フランスの国民議会(下院)選挙の決選投票で票を投じる有権者(7日午後、パリ)
【パリ=北松円香】
フランスで7日、投開票された国民議会(下院、定数577)選挙の決選投票で、野党で左派連合の新人民戦線(NFP)が最大勢力となった。
マクロン大統領が率いる中道の与党連合と選挙協力し、極右政党を第3勢力に抑え込んだ形だ。
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仏紙ルモンドによるとNFPの獲得議席数は182と、過半数には届かないものの解散前の149から大きく議席を伸ばし最大勢力となった。
中道の与党連合は168と、解散前の250より議席を大幅に減らした。
一方、当初は第1党になると見られていた極右の国民連合(RN)も143議席と事前の予想ほどには伸びず、第3党にとどまった。解散前の議席数は88だった。
NFPはマクロン氏が実施した年金改革の廃止など福祉の充実を訴え、支持を広げた。
極右のRN台頭に危機感を抱いた有権者による支持も追い風となった。
NFPに参加する急進左派の「不服従のフランス(LFI)」を率いるメランション氏はパリで支持者を前に「国民は最悪のシナリオを回避した」と述べた。
同氏は「大統領はNFPに統治を求める義務がある」とも述べ、左派から首相を指名するよう主張した。
アタル首相は選挙結果を受け、「明日大統領に辞表を提出する」と明らかにした。
6月30日の1回目の投票後、一部でRNが過半数を確保するとの予測もあった。その後、与党連合と左派連合が候補者を一本化する選挙協力に踏み切り、決選投票では「反極右」票が固まりやすくなった。
RNのバルデラ党首はパリで開いた同党の集会で「フランスは極左のメランション氏の手に落ちた」と述べた。与党と左派の選挙協力については「国民から復興の政策を奪った」と非難した。
どの陣営も単独過半数に届かない「ハングパーラメント(宙づり議会)」となり、法案審議が迷走する恐れが強まった。与党と激しく対立してきたLFIのメランション氏は7日、改めて与党との連立を否定した。過半数に達する大連立は実現できない可能性が大きい。
フランスでは下院は上院に優越し、大統領は下院の多数派の意向を踏まえて首相を指名する。首相は内政を担当するため、下院選は国の政策の方向性を決める重要選挙だ。
事前予想では、優勢だったRNのバルデラ党首が首相に就任する可能性もあるとみられていた。第2次世界大戦中のビシー政権以降で初めて極右が権力を握ることになるため、仏下院選の動向が国内外から注目された。
マクロン氏は6月実施の欧州議会選で極右が伸長したことを受け、民意を改めて問うとして6月9日に下院を解散した。下院選挙は2回投票制で、初回投票は30日だった。初回に当選者が確定しなかった501区で、7月7日に決選投票が実施された。
日経記事2024.07.08より引用