スーパーに並ぶメキシコ産ビール。関税導入なら値上げは必至だ(1月、米首都ワシントン)
【ワシントン=高見浩輔】
米労働省が12日公表した1月の消費者物価指数(CPI)は、前年同月比の上昇率が3.0%となった。市場予想の2.9%を上回り、4カ月連続で加速した。水準はなお高く、米連邦準備理事会(FRB)は時間をかけて物価動向を見極める。
伸びは2.4%だった昨年9月から同12月に2.9%まで加速し、今回もその流れを引き継いだ。瞬間風速を示す前月比では0.5%上昇した。伸びの予想は0.3%だった。
振れ幅の大きなエネルギーと食品を除くコア指数は前年同月比で3.3%上昇した。予想は3.1〜3.2%だった。前月比でも0.4%上昇し、予想の0.3%を上回った。
直後の金融市場ではFRBの利下げが難しくなるとの見方から長期金利の指標となる米10年物国債利回りは上昇(債券価格は下落)し、一時4.6%台半ばと3週間ぶりの高水準を付けた。
金融政策の見通しを反映しやすい2年債は一時4.3%台後半とおよそ1カ月ぶり高水準となった。
ドルは幅広い通貨に対して買われた。12日のニューヨーク外国為替市場で円が対ドルで大幅に下落し、一時1ドル=154円台半ばと1週間ぶりの円安・ドル高水準を付けた。日本時間12日午前には152円台後半で推移しており、半日で2円ほども円安・ドル高が進んだ。
トランプ米政権は2月4日から中国製品への関税を10%引き上げた。カナダやメキシコからの輸入品にかける25%の関税は3月4日から、鉄鋼・アルミ製品への25%関税は3月12日から発動する予定だ。
輸入品への関税は米国内に転嫁される公算が大きい。米ミシガン大の消費者調査で短期的な物価見通しを示す1年先の予想インフレ率が1〜2月で計1.5ポイント上昇するなどすでに影響が出ている。
政権の高官らは第1次政権で導入した関税は物価全体に大きな影響を与えなかったと楽観視する。サマーズ元財務長官は11日のX(旧ツイッター)への投稿で、物価の悪化リスクは「21年以降でもっとも微妙な局面」と指摘。
FRBの次の動きは利下げではなく利上げになる可能性が高いと予想した。
第1次政権との違いは、米経済が22年に40年ぶりの水準に達した高インフレを沈静化できていない点にある。
物価全体のなかで遅れて動く家賃や自動車保険などのサービス価格はまだ高い伸びを続けている。
FRBのパウエル議長は11日、米連邦議会上院での議会証言で、インフレ率は鈍化傾向にあるものの「依然としてやや高止まりしている」と警戒した。
FRBは24年9月から12月まで計1%の利下げを実施したが、金融引き締めをさらに緩めるかどうかの判断には十分に時間をかける考えだ。
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