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ヒロセ電機の生産子会社「郡山ヒロセ電機」(福島県郡山市)
電子部品各社で、自動車向けのコネクターへの投資が活発だ。
自動車向けに搭載が進む先進運転支援システム(ADAS)やカーナビゲーションシステムなどのディスプレー向けのコネクターなどがけん引する。
カメラやセンサーの搭載が増えることで、1台当たりに搭載される部品数も増える。コネクターメーカー各社は車載向け製品の開発を進める。
ヒロセ電機は24年7月、車載向けのコネクターを中心に生産する新工場「郡山ヒロセ電機」(福島県郡山市)を稼働した。
土地と建物を合わせ、総工費には約100億円を投じた。19年10月の台風19号による阿武隈川の氾濫で浸水した旧工場と比較して、敷地面積は1.7倍にあたる約4万8000平方メートル、生産スペースは従来の2.7倍となった。
24年5月に発表した中期経営計画の一環として、1月には自社の韓国拠点である「ヒロセコリア」で民生機器向けマイクロコネクターの新棟が稼働した。
数年内に同拠点でさらに数十億円の追加投資をし、車載向けコネクターの新棟の建設も検討する。
高精細かつ高精度
電気自動車(EV)を中心に完成車の需要は今期に入って、不透明感が漂っている。
EV最大手の米テスラが発表した24年の販売台数は178万台と、前の年と比べて1%減少した。米国や欧州向けでEVの需要が伸び悩んでいることが影響したとみられる。
ヒロセ電機の鎌形伸専務は車載向けコネクターの投資背景について、「自動車市場は軟調に推移しているが、ADAS向けの部品はカメラなどの数が増えた分搭載点数も数割増える。
車のライフサイクルは6〜8年であることも考えて、長期的に自動車向けで生産能力を増強することは不可欠だ」とした。
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自動運転の推進で必要なカメラやセンサーは、安全に運転をするためにより高精細かつ高精度になることが求められる。
車内で映画を鑑賞したりカラオケを楽しんだりといった娯楽も充実することで、ディスプレーの性能向上も必須だ。
カメラやディスプレーが処理する情報量が増えることで、機器の内部に搭載するコネクターには「小型化」と「高速化」が求められる。
内部の配線の数が増えると、部品を設置できるスペースが小さくなる。部品が小型化することで内部設計の自由度を高めることができる。
ヒロセ電機は1月に自社の新たなコネクターシリーズとして、「AU1」シリーズをリリースした。電子制御ユニット(ECU)とディスプレーなどのユーザーが触れる機器をつなぐ。
北米や日本の自動車メーカーを中心に引き合いが強いという。
イリソ電子工業も24年10月、約50億円を投じて秋田県横手市に車載コネクターを中心に生産する新工場を竣工した。
4月からの稼働を予定し、国内でコネクターを生産する拠点は茨城工場に次いで2つ目となる。茨城工場での生産キャパシティーが上限を迎えたことに対応する。
イリソ電子は、売上高の約8割を車載向けが占めているという。24年には車載や産業機器向けに新たなコネクターシリーズである「10143」シリーズをリリースした。
ADAS機器や車のECU内の基板と基板をつなぐコネクターだ。自動運転が進展する上で不可欠な高速伝送に対応できるという。
下期に復調傾向
日本航空電子工業は25年3月期の売上高について、前期比2%増の2300億円と予想する。
そのうち自動車向けの通期での売上高の見通しは、前期比8%増の1150億円としている。期初の計画よりも引き下げているものの、ADAS向けで日系メーカーを中心に堅調な需要があるとした。
日系自動車メーカーの一部では、認証不正による生産調整が見られたが、下期にかけて復調傾向にあるのを取り込む。
同社の村木正行社長は、「来期にかけて自動車のADAS向けのハーネス(組み電線)で新製品を出す。インド市場では二輪車で携帯電話を充電するための端子『USBタイプC』にも取り組んでいる」と語る。
日本航空電子は1月、インドに化学商社の長瀬産業との共同出資会社「JAE India Private Limited」を設立すると発表した。
3月に設立し、出資比率は日本航空電子が74%を占める。インドで自動車や二輪車向けのコネクター販売を進める。人口の増加や経済の発展に伴い、自動車販売が増加していることに対応する。
「中長期的にはEVも増えていくと見ている」と村木社長は強調し、25年度以降にEV向けの充電コネクターなどの本格的な販売に乗り出す意向を示した。
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「高速化」対応カギに
ソフトウエア・デファインド・ビークル(SDV、ソフトが機能や特徴を決める車)の進展も各社にとって追い風となる。
今後は、ハンドル操作やブレーキなどの動きや車内の娯楽などをソフトウエアが制御する動きが一層強まるとみられる。
ソフトウエアの進化に伴って電子部品の高性能化も求められる上、搭載点数の増加による生産能力の増強も必要だ。
電子情報技術産業協会(JEITA)が24年12月に発表した「SDV化による半導体・電子部品の市場動向」によると、35年までにSDV向け電子部品の需要金額は足元の約33倍の117億ドル(約1兆8000億円)にまで伸びる。
そのうちコネクターの需要金額は22億ドル(約3380億円)と、約2割を占める。コンデンサーや抵抗器に比べると割合は小さい。それでもSDV向けでコネクターの需要は足元の25倍にまで膨らむ見通しだ。
JEITAによると、35年のSDVの電装機器アプリケーション別の需要額のうち「ADAS」と自動車内のエンターテインメントを管理する「インフォテインメント・アンド・テレマティクス」の2つが、約6割を占めているという。
処理する情報量が特に増える2つの分野を中心に、高速化に対応できるコネクターの需要は高まる。
電子部品業界において、自動車向けは大きい市場だ。今後も機能が広がるのに対応すべく、コネクターメーカーの技術開発と生産能力の増強が急がれる。
(郭秀嘉)
[日経ヴェリタス2025年2月23日号]
日経記事2025.2.26より引用
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