オープンAIのアルトマン氏は「AIはコンピューターとの接し方を根本から変えるため新しい端末が必要だ」と話す
【シリコンバレー=山田遼太郎】
米オープンAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)は日本経済新聞の取材でスマートフォンに代わる生成AI(人工知能)専用端末の開発に乗り出すと表明した。
独自半導体の開発にも意欲を示した。AIの普及はIT(情報技術)産業を一新する機会とみて、2007年のiPhone登場から約20年ぶりのデジタル機器の革新を狙う。
アルトマン氏は3日に石破茂首相と首相官邸で面会を予定する。訪日に先駆けて1月27日に単独取材に応じた。
オープンAIは22年に公開した対話型AI「Chat(チャット)GPT」で空前のAIブームに火を付け、利用者は世界で3億人超に達した。チャットGPTに最適な端末の投入により、ソフトとハードの両面でAI市場を押さえる。
これまでオープンAIが公表していないAI端末について、アルトマン氏が「提携を通じて取り組む」とインタビューで明言した。米アップルでスマホ「iPhone」などのデザイン責任者だったジョニー・アイブ氏が設立した米企業と組む。試作品の公開までに数年かかるとの見方を示した。
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AI端末、「音声がカギ」
米グーグルがソフトとハードの両輪戦略でインターネット時代に覇権を握ったように、オープンAIはAI時代の覇者を狙う。
アルトマン氏は「AIはコンピューターとの接し方を根本から変えるため新しい端末が必要だ。音声(操作)がカギになるだろう」と話した。
アップルはスマホを指でなぞる操作方法でコンピューターのユーザーインターフェース(UI)を刷新したが、音声操作でAI時代に最適なUIの創出を目指す。
アルトマン氏は生成AIの開発や利用に欠かせない半導体の開発についても「自社で取り組んでいる」と述べた。詳細への言及を避けたが、データセンターに自社設計品を使うとみられる。
AIの処理を高速化し、消費電力を小さくするため、アップルや米メタなど巨大テクノロジー企業も独自半導体の開発に参入している。
スターゲート、日本企業の参画に期待
オープンAIは1月21日にソフトバンクグループ(SBG)や米オラクルと、総額5000億ドルを投じて米国にAIインフラを整備する計画「スターゲート」を発表した。オープンAIが新会社の運営責任を負い、データセンターの建設や稼働を自社で手がける。
アルトマン氏は「スターゲートはAIインフラを上流から下流まで広く手がける巨大事業になる。半導体を含め、あらゆるレベルで協業できる」と話し、日本企業による出資や技術協力による参画に期待を示した。
日本勢に参画を呼びかけるのは中国への対抗が狙いだ。オープンAIはトランプ政権の発足に合わせ、日本や中東からのAI投資を米国が引きつけなければ、中国との競争で後手に回りかねないと政策提言している。
中国のAI開発の実力、「米国にかなり追いついている」
直近では中国の新興DeepSeek(ディープシーク)がオープンAIに匹敵する性能のAIを安価に開発したと主張した。
アルトマン氏はディープシークについて「明らかに良い(AI)モデルだ。推論への関心の高さを思い知らされる。真剣勝負になるだろう」と述べつつも、「この性能は新しいものではない。当社には以前からこのレベルのモデルはあったし、今後もより良いモデルを作り続ける」とした。オープンAIはディープシークによる技術の不正利用の有無を調べている。
中国のAI開発の実力は「米国にかなり追いついている」と評価した。中国などがAI開発で先行すれば、軍事利用を含め「権威主義国が体制強化のためにAIを悪用しかねない」とも述べた。
スターゲートはトランプ米大統領が就任直後に公表した目玉事業となる。トランプ氏はAI開発に規制をかけたバイデン前政権の路線を転換した。
規制緩和を通じてAI企業に投資を促し、米国のAIにおける世界的なリーダーの地位を固める戦略を描く。
スターゲート計画を披露するトランプ米大統領とサム・アルトマンCEO㊨ら(1月21日)=AP
AIの安全性、国際機関で監視
アルトマン氏はトランプ氏のAI政策を支持する理由について「米国によるAI開発の主導が世界全体の利益になるからだ。トランプ氏はインフラ建設の重要性を理解している」と説明した。
