「都市鉱山」には銅などの貴重な金属が含まれている
政府は、使われなくなった家電など電子ごみの国内でのリサイクル体制を整備する。
3年で300億円を投じ、三菱マテリアルなどと組んで再利用拠点を10カ所程度つくる。脱炭素やデジタル関連で金属需要は増える見込み。銅やレアメタル(希少金属)が海外に流出するのを防ぎ、経済安全保障を強化する。
政府の循環基本計画に明記し、6月にも閣議決定する新しい資本主義の実行計画に盛り込む方向で調整する。
政府はこれを機に電子ごみの国内でのリサイクル量を2030年までに50万トンにする新目標を定める。20年より5割多い。資源循環を促進するため、閣僚会議の設置を検討する。
一部の金属は経済安全保障上重要な物資だ。銅は太陽光パネルの電極や洋上風力発電所の導電ケーブル、電気自動車(EV)に使われる。レアメタルも電気自動車の電池に利用される。
一方、財務省の貿易統計によると21年の銅スクラップの輸出量は40万2887トンだった。前年比10%増で07年以来14年ぶりに40万トンを超えた。23年は37万5000トンほどで高水準が続く。
国の競争力を左右する貴重な資源の流出を防ぐため、政府は廃家電やパソコンの廃基板などの「都市鉱山」から金属を国内で取り出して再利用する体制を整える。
官民で再利用拠点を10カ所程度設ける。効率よい輸送のために資源を保管できる港湾での拠点整備も検討する。
政府はGX(グリーントランスフォーメーション)経済移行債を呼び水に民間投資を促す。
24年度からの3年間で300億円を投じ、金属の再利用を含む民間企業の設備投資を支援する。三菱マテやJX金属、阪和興業などが候補にあがる。さらなる予算措置も今後検討する。
都市鉱山は1980年代に提唱され、金属資源の再利用の機運が高まる中で浸透した。近年は脱炭素に欠かせない資源の重要性が高まり、政府が関与して取り組みを一段と強める。
電子ごみを高効率で再利用できる国は限られる。日本は高い技術で経済協力開発機構(OECD)内でのリサイクル量はトップで、20年時点でおよそ35万トンにのぼる。これは国内だけでなく、その4割は電子ごみを輸入している。
もっとも25年からは廃棄物の取引を規制するバーゼル条約が改正され、電子ごみの輸出手続きが厳格になる。日本への輸入減が見込まれるため、国内で資源を確保する重要性が増す。
国際エネルギー機関(IEA)によると、世界が50年に温暖化ガスの排出を実質ゼロにするには、30年の世界の銅需要は3000万トン以上になる見通し。このうち4割強はクリーンエネルギーに使われるという。
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日経記事2024.06.01より引用