中国企業「ディープシーク」のAIモデルが米市場を揺らしている=ロイター
【ニューヨーク=竹内弘文、三島大地】
中国の人工知能(AI)企業であるDeepSeek(ディープシーク)が低コスト生成AIモデルを開発したことを受け、米金融市場が揺れている。
AI半導体大手エヌビディアの株価は27日午前(日本時間28日未明)に一時前週末比17%下落した。
エヌビディア以外にも巨大テック各社はほぼ全面安の展開だ。マイクロソフトは一時5%安、アルファベットも同4%安となった。半導体大手のブロードコムも1割以上下げて始まった。
ハイテク株の比率が高いナスダック総合株価指数は一時3.6%下落し約半年ぶりの下げとなり、S&P500種株価指数も2%以上下げる場面があった。
ディープシークのアプリは米国のアプリストアで首位を獲得した。
モデル開発にかかった費用は約560万ドル(約8億6000万円)と主張している。事実なら、AI開発に米テック大手が投じてきた巨額投資の根拠が揺らぐ。
「ディープシークのR1(生成AIモデル)はAI版の『スプートニク・モーメント』だ」。
米有力ベンチャーキャピタル(VC)アンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)のパートナー、マーク・アンドリーセン氏は26日、X(旧ツイッター)に投稿。初の人工衛星打ち上げでソ連に先行された米国が味わったショックに例えた。
トランプ米大統領が就任翌日21日にソフトバンクグループ(SBG)やオープンAIなどと共同で発表した大型AI開発計画「スターゲート」に対する期待感から、エヌビディアなどAI関連銘柄は前週に大幅上昇していた。27日の急落は前週の大幅高を打ち消した。
22年にオープンAIが対話型AI「Chat(チャット)GPT」を公開して以来、米企業が先行してきたAI関連の技術優位性は、他を圧倒する米国株のパフォーマンスや米国経済の底堅さにつながっていた。
低コストかつ高性能な生成AIモデルが中国などから容易に生まれるようなら、米市場にマネーを注いできた投資家の評価も修正を迫られる。
投資家心理の軟化に伴い、米債券市場では金利が大幅に低下(債券価格は上昇)した。
リスク資産の株式から安全資産の米国債に資金を移す動きが広がり、長期金利の指標となる10年物国債利回りは一時、約1カ月ぶりに4.5%を割り込んだ。
日米金利差が縮小したことで、円も買われた。ニューヨーク為替市場で円は対ドルで一時、1ドル=153円71銭と、2024年12月中旬以来の円高ドル安水準をつけた。
文章や画像を自動作成する生成AIに注目が高まっています。ChatGPTなど対話型AIやMidjourneyなど画像生成AIがあります。急速な拡大を背景に、国際的な規制や著作権に関わるルールなどの策定が急がれています。
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日経記事2025.1.28より引用