米マクドナルドの多様性目標の廃止の背景には保守活動家の圧力があった可能性がある=ロイター
【ニューヨーク=朝田賢治】
米マクドナルドは6日、多様性確保の目標を廃止すると発表した。米国内の保守系活動家からの圧力を受けた方針転換で、世界各国15万人の社員の働き方に影響が出る可能性がある。
米国では小売最大手ウォルマートなども相次ぎDEI(多様性、公平性、包摂性)の取り組みを縮小しており、同国発のグローバル企業の代表格であるマクドナルドも変更を迫られたかたちだ。
マクドナルドはクリス・ケンプチンスキー最高経営責任者(CEO)ら幹部13人の声明を発表した。
今後修正する点として、①企業としての目標の廃止②外部調査への参加を停止③取引先に要請していたDEI推進の誓約の取りやめ④「多様性チーム」を「グローバル包摂性チーム」に名称変更――の4つを挙げた。
これまで本社スタッフや直営店従業員を対象に、管理職に占める女性比率を45%、人種的・性的少数者などの比率を30%に高めることや、賃金格差の撤廃などの目標を明記。
対象となる社員は世界各国15万人いる。今回の方針変更により、昇進や採用、給与の面などで少数者に不利な影響が出る恐れがある。
6日の声明では「管理職の30%を少数者から採用し、男女間の賃金の格差解消も実現した」と述べ、多様性確保をある程度達成したことを理由に挙げた。
ただし、保守活動家ロビー・スターバック氏が同日、自身のX(旧ツイッター)で数日前にマクドナルドにDEI施策の変更を求めたと明かしおり、圧力を受けての対応だったとみられる。
マクドナルドは背景として「法的環境の変化」にも言及した。米最高裁が2023年に、大学入試などで人種的少数派を優遇する「アファーマティブアクション」を違憲とする判断を下したことを受けて、DEI施策が現在の米国の法律に則しているかも再検討したという。
活動家のスターバック氏は小売り最大手のウォルマートにも同様の手法で迫り、DEI行動基準を縮小させた。
自動車大手の米フォード・モーターや二輪車の米ハーレーダビッドソン、ホームセンターの米ロウズなどがDEI施策の取りやめ、多様性を巡って巻き戻しの動きが強まっている。
今回のマクドナルドの施策変更の対象には、グローバル社員のほか食材などの納入業者、フランチャイズ店のオーナーなども含まれるとみられる。傘下の日本マクドナルドホールディングスを通じ運営する日本事業の従業員にも影響が及ぶ可能性がある。
マクドナルドのようなグローバル企業で多様性施策の後退が続けば、米国内に限られていた影響が世界にも及んでいくことになりそうだ。
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日経記事2025.1.8より引用