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ウクライナ鉄道、国際線を侵攻前の8倍に 旅客機禁止で

2024-02-25 23:08:54 | NATO・ウクライナ・ロシア・中国・中東情勢


    ウクライナ鉄道で旅行に出かける学生ら(22日、キーウ中央駅構内)

 

【キーウ=林英樹】

ウクライナ鉄道は3月中にチェコ・プラハなど3都市とつなぐ新路線を設け、国際線を侵攻前比8倍の25本に増やす。戦争の長期化を踏まえ安全性を強化しながら輸送力を拡大する。

ウクライナ鉄道のヤブヘン・ラシチェンコ最高経営責任者(CEO)が日本経済新聞の取材で明らかにした。

 

新路線はウクライナ西部チョープとプラハ、オーストリアのウィーンをそれぞれ結ぶルートと、南部ドニプロとポーランド・ヘウムをつなぐ計3本だ。

ウクライナ国内は旅客機の飛行が禁じられ、鉄道が主要な渡航手段となっている。

 

 

ラシチェンコ氏は「国際線の乗客需要は侵攻前の年4万人から200万人に増えており、キャパシティーの拡大が私たちの使命だ」と語り、3月以降も国際線を含めた新路線の策定と運行本数の増加を進める考えを示した。

 


ウクライナ鉄道のラシチェンコCEOは改革の必要性を訴える(キーウの同社本社)

 

ウクライナ鉄道の2023年の乗客数は延べ2490万人で、戦前の21年(2500万人)と同水準にまで回復した。23年3月に岸田文雄首相がキーウ(キエフ)訪問時に利用するなど、侵攻後に600回以上、各国首脳や外交官を乗せて運行した。

ロシア軍は鉄道インフラへの攻撃を繰り返しているが、ウクライナ鉄道は乗客の被害事例が一度もない。

 

ラシチェンコ氏は「区間ごとに修復・保守と運行管理のチームを置き、強固なインフラに造り替えている」と述べた。

防御壁などで線路や変電所、橋梁の強度を高めて、ロシア軍の攻撃に対抗する。ウクライナ軍との情報共有も安全対策に活用する。

 

鉄道への信頼は厚い。キーウ中央駅の入り口にはセキュリティーゲートが設けられ、テロ対策で厳重な荷物チェックが行われる。

電光掲示板には22日だけで160本以上の運行情報が流れ、多くの市民が談笑しながら発車を待っていた。

 


   破壊されたインフラを復旧するウクライナ鉄道の職員=同社提供

 

ウクライナ西部に3日間の旅行に出かける学生のタチャーナさん(21)は「バスよりも安全で移動が楽。年に数回は長距離電車を利用している」。

3カ月間の従軍生活をへて、休暇で一時帰宅するという志願兵のサーシャさん(22)は「鉄道のおかげで武器や弾薬を前線部隊に供給できている。ありがたい」と語った。

 

 

課題もある。鉄道のゲージ(軌間)幅の規格が欧州連合(EU)とウクライナで異なるのがその一つだ。

EU域内は1435ミリメートルだが、ウクライナは85ミリメートル広い旧ソ連圏の規格を採用している。このため国際線では毎回、国境付近で2時間以上かけて台車を交換する必要がある。

 

物流における鉄道利用の割合はEU平均の20%に対し、ウクライナは62%と高い。24年1月の鉄道貨物量は前年同月比25%増の1410万トンと回復傾向にある。

ラシチェンコ氏は「安全保障上の理由に加え、時間ロスを解消できるという経済的な効果が大きい」として、EU規格ゲージへの統一の必要性を訴える。

 

ただ総延長距離1万9700キロメートルの全線路を変更するには膨大な予算と時間がかかり「現実的ではない」。

そこでEUとの国境に近い3000キロメートル分を優先的に改修する計画を検討する。「日本企業の鉄道技術を活用したい」として国際協力機構(JICA)とも交渉を始めた。

 

 


        キーウ駅を発車する列車情報が記された電光掲示板(22日)

 

 

別の課題が、兵役や避難などによる人員不足だ。

侵攻前から国策としてソフトウエア産業の振興に注力していた影響に加え、戦闘の前線でのニーズが高いことから、特に電気技師や溶接工など技術職が足りていない。

 

侵攻後の22年4月からスマートフォンアプリでの乗車券購入サービスを始めるなど、デジタル化を進める狙いの一つに余剰人員の技術職への配置転換がある。

ラシチェンコ氏は「ウクライナには非効率や不透明、汚職といった負の面がある。インフラから国を変えていく強いチームをつくりたい」と人事を含めた組織改革を進める考えを示した。

 

 

 

日経記事 2024.02.25より引用

 

 


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