メタは投稿管理の方針を大きく転換する(マーク・ザッカーバーグCEO、24年9月)=ロイター
【ラスベガス=渡辺直樹】
SNSのフェイスブックやインスタグラムを運営する米メタは7日、投稿の信頼性を第三者が評価するファクトチェック機能を米国で終了すると発表した。
戦略の急転換の裏にはトランプ次期大統領との関係改善を進める狙いがある。SNS空間は今後投稿の自由度が高まるが、過激な言論や偽情報が増加する可能性もはらむ。
マスク氏のXに追随
「フェイスブックとインスタグラムにおける表現の自由という原点に立ち返る時が来た」。メタのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)が動画を投稿し、明らかにした。
代替手法としてX(旧ツイッター)が先行導入し、誤っているとみられる投稿に他の利用者がコメントを付けられる「コミュニティーノート」の類似機能を搭載する見通しだ。自動的に投稿内容を削除するコンテンツの量も減らす予定だという。
メタにとっては2016年に導入した仕組みを見直すことになり、より自由な発信を許容する方向に投稿管理の戦略を大きく転換する。
SNSではトランプ次期政権に深く関与する米起業家のイーロン・マスク氏も自由なネット空間を重視し、行き過ぎた投稿管理を激しく批判する。Xを買収後に投稿管理を大幅に縮小しており、メタはXの動きに追随することになる。
ザッカーバーグCEOは「私たちは真実かどうかを判断する権威になることがないよう対処してきたが、ファクトチェックは政治的に偏りすぎていた」と述べた。特に政治的な投稿について、企業が是非を判断する難しい選択を避ける路線を取った。
トランプ氏は「投獄する」と脅し
背景にあるのが、20日に就任するトランプ次期大統領の存在だ。
ザッカーバーグCEOは21年1月の議会襲撃をあおったとして、トランプ氏のフェイスブックのアカウントを停止し、23年に制限を解除した経緯がある。
トランプ氏は、陰謀を企てたとしてザッカーバーグCEOを投獄すると警告したこともある。
SNSの運営会社は独自のポリシーに基づき投稿内容を削除したり、アカウントを凍結したりといった判断をしてきた。個別の企業がこうした判断をすることをトランプ氏は「検閲だ」として反発してきた。
こうしたことを受け、メタは24年11月の米大統領選挙前後から急速にトランプ氏との関係改善を進めてきた。
ザッカーバーグCEOがトランプ氏の元を訪れ、大統領就任式に100万ドル(約1億6000万円)を寄付した。
6日にはトランプ氏支持者の総合格闘技団体UFCのダナ・ホワイトCEOを取締役に指名すると発表し、政策渉外トップには共和党系幹部をあてた。
メタの取締役に指名されたトランプ氏支持者のダナ・ホワイト氏=AP
米西部カリフォルニア州シリコンバレーを中心とする米巨大テクノロジー企業は伝統的に民主党支持のリベラル色が強く、第1次トランプ政権の時代には反発する動きもあった。
直近では巨大企業への規制が強まっていることもあり、融和路線を強調する。トランプ氏就任に際して寄付も相次いだ。メタの戦略転換も象徴的な動きといえそうだ。
トランプ氏は7日の会見でメタの動きについて、過去の自身による脅しへの対応か問われ「そうかもしれない」と述べた。メタの方針転換を評価した。
陰謀論や偽情報の増加も
メタの運営するフェイスブックは世界の月間利用者が約30億人、インスタグラムが約10億人とみられ、戦略転換はSNSの利用者にとっても影響が大きい。
マスク氏が買収したXは投稿管理を弱めた結果、過激な陰謀論や偽情報が増え、広告離れが起きたこともあった。メタは代替手法により投稿の管理を一部続けるとしているが、コンテンツの質が悪化する懸念は拭えない。
米バトラー大のスティーブン・バーナード准教授は「メタは第1次トランプ政権からの圧力に屈してコンテンツ対応を行ってきた歴史がある。
偽情報が今後プラットフォームに自由に流れることになり、メタのグローバルな影響を考えると、米国のみならず世界の他の地域にも影響をもたらす可能性がある」と話した。
メタのファクトチェック機能はまず米国で終了するが、他の地域への展開できるかは不透明だ。日本では24年9月に同機能を始めたばかりだった。
特に欧州連合(EU)ではSNSなどのコンテンツ運営企業に管理を義務付けるデジタルサービス法(DSA)が施行しており、米国と同様の手法を取ることは難しいとの指摘がある。
分析・考察
これは明確にトランプ次期米大統領が通信業界を監督するFCCの委員長にブレンダン・カー氏を起用する事、そして氏はメタ筆頭に「ビッグテック各社が米国民を検閲している、
FCCは米国民のため言論の自由の権利を回復しなければならない」と述べている論者である事が理由でしょう。
次期政権の政策骨子であるプロジェクト2025うちFCC管轄のそれに関してはカー氏が担ったものだがとりわけSNSにおけるコンテンツモデレーションについて厳しい対策を主張している。
具体的には日本におけるプロバイダー責任法に近いセクション230というプラットフォーマー企業の免責条項について大幅に免責範囲を削減する事を提言している。
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福井健策骨董通り法律事務所 代表パートナー/弁護士
分析・考察
実際、どこまで廃止し代替措置がどの程度、機能するかですね。
Xの場合はマスク買収以後、虚偽ばかりか違法情報の対応担当者が一時日本からいなくなる、という事態さえ生じました。
いずれにしても今後、トランプをおだててビッグテックという米国の基幹産業の守護神を演じさせたいプラットフォーム側と、DSA・DMA・AI法などを駆使してこれら「超国家」を抑え込みたいEU、そもそも自由なSNSは嫌な専制国家の3つどもえが続くのでしょう。
そこで右往左往するだけではもう無理なので、日本政府や各企業・個人が、どういう自分のSNS戦略を持つかが問われますね。個人的には1日平均15分以下と、かなり脱SNS寄りの昨今です。
(更新)
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日経記事2025.1.8より引用