20年の大統領選で郵便投票の開票を進めるボランティア(20年11月、東部ペンシルベニア州)=ロイター
11月5日投開票の米大統領選は接戦になると結果判明まで時間がかかる可能性がある。票差がわずかなら再び数え直す制度が州ごとにあるためだ。
東部ペンシルベニア州と西部アリゾナ州は得票率の差が0.5ポイント以内だった場合、当局が再集計する決まりがある。中西部ミシガン州は2000票差以内なら実施する。
ほかの州は自動的ではなく、候補者が数え直してほしいと申し立てた場合に再集計するルールがある。南部ノースカロライナ州は1万票差以内もしくは0.5ポイント以内なら候補者は再集計を求められる。
再集計で結果が変わることはめったにないが、可能性がある限り米メディアは勝敗を判断しにくい。
前回2020年はペンシルベニアで得票率差が「0.5ポイント以内になる可能性がない」と確認できて初めて米メディアはバイデン大統領の同州勝利、当選確実と伝えた。投票日から4日後だった。
20年はバイデン氏の当選が確実になった後も、南部ジョージア州の結果は確定しなかった。再集計を2回実施し、投票日から2週間以上たってバイデン氏が0.23ポイント差で同州を制したことが分かった。
大統領選は選挙人538人のうち過半数の270人を獲得すれば当選確実となる。激戦7州の選挙人は93人で、このうちおよそ半分の州の結果が見えないと勝者がはっきりしない見通しだ。
郵便投票の増加も開票が遅れる一因になる。新型コロナウイルスが流行した前回20年は投票所に足を運ばずに済む郵便投票の普及が進んだ。
郵便投票は当日の投票に比べて開票に手間がかかる。担当者が封筒から投票用紙を取り出し、署名と有権者の登録名簿を見比べる。機械に正しく読み取らせるため投票用紙の折り目を消す。すべて手作業だ。
アリゾナは選挙管理員会が郵便票を受け取ったらすぐに開票できるが、ペンシルベニアやジョージアなどは投票日当日の朝まで封を開けられない。ノースカロライナは投票日の夜まで待つ必要がある。
20年は開票が始まるとトランプ氏がリードし、時間がたつとバイデン氏優勢に変わっていった。民主党支持者の利用が多い郵便投票を後から数えたためだ。共和党のシンボルカラーにちなんで「赤い蜃気楼(しんきろう)」と呼ばれた。
トランプ氏は開票直後に早々と「勝利」を宣言したが、結果的にバイデン氏に敗れた。郵便投票を含めて不正があったと主張し、相次いで訴訟を起こした。
今回もトランプ氏は支持者に自身に郵便投票するよう求めているが、懐疑的な姿勢は変えていない。「(票差が)大きすぎて不正ができない」をスローガンに大差で勝とうと支持者に呼びかけている。僅差で負ければ不正と訴える公算が大きい。
(ワシントン=赤木俊介)
2024年に実施されるアメリカ大統領選挙に向け、ハリス副大統領やトランプ氏などの候補者、各政党がどのような動きをしているかについてのニュースを一覧できます。データや分析に基づいて米国の政治、経済、社会などに走る分断の実相に迫りつつ、大統領選の行方を追いかけます。
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