風に吹かれて旅ごころ

はんなり旅を楽しむはずが、気づけばいつも珍道中。

ぶどうの郷の秘仏に逢いに-2

2013-10-07 | 中部(甲信越)
◯ 朝食
◯ 大善寺(ぶどう寺)秘仏拝観
◯ 諏訪神社(初鹿野)
◯ 町のコンビニ
◯ 甲斐大和駅の先の吊り橋
◯ 大日影トンネル
◯ ランチ難民(定休日に予約満席)
◯ グレイスワイン
◯ 山梨学院大学
◯ 玉緒神社
◯ まるごとやまなし館
◯ フランス人じゃなくてノルウェー人
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1日目からの続きです。

◯ 朝食

朝起きたら、ピチュピチュとさわやかな小鳥のさえずりが聞こえてきました。
(メールの着信音かな?アラームかな?)と思ったら、本物の小鳥の鳴き声でした(ああ悲しい現代人)。

朝食にもまた、ぶどうが出ました。
ここの秘仏様は行基の夢に出てきて「葡萄は百薬に値する」と伝えたんだそう。
宿でも、その教えを守っているのでしょう。
そもそも、甲州葡萄の始まりは、夢のお告げによって行基が葡萄の栽培法を村の人に教えたことがきっかけだともいわれているそうです。
昔のお坊さんって、堤防を作ったり、ブドウを栽培したりと、なんでもできちゃうオールマイティガイですね。

◯ 大善寺(ぶどう寺)秘仏拝観

古めかしい長い石段を上がって、大善寺(ぶどう寺)を参拝しました。
目下、5年ぶりの秘仏拝観期間。たった1週間しか公開しない、なかなか貴重な体験です。



本殿に上がって参拝しました。最古の木造建築物と呼ばれる国宝の薬師堂です。
ここは古い仏像が多く、見がいがあります。
日光菩薩・月光菩薩が両脇に立つ、真ん中の厨子の扉が開かれ、その中に秘仏の葡萄薬師像がおいでになりました。国指定重要文化財の三尊です。



薬師如来像といったら、片手に薬壺を載せているのがお決まりスタイルですが、この如来様は、葡萄を持っていました。
ブドウ=薬、ということですね。
リンゴも医者要らず、と言われるので、長野か青森あたりにリンゴ寺があってもよさそう。

十二神将像がずらりと並ぶ、一番右端には、優美で優しげな文殊菩薩像がたたずんでいました。
これは、最後の武田甲斐家当主、勝頼が、死ぬ時まで手放さずに持っていたという像。
戦国大名武田氏の終焉を見守った菩薩様です。(画像は大善寺のHPから)



とりわけこの像に心惹かれて、ずっと目が離せませんでした。
次第に悲しさが胸にこみ上げて、涙が出てきました。
アッコさんと純が、願いを書いた護摩木を奉納している間も、私はウルウルと感傷にひたっています。
「なんか悲しくて、涙が出てきちゃった」と言ったら、アッコさんは「変な霊に取り憑かれないように」と、きびきびと背後でなにかを祓う動作をし、かすかに芳香を撒いてくれました。
なすがままの私。アッコさんかっこいい!
なんと、友人がエクソシストだったとは!驚いて涙も引っ込みました。
「家族に憑かれやすい人がいるからね」・・・おおぉ、本物でした!

この時は(単にセンチメンタルになっただけじゃないかな)と思っていましたが、あとになって、天正10年(1582年)に織田・徳川連合軍に攻め込まれた武田勝頼が大善寺に戦勝祈願したものの、仲間の離反にあい、天目山で自決したことを知りました。
勝頼が最後に祈りを捧げたお寺だったとは。
さらにその一部始終を目撃した尼の記した武田滅亡記がこのお寺に保管されているそうです。

武田家最期の念が強い場所なんでしょう。
私は霊とかはさっぱりわかりませんが、仏像やご神体など、人が祈りを捧げるものには、なにか力が宿るような気がしています。
だからこそ、秘仏や日光月光菩薩よりも、勝頼の文殊菩薩が気になったのかもしれません。

じっくりと本堂で秘仏を拝観している間、団体さんが何組もやってきました。
観光バスツアーのようです。この一週間は、お寺は目の回る忙しさでしょうね。
堪能して、ぶどう寺を後にしました。
 
◯ 諏訪神社(初鹿野)

