ウォーレン・バフェット氏の発言にはバークシャー株主だけでなく
多くの市場参加者が注目(2019年5月、オマハ)=ロイター
【オマハ(ネブラスカ州)=竹内弘文】
著名投資家ウォーレン・バフェット氏率いる米投資会社バークシャー・ハザウェイが4日、米中西部ネブラスカ州オマハで年次株主総会を開く。
驚異的な投資収益をあげ「オマハの賢人」とも呼ばれるバフェット氏は何を語るのか。バークシャー株主だけでなく多くの市場参加者の関心事だ。総会に先立ち、注目テーマを整理する。
米株市場をどう評価するか
一つ目は、バークシャーの上場株投資の大半を占める米国株市場に対する評価だ。
毎年恒例の「株主への手紙」の最新版で「私が若い頃とは比べものにならないほど市場はカジノ的な振る舞いを見せる。
カジノは多くの家庭に浸透し、人々を日々誘惑している」と記した。
急ピッチな株高や近視眼的な投資家行動に警鐘を鳴らした。昨年後半から続いた米株式相場の上昇は、手紙を公表した2月下旬時点でますます勢いづき、ダウ工業株30種平均は3月末に4万ドルに迫る場面があった。
当時は人工知能(AI)関連の銘柄にマネーが殺到し、米連邦準備理事会(FRB)の早期利下げ期待も相場を支えていた。
優れた事業モデルや参入障壁を持ちながら、外部要因によって株価が割安に放置されている企業を探しだし、長期保有するのがバフェット流投資の柱だ。
相場の底上げは手放しで歓迎しにくい。
「有意な変化をもたらしうる投資先企業は米国にごくわずかしか残っていない」、「バークシャーが目を見張るような投資収益をあげられる可能性はない」ともバフェット氏は手紙につづった。
投資機会の乏しさを物語るのが待機資金の積み上がりだ。現預金と米短期債の保有額合計は23年末時点で1676億4100万ドル(約25兆6500億円)。同年9月末時点に比べて7%増えて過去最高を更新し、総資産の16%を占める規模に膨れ上がった。
米株を取り巻く情勢は微妙に変わりつつある。ダウ平均は4月月間で1991ドル下落し、月間下げ幅としては1年7カ月ぶりの大きさを記録した。
利下げ先送り観測が浮上し、AI関連銘柄も行きすぎた期待の揺り戻しが起きている。バフェット氏の市場評価に微妙な変化があるかもしれない。
円建て債を発行、日本株に追加投資の期待
次なる注目テーマは日本株投資だ。株主への手紙では投資先である大手商社5社(三菱商事、伊藤忠商事、三井物産、住友商事、丸紅)に言及した。
「各社は高度に分散された方法で事業を展開しており、バークシャー自身の経営手法とやや似ている」と説明した。
配当性向を低めに抑えながら事業が生み出す資金は新規の事業投資や自社株買いに投入し、新株発行に慎重な点もバークシャーに通じる点があると指摘する。
共同投資など事業上の提携に至る可能性も示唆した。「商社経営陣の報酬は米国の水準よりはるかに控えめだ」とも評した。
バークシャーは各社の株式を約9%ずつ保有しているといい、各社に確約している保有上限の9.9%は近づいている。
今後の買い増しに向けては「魅力的な株価が長期間持続する必要がある」とバフェット氏は記した。
バークシャーは4月に円建て社債2633億円発行したばかり。商社株の買い増しや他の日本企業への投資について、バフェット氏はどう語るか。
説明次第では大型連休明けの日本市場に影響しうる。
バフェット氏、自身の引き際示すか
バークシャーやバフェット氏の今後についてもトピックになる可能性が高い。
バフェット氏の盟友で副会長だったチャーリー・マンガー氏は23年11月に99歳で死去した。例年の総会ではバフェット氏とマンガー氏が並んでジョークの掛け合いをしながら株主からの質問に答えるのが名物だった。今回の総会ではもう見ることはできない。
バフェット氏自身も93歳と高齢だ。グレッグ・アベル副会長を事実上の後継者として指名しており、投資業務についてもトッド・コームズ氏とテッド・ウェシュラー氏がすでに一部のポートフォリオ管理を担っている。
経営体制が変わってもバークシャーの運営方針は変わらないとみられる。それでも、もしバフェット氏から投資判断や経営からの関与を減らすといった、事実上の「引退宣言」のような発言があれば市場関係者には大きな衝撃となるのは間違いない。
ウォーレン・バフェット氏(Warren Buffett) 1930年、米中西部ネブラスカ州のオマハに生まれる。6歳からガムを売り歩き、11歳で株式投資を始めた。
「割安株投資の父」ベンジャミン・グレアム氏に感化されて投資家の道を志す。
1965年に繊維会社だったバークシャー・ハザウェイの経営権を握り、同社を母体に投資や事業投資を展開して財を築いた。
優良銘柄を本質的価値より低い価格で買う投資スタイルで知られ、「オマハの賢人」との異名を持つ。大富豪ながら質素な生活で知られ、コーラとハンバーガーを好む。
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