トランプ氏が中国への追加関税を宣言し、米中の分断は深まるとみられる=ロイター
自称「タリフマン(関税男)」の本領発揮である。米国のトランプ次期大統領が中国からの輸入品に追加で10%、メキシコとカナダからの輸入品には新たに25%の高関税を課すと宣言した。
頭の痛い号砲だ。中国にはより厳しい罰を下し、日本や欧州にも牙をむきかねない。そして不法移民の排斥が控える。米国の政策転換は、ヒト・モノ・カネの活発な移動に水を差すだろう。
さりとて長い歴史を誇る世界のグローバル化に、終止符が打たれるわけではあるまい。
トランプ氏がもたらす環境の変化に適応し、グローバル化の主役交代や重心移動が鮮明になるのではないか。
ドイツの物流大手DHLと米ニューヨーク大学は貿易、資本、情報、人流の膨大なデータをもとに、世界のグローバル化の進捗度を示す総合指数(0〜100)を算出してきた。
2001年以降の推移をみると、22年に最高の25強を記録し、24年(予測)にかけてわずかに低下しながらも、25弱の高水準を維持する見通しだ。
米国と中国の貿易戦争、新型コロナウイルス禍、ウクライナ戦争、中東の緊迫――。
世界を大きく揺さぶった複合的な危機を経て、いま眼前に広がるのがグローバル化の後退とは言い難い。
「グローバルサウス」が分断に歯止め
民主主義国と権威主義国の対立は確かに深刻だ。
DHLなどのデータによると、米中間のモノの貿易額が世界全体に占める割合は、01年以降の最高を記録した15年の3.6%から、24年(1〜7月)には2.6%に低下した。
親密な同盟・友好国を加えた米国陣営と中国陣営の貿易割合も、16%強から13%強に落ちている。
一方、両陣営に必ずしも色分けできない国絡みの貿易割合は、43%強から47%弱に上昇した。
インド、ベトナム、ブラジル、アラブ首長国連邦(UAE)などが関わる貿易が活発化し、世界経済の分断に歯止めをかける構図だ。
第一生命経済研究所の星野卓也主席エコノミストは「米欧日の供給網の再編は、自由主義国同士の関係を深めながら、非自由主義国との関係も保つ『多角化』に近い」とみる。
そのなかでグローバルサウス(南半球を中心とする新興・途上国)が輸出入国としての存在感を増し、米中対立の打撃を和らげていると話していた。
激しい覇権争いを演じる米中も、デカップリング(切り離し)にはほど遠い。
国士舘大学の助川成也教授が米アップルのサプライヤーリストをつぶさに調べたところ、調達部品の製造拠点は17年の382カ所から23年には470カ所に拡大していた。
最大の中国は同じ157カ所のままである。「中国の拠点はなお不可欠で、東南アジアなどの拠点を増やす形で供給網を多様化した」という。
トランプ氏返り咲きに備えてきた企業
トランプ氏の排外主義が今の均衡を破り、世界経済をより深刻な分断に追いやる危険は残る。
中国に60%、その他の国々には10〜20%の高関税を課すという公約を実行に移せば、憂慮すべき事態に発展するのは避けられない。
しかし誰もが手をこまぬいていたわけではなかろう。
関税のコストを製品の価格に転嫁しても、米国の市場で勝負できるか。利益を減らしても米国への輸出を続けるべきか、別の販売先を探すべきか。
どの国で生産・出荷すれば、最も傷が浅くてすむのか――。
トランプ氏の返り咲きを念頭に置き、日本の主要企業も様々なオプションを検討してきたと聞く。
「関税率の高い中国から、ほかの国に製造拠点を移す動きは強まるだろう。米国への移転を促す方向にも働く。
だが何より重要なのは、将来の巨大市場であるグローバルサウスに供給網を広げる努力だ。
技術の獲得や情報の蓄積なども含めた波及効果の大きい直接投資を期待したい」。
早稲田大学の戸堂康之教授は、トランプ時代の先も見据えたグローバル戦略が欠かせないと訴えていた。
日本も腹をくくった対応を
世界全体でみると、モノとサービスの輸出額は総生産の20%、海外直接投資は総投資の5%、移民は総人口の4%に過ぎない。
我々が抱く印象とは裏腹に、グローバル化の余地はなお大きい。
そこに成長の源泉を見いだすのは、やはりグローバルサウスの面々だ。
国際調査会社イプソスが50カ国・地域の成人に対し、グローバル化は自分の国・地域に良いかどうかを尋ねたところ、肯定的な回答が平均で64%にのぼった。アフリカ、アジア、中南米の多くが米国の49%を大幅に上回る。
米調査会社ユーラシア・グループが主催し、10月に東京で開いた国際会議。イアン・ブレマー社長は「ワシントンと北京の多くの人々が相互依存を恐れても、世界の大半はそれを求めている」と語った。
二大国と一定の距離を保ちつつ、国益を極大化したいグローバルサウスは、米国の人工知能(AI)にも、中国の再生可能エネルギーにも秋波を送るという。
あまりに過激な政策の修正をトランプ氏に迫る努力は怠れないが、それで自説を曲げるとは思えない。
ならば日本も腹をくくって事に当たるほかはない。高関税を回避する交渉を続けながら、できるだけ強靱(きょうじん)で効率的な供給網づくりを急ぐ時だ。
同時に環太平洋経済連携協定(TPP)、東アジアの地域的な包括的経済連携(RCEP)の拡大・深化にも手を尽くしたい。
グローバル化の現実を直視できぬトランプ氏とは一線を画し、欧州やグローバルサウスと自由貿易圏の恩恵を存分に分かち合えばいい。
経済部次長、ワシントン支局長、上級論説委員兼編集委員などを経て現職。
日米での取材経験を生かし、マクロ経済や国際情勢について幅広く論評する。単著に「迷走する超大国アメリカ」、共著に「技術覇権 米中激突の深層」「米中分断の虚実」。
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日経記事2024.12.02より引用
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アホボン・トランプのデマに騙される阿呆たち
・【事実】2016年、トランプ・ブームはマケドニアの小さな町ヴェレスの若者たちのデマから始まった。https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/02dc2fa491e85b3d17884ebf16907127
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https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/85afd93eb06d841885c1f1784205b4d6
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アホネ!
(おまけ)
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