今日のドライバーはアッコさん。国道から甲斐大和駅へ向かう途中で、諏訪神社に立ち寄りました。
無人のお社で狛犬はいません。



鳥居が立派ながらも小さめで、もう少しで手が届きそうだと背伸びをしてプルプル手を伸ばしていたら、背が高い純がさらっとタッチしました。
(むむ)と思いながらも、願い石を鳥居の上に載せてもらいました。



拝殿で参拝してから、後ろ側に回って純の好きな本殿チェック。
木製の本殿は鉄骨柵の中にあって、見づらかったのですが、遠くからでも彫刻の素晴らしさが見て取れました。県指定の文化財だそうです。



本殿の裏にはしめ縄で飾られたご神木が、横には「初鹿野の大杉」として巨大な杉の木の切り株がありました。
樹幹の根の周囲は11.5m。樹高31.8mで樹齢371年だったそうですが、すぐ裏を通る蒸気機関車の煤煙と振動で枯れてしまったんだとか。
切り株の上で子どもがおままごとを出来そうなほどの大きさです。
こんなに育った木が枯れて根株だけになってしまったなんて、残念。
ご神木に不敬をはたらくと、祟りがあると言われていると、案内板に書かれていました。
さっき勝頼の文殊像でプチ不思議体験をしたばかりなので、木の神様の怒りに触れぬよう、どちらの木にも近寄らずに見るだけにしておきました。

◯ 町のコンビニ

ドリンクを買おうと近くのコンビニに入ろうとして、入口の表示に思わず足を止めました。
[ 営業時間 AM 7:30~PM 7:00 定休日 日曜日 ]



えー!これコンビニ?(失礼な)
セブンイレブンが日本に上陸した時、すでに開店時間は7~23時だったのに!
いえ、自分のルールで社会を見てはいけませんね。
従業員には働きやすい職場でいいですね!
中のドリンクコーナーよりも外の自販機のほうが品揃えが充実していました・・・

◯ 甲斐大和駅の先の吊り橋

甲斐大和駅を超えて少し行った辺りに、私リクエストの吊り橋があります。
ところが、なかなか見つからず、地図を見て山に向かう細道を通ってたどり着いた場所は、全く違う場所。
地図にチェックしていたマークが、なにかの拍子でずれてしまっていたようでした。

一気に下って、川沿いに出ます。
車を降りると、そこには昨日の祇園滝のような滝がありました。
この辺り、多いんですね。



(吊り橋はたしか、車道のトラス橋と、水道トラス橋が並ぶ、その横にあったはず)と思い返します。
まさに、赤と白のトラス橋が2つ並ぶ場所が見えたため、(きっと吊り橋もあるだろう)と検討をつけて行ってみたら、はたしてありました!
よかったー。
少し遠い駐車場に車を停めて、歩いていきます。

私が来たがった場所なんですが、探すのに時間がかかってしまった上に、女子旅には合わないワイルドな場所。
2人に悪いな~と思いながらも、辿りつけた嬉しさに、大喜びで渡りました。



だって聞いて下さい!橋が3つ、平行に並んでいるんですよ。
それぞれ、車用・水道用・歩行者用と、用途別になっているんです。
なかなかないパターンで、おもしろーい!



頑丈なワイヤーに支えられているものの、歩行部分は木。
隙間から、下の川が見えます。
いいですね~!!
川の水量はそう多くありませんでしたが、橋からは、遠くにさっき傍まで行った滝が見えました。

◯ 大日影トンネル

それから、大日影(おおひかげ)トンネルへと行きました。
JR中央本線のトンネルを再利用した遊歩道で、今は甲州市が管理しているそうです。







近代化産業遺産に指定されたレンガ積みのトンネルは、雰囲気があってすてき。
長いトンネルの中は、どこまでも続く道になっていて、スタンド・バイ・ミーごっこを存分に楽しめます。
全長1.367.8mで、端まで歩くと片道30分かかるとのこと。長いー!
「誰が最初に"もう戻ろう"って言い出すのかな」と言いながらどんどん歩いていき、結局純が真っ先にくるっとUターンしました。



ここを歩いてみたかったので、嬉しいわ。
反対側のトンネルは非公開。こちらはワインカーヴとして使われ、トンネル内にはたくさんのワインが眠っているそうです。

◯ ランチ難民(定休日に予約満席)

そろそろお昼の時間に差し掛かってきたので、チェックしていたお店に向かいます。
この辺りでは一番人気が高いというレストラン。
「勝沼マダムたちで混んでいないといいけど」と言いながら着いた「原茂ワイン」は、駐車場も空いていたし、思ったより静かでした。
あれ、と思って、ワインショップの人に聞くと「今日はレストランは定休日です」と言われました。
まさかの事態が!





