EUの非公式首脳会議に出席したフランスのマクロン大統領㊧(3日、ブリュッセル)=AP
【ブリュッセル=辻隆史】
欧州連合(EU)は3日、非公式の首脳会議を開いた。集まった各国首脳はトランプ米大統領が意欲を示すEUへの追加関税に強い警戒感を示した。フランスのマクロン大統領は報復措置をとるべきだとの考えを示した。
ブリュッセルで開いた会議では加盟国の首脳のほか、英国のスターマー首相、北大西洋条約機構(NATO)のルッテ事務総長が一部の議論に加わった。
欧州の安全保障協力が主な議題だったが、首脳からはトランプ氏に対する懸念表明が相次いだ。
トランプ氏はかねてEU向けに関税を導入する意向を示している。トランプ氏は3日、米国が様々な分野で貿易赤字になっているとして「筋が通っていない」などと非難。改めて関税を課す方針を強調した。
会議では今後の欧米関係についても話し合った。EU首脳は米国との関係は重要であり、問題が生じたとしても解決策を見いだすべく努める方針で一致した。
マクロン氏は会議に先立ち、記者団に「もし通商問題で攻撃されたなら、連帯する大国として行動しなければならない」と明言した。
EUを主導する大国のトップが報復措置を示唆する意味合いは大きい。
フォンデアライエン欧州委員長も会議後の記者会見で、「不公平または恣意的に標的にされた場合には断固たる対応をとる」と表明した。
EUの外相にあたるカラス外交安全保障上級代表は記者団に、必要なら「こちらでも対応する準備をしている」と発言した。「関税への回答は、同じ行動で返すことだ」ルクセンブルクのフリーデン首相はより強い表現を用いて主張した。
デンマークのフレデリクセン首相は「もし米国が欧州に厳しい関税を課すのであれば、私たちは団結して強固な対応をとる必要がある」と記者団に言明した。
トランプ氏はデンマークが領有するグリーンランドの購入をめざす方針も掲げる。デンマークは「売り物ではない」と反発し、米国との緊張が高まっている。会議では各国首脳からデンマークの立場を支持するとの意見が多く出た。
米国との対立の激化を避けようと、慎重な発言をする首脳もいた。
ドイツのショルツ首相は「(関税は)欧米双方に悪い」と語り、貿易問題を解決するための協力を進めるべきだと記者団に説いた。
フィンランドのオルポ首相は「トランプ氏と交渉しなければならない。私は戦争を始めるつもりはない」と述べた。
2025年上半期のEU理事会議長国を務めるポーランドのトゥスク首相は、関税を巡るあつれきが欧米の安保協力を阻みかねないと危機感を持つ。
トゥスク氏は記者団に、EUは「まったく不必要で愚かな関税戦争」を回避するために全力を尽くすべきだと提起した。「ロシアや中国の脅威に直面するなか、同盟国間で争わないようにするためにあらゆることをすべきだ」と訴えた。
NATOのルッテ氏は3日、スターマー氏との共同記者会見で「米国抜きのNATOは機能しない」と指摘した。
NATO加盟国では欧州だけでなくカナダも米国と関税を巡り争う。ルッテ氏は「加盟国は貿易問題に対処できると絶対的に確信している」と述べ、話し合いによる解決に期待を示した。
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メキシコ、カナダ、中国の次はEU。
早ければ2月17日あたりに関税を課すと伝えられている。
アメリカとEUの関税問題は、日本からすると特に重視すべき問題となっている。
EUが連携して報復関税をかければ世界経済に重大な影響を与える事は言うまでもない。
アメリカの輸入額で言えば、メキシコ、中国、カナダ、ドイツ、日本の順となっており、EU の次に日本がターゲットにされる可能性は非常に高い。
こうした意味でEUがアメリカとの交渉でアメリカの成功体験神話を崩せるかどうかにかかっており、貿易戦争の大きな分かれ目となり得る。
また石破首相の訪米を通じて貿易問題で成果を残せるかも注目される。
カナダと欧州という米国にとって最重要な同盟国に対して、関税を脅しに揺さぶりをかけるトランプ大統領に対して、ロシアや中国は拍手喝さいでしょう。
おそらく、同盟国の存在が、いかにこれまでの世界における米国の優越的な地位を支えてきたかを理解できない米国のトランプ支持者も、同様に拍手喝さいを送っていることでしょう。
プーチン大統領は、すかさず欧州において「すぐにトランプ氏が秩序をもたらし、彼ら(欧州諸国)は主人の足元に立って尻尾を振るだろう」という応援メッセージをトランプ氏に送っています。
我々、米国の同盟国は、これまで依存してきた世界の在り方が、大きく崩れつつある現実を見せられているのかもしれません。