岸田文雄首相はイタリアでの主要7カ国首脳会議(G7サミット)で中国をめぐる懸念を提起する。
日本が議題として取り上げるように働きかけた「インド太平洋」の討議で、欧州各国でも課題となっている経済安全保障の問題に絡め、アジア情勢への関心を引き寄せる。
岸田首相は12日、政府専用機で羽田空港を出発する。13〜15日にイタリア南部プーリア州で開くG7サミットに出席し、15日にはスイスでウクライナ和平案を議論する「世界平和サミット」に参加する。16日に帰国する。
G7は2024年の議長国をイタリアが務める。ロシアによるウクライナ侵略や中東情勢に加え、アフリカや移民の問題を主要な議題に据えた。
米欧は急増する移民が国内の対立を招き、喫緊の課題になっている。イタリアにも北アフリカから多数押し寄せてきている。貧困や気候変動が原因とみて話し合う。
移民を認めていない日本にとっては米欧に比べると優先度は高くない。
懸念するのは中国が現状変更を試みる東アジア情勢への関心の低下だ。23年の広島サミットはアジア開催という事情もあり、各国が注目した論点だった。
岸田首相は2月に来日したイタリアのメローニ首相に「インド太平洋」を議題として扱うように働きかけた。
各首脳は15日にスイスに移動するため、G7サミットは3日目の討議を見送った。世界経済全体を話し合う会合は省略したが、「インド太平洋・経済安全保障」のセッションは入った。
岸田首相はこの場で議長に続いて発言する見通しだ。最初に議論の流れをつくる役割を期待できる。周囲に「サミットで経済安全保障や自由で開かれたインド太平洋について訴える」と意欲を示す。
北朝鮮の核・ミサイル開発に加え中国の動向を説明する。沖縄県・尖閣諸島を含め東シナ海や南シナ海の情勢を懸念する。香港や新疆ウイグル自治区の人権状況のほか、台湾海峡の平和と安定の重要性について伝える。
G7参加国のうち日米は東アジア地域をはじめ中国の軍事力拡大に直面する。欧州各国は経済力を増すインド太平洋地域への関与を強めているものの、日米の危機感とは温度差がある。
フランスのマクロン大統領は5月に中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席を国賓待遇でもてなした。ドイツのショルツ首相は4月に訪中し、習氏と経済協力を話し合った。
4月のG7外相会合の成果文書は「中国には我々の懸念について直接対話する必要性を再確認すると同時に、共通の関心分野は協力する用意がある」と明記した。
中国との対話に向け日本はG7各国と懸念事項に関して認識を擦り合わせていく必要がある。
土台にするのは23年の広島サミットでの議論だ。サミットで「経済安保」を独立した議題に取り上げたのは23年が初めてだった。
首脳宣言に対中依存度を下げる「デリスキング(リスク低減)」の必要性を盛り込んだ。
最近は中国が巨額の補助金を振り向けて電気自動車(EV)や太陽光パネルをつくりすぎ、不当な安値で輸出しているとの批判が強まっている。
日米欧は脱炭素に向けた補助金の要件をそろえ、過剰生産に対抗する議論を始めた。
岸田首相は欧州にとっても身近な経済安保の問題も絡めながら東アジア安保への懸念に関心を引き寄せていく構えだ。
広島サミットの成果として生成AI(人工知能)のルールをつくる「広島AIプロセス」の推進も唱える。
G7以外でも賛同する国を募った「フレンズグループ」を立ち上げており、こうした取り組みを強調する。
G7サミット
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日経記事2024.06.12より引用