トランプ政権の規制緩和政策により、AIの安全性の確保が懸念されている。アルトマン氏はAIの開発競争が人類の脅威となる事態を防ぐ手立てとして、開発手順の安全性などを監視する国際機関を設ける案に言及した。
原子力分野の国際原子力機関(IAEA)などを念頭に「重要技術では従来も国際枠組みがあり、AIも同じだ。今後は議論が活発になる」と語った。
「DeepSeekと真剣な競争」 OpenAIアルトマン氏に聞く
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。
これは既に昨年来報じられてる件で、OpenAIではなくジョニーアイブ氏のLoveFromという会社が中心となりサムアルトマンと共同で進められている事業です。
同社にはアイブ氏の他にも長年Appleに勤めたデザイナー陣も所属しています。
ChatGPTは音声機能を使うユーザーも増えていますがiPhone登場来スマートフォンの出入力がタイピングであるそのインターフェースを革新する事が狙いと考えられるでしょう。
アルトマン氏は他にも核融合やクリプトによる個人認証など多数のプロジェクトを別々に行なっています。
イーロンマスク氏もそうですがそのように多数の別々の事業を同時に進行させる異能タイプと言えるでしょう。
WSJは、DeepSeekがオープンソースのAIモデルで成功したことを受け、アルトマン氏が自社のAIモデルをオープンソースに変更することを検討していると報じた。
アルトマン氏はRedditのAsk Me Anythingセッションで、OpenAIの開発手法が誤っていた可能性を認め、オープンソース戦略への検討が必要だと述べた。
この方針転換は、OpenAIの競争力維持には不可欠な一方、現在進行中の400億ドルの資金調達に影響を及ぼす可能性があるとしている。
同社ではまずは中核事業での戦略再構築が求められている。
米国の主要メディアでは、OpenAIへの懸念を表明する記事が相次いでいる状況下での来日だ。https://www.wsj.com/tech/ai/sam-altmans-answer-to-deepseek-is-giving-away-openais-tech-d1a5a9ec
先端の巨大言語モデルは推論1回当たりのコストも巨大で、有料での提供が一般的です。
OpenAIも最先端モデルを月3万円で提供しています。
DeepSeekショックを機に開発の比重が「AGIの実現」から「省電力化・低コスト化」に移れば、いずれWeb検索並みに運用コストが下がり、先端モデルを無料(広告ベース)で使える事業モデルに移行するでしょう。
生成AIを誰でも使える環境で、どのような手段で競合と差異化し、プラットフォーマーとしての影響力を維持するか。
Web検索を軸に自社データセンターの構築・スマホOS開発・独自半導体開発とGoogleが辿った軌跡を、OpenAIもまた辿ろうとしています。
![生成AI](https://article-image-ix.nikkei.com/https%3A%2F%2Farticle-image-ix.nikkei.com%2Fhttps%253A%252F%252Fimgix-proxy.n8s.jp%252Ftopic%252Fog%252F23053001-1.png%3Fixlib%3Djs-2.3.2%26auto%3Dformat%252Ccompress%26fit%3Dmax%26ch%3DWidth%252CDPR%26s%3D91cbffb704a7f56c4916df0614454548?ixlib=js-3.8.0&w=380&h=237&auto=format%2Ccompress&fit=crop&bg=FFFFFF&crop=faces%252Cedges&s=0d6427c77de9b9d4c5d09f83ac54e1de)
文章や画像を自動作成する生成AIに注目が高まっています。ChatGPTなど対話型AIやMidjourneyなど画像生成AIがあります。急速な拡大を背景に、国際的な規制や著作権に関わるルールなどの策定が急がれています。
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日経記事2025.2.3より引用