ショックを受けながらも、別のお店を探します。
「ここよさそうだね」と、選んでいったのは、勝沼醸造直営レストラン「風」。
自動車が列をなして駐車場に入っていくので、(人気があるのね)と期待を高まらせて車を降りると、入り口には「本日は予約のお客様で満席です」という看板がかかっていました。
うそ~っ!

この日は月曜日。おもいっきり平日だから、レストランはどこも空いていると安心していたのにー。
めげそうになりますが、さらに探して、勝沼ワイナリーのレストランを探しだしました。
今度は事前に電話をかけて、開いていることを確認してから向かいます。

勝沼ワイナリーは広大な敷地で、駐車場に入ると、アッコさんと純がめいめいに「ここ来たことある・・・」とつぶやきました。
私も・・・イエありません!



ここでようやく、三度目の正直のランチができ、ワイン煮込みビーフカレーをいただきました。
窓からは甲府盆地が一望でき、すばらしい景色が広がっていました。



◯ グレイスワイン

食事の後は、アッコさんお勧めのワインセラー、グレイスワインに行きました。
南欧風に土壁を塗った建物がいい感じ。
ワイン好きの二人は念入りにボトルを選び、私はぼんやり窓の外に広がるブドウ畑を眺めていました。





夏のように日差しの強い日。
夏に訪れたことのある、フランスのぶどう畑のことを思い出します。
ボルドーやシャンパーニュ地方を走る電車に乗って、どこまでも果てなく広がる緑のブドウ畑を眺めていましたが、秋のブドウ収穫期に訪れたことはありません。
ボルドーのワイナリーで、日本にはまだ上陸していないヴィノテラピーを申し込んだこともありました。
今度、秋に訪れることがあったら、ブドウがなっている様子を見てみたいなあ。

明るい日差しの中で、ゆっくりフランスに思いを馳せている間に、二人はボトルをチョイスし、試飲を楽しんでいました。

◯ 山梨学院大学

二人がアルコールに手を染めたので(笑)、いよいよ最終兵器、私が最後のドライバーになりました。
明らかに二人よりも運転が下手ですが、なんとかかんとか走れます。

甲府に戻る途中、山梨学院のキャンパスの前を通りました。
駅伝ですっかり名の知れた大学です。
キャンパスの敷地は巨大で、運動施設の充実さを見るに、この大学はスポーツが有名なんだなとわかりました。
ホッケー場まであるなんて、すごいわ~。

と、キャンパス前の通り向かいに、神社の表示がありました。
「甲斐三ノ宮」と書いてあったので、Uターンして行ってみることにしました。



素敵な橋(城東橋)を超えて、ニコニコ。きれいだわ。

◯ 玉緒神社

甲斐三ノ宮は、玉緒神社といいました。
一の宮は、国ごとに設置されている大きな神社ですが、二の宮となると知名度はぐんと落ち、さらに三ノ宮となると、なかなか行く機会もなく、銘打っていない所も多いため、見過ごしてしまうことがしょっちゅうです。



ここは、三ノ宮としてきちんと管理されているようでした。
ここも両部鳥居です。この地域では、かなりこの形が主流のようです。
狛犬がいないため、つい鳥居の方をチェックしてしまう私。鳥居はアッコさん担当だったはずなのにー(笑)
この鳥居ワールドも面白そう・・・いえいえ、趣味は広げないようにしないとね。



無人の神社でしたが、明るく風通しのいい場所でした。
一の宮から三の宮まで巡ることができたのは、ここ甲斐の国が初めて。
貴重な体験です。

◯ まるごとやまなし館

甲府に着き、レンタカーを返す前に「少し時間があるので、お茶しよう」ということになりました。
「駅のそばにすてきな感じのカフェがあるよ」「じゃあそこに行ってみよう」と、向かいます。
建物の2階にあるカフェ。営業中と書かれ、一階の階段のところには、メニューの看板もでているんですが、どうも下から見上げると、2階に人けがありません。
「うそっ」「もしや、まさか・・・?」とあやしみながら二階に行ってみたら、ドアに郵便物が挟まっており、やっぱり開いていませんでした。
えー、営業中って書いてるのにー!



