、長時間にわたる軍事作戦を実行しやすくする。
バイデン政権は国防権限法と切り離して、ウクライナやイスラエル支援を盛った追加予算案を議会に求めている。
追加予算案は戦闘で直ちに必要となる武器の供給を重視する。与野党は24年初めの可決を目指して協議を急ぐ。
日経記事 2023.12.23より引用