日本製鉄は24日、保有する韓国鉄鋼大手ポスコホールディングス(HD)の全株式を売却すると発表した。
23日終値で計算すると約1兆1千億ウォン(約1188億円)に相当する。技術交流などは今後も継続する。日鉄は米国やインド市場を海外戦略の柱に据え、経営資源を集中していく。
日鉄はポスコHDの発行済み株式を3.42%(289万4712株)保有している。売却時期は市場の動向を見て判断する。2025年3月期の業績への影響はないとしている。資産を圧縮し資本効率を向上する狙いだ。
日鉄とポスコは8月に戦略的提携契約を3年間延長したばかり。設備改修時の中間製品の融通や生産性向上などに向けた協力は続ける。
日鉄広報は「株式を保有しなくても、提携関係は構築できると判断した」としている。
日鉄とポスコの縁は50年以上前に遡る。ポスコ発足の経緯となる韓国南東部の浦項(ポハン)市で韓国初の一貫製鉄所の建設に協力したのが日鉄前身の八幡製鉄などの日本企業だった。
ポスコは「漢江の奇跡」と呼ばれた韓国の高度成長を先導した日韓産業協力の象徴でもあった。
98年にポスコが民営化すると、新日本製鉄(現日鉄)と相互出資関係になった。06年には相次ぐ買収で世界首位に上り詰めた欧州アルセロール・ミタルに対する危機感から持ち合いを強化した。
16年には同社の買収懸念が薄れたとして新日鉄住金(現日鉄)はポスコへの出資比率を引き下げた。今回のポスコ株売却の決定は16年以来となる。
ポスコ側は日鉄の株式を1.65%保有している。日鉄株の売却などについて「決まっていることは何もない」とコメントした。
日鉄は7月、中国宝武鋼鉄集団傘下の宝山鋼鉄との合弁会社の株式売却を決めたばかりだ。宝鋼との合弁事業もポスコ同様に半世紀前の技術協力をベースとした事業だった。
背景には日鉄の海外戦略の転換がある。中韓で進めてきた資本参加や事業運営はあくまで日本市場が中心にあった。技術協力や日本からの輸出先確保という側面が強かった。
ただ、日本市場の縮小に直面する現在は海外で自ら製鉄業に乗り出す方針を打ち出している。人口が増加する米国やインドに経営資源を投下し、日鉄自らが高炉を含めた一貫製鉄所の運営に携わる「地産地消」にシフトする。
米国では鉄鋼大手USスチールを141億㌦(約2兆円)で買収する計画を進めている。インドではアルセロール・ミタルとの合弁会社が1兆円規模を投じて高炉建設を計画している。
一方、国内では生産能力の余剰を解消するため、高炉を削減するなどの構造改革を進めてきた。
日鉄はUSスチール買収に向けて、2兆円の買収金額とは別に計27億ドル超の追加投資も表明している。
海外を中心とした攻めの成長投資に向けて資本効率の改善を進めており、ポスコ株の売却もその一環となる。
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日経記事2024.09.24より引用