今回の旅は、見事なほどに食にツイていませんでした!
ここまで予定違いなのも、めずらしいほどです。
まあ、後で思えば笑い話ですが、その時は「なぜなの?どうして今回はついてないの・・・っ!」と、3人で途方に暮れてしまいました。



ほかにカフェが見当たらなさそうな駅前でしたが、山梨県産の名産を出すカフェテリアを運良く見つけ、二人はコーヒー、私は貴陽というスモモのジェラートを食べました。
私は普段、旅先でそれほど食にこだわりません。
乗り物に弱いため、電車や車での移動中は、食べられなくてもあまり気にならないし、夜と朝の宿の食事がおいしかったら満足です。
ただ今回は、それほど激しく移動しない、のんびりしたプランだったので、食のプライオリティは普段より高くなっていました。
まあ、こんな時もあるってことですね!笑い飛ばそう、ハハハ!

◯ フランス人じゃなくてノルウェー人

車を返して、早めに駅に着きました。
ちらっと富士山の頂上が見えました。



かいじ120号に乗ったら、途中の大月駅から外国人がワイワイ乗り込んできました。
そのうちの一人が、純の隣の窓際の席に座ります。
私達の前の列に3人が座り、交わす言葉でフランス人だとわかりました。
日本でネイティブのフランス語を聞くなんて、珍しいわ。

フランス語圏に行って言葉を使わないと、知っているかすかなフランス語はどんどん忘れていく一方。
ちょうど、ぶどう畑を見て、フランスの懐かしさを感じていたところです。
純の隣の人は、3人から一人だけ離れてしまっているし、彼とならちょっとおしゃべりできるかも。
寝不足なので言葉が出てくるか不安でしたが、純と席を変わってもらって、男性に話しかけてみました。

すると「???」と怪訝な顔をされます。
どうしよう、私のフランス語、壊滅的?完全に伝わらない?
オーモンデュー!(Oh mon Dieu!)と絶望しかけたら、「アイムノルウェージャン」。
まさかのノルウェー人でしたー!
ええっ、どういうこと?フランス人ではないの?
「あの彼らとは同じグループじゃないヨ」と言われました。
一緒に乗り込んできたから、てっきり仲間かと・・・とほほ。

フランス語会話のブラッシュアップをするつもりで、頭の中をフラ語モードにしていたので、「面舵いっぱーい!」と急いで英語モードに変えます。
ああ~出てこない~
通路向こうでは、二人が「ナンパしてるー」とずっとクスクス笑いながら、私を見ています。
ちーがーうー!
でも、二人に絡んでいたら、ノルウェー人を置き去りにしてしまうので、彼と英語でやりとりをはじめました。

オスロ在住のコンピュータ会社勤務で、2週間のバカンスで初来日した彼はヨハンといいました。
この日は、河口湖まで富士山を見に行ったけれど、「曇りで何も見えなかったー」と残念そうでした。
「でも、行ったことに意味があるからね!」
一人旅をしているだけあって、前向きです。

今度の週末に行われる鈴鹿GPを観戦しに来たとのこと。
わざわざノルウェーから!
すごいですね~。

突然GPの話題になり、あたふたします。
「これもGPの雑誌なんだ」と見せてもらいました。
ええと、私が知っているF1ドライバーは・・・
「セナしか出てこないわ・・・」とがっくりしながら言ったら、「OK! ほら彼だよ」と、雑誌に載っている写真を見せてくれました。

二人に助け舟を求めても「えーわかんないー」・・・女子旅ですからね(笑)!
でも「ハミルトン」という名前がでたので、(助かったわ)と話をつなげました。
「あ、ヴィルヌーヴも知ってる!」と、思い出します。
ほっとしたのもつかの間、「ジャック?ジル?どっち?」と聞かれて、あせりました。
だって私、ヴィルヌーヴは名前がいいなと、響きで覚えていただけなので、選手の顔さえ知らないのです。
(ヴィルヌーヴってフランス語で新町さんっていう意味なんですよ!)

ためらっていたら、「ジャックが父で、ジルが息子の方だよ」と教えてくれました。
「うーん、ジャックの方!(←適当)」「オーケー!」
すみません、二人いるってことをその時知ったの・・・

彼が持っていた外国人用のJapan Rail Passを見せてもらいました。
2週間で4万5千円くらいの、とってもお得なパス。これでひかりとのぞみ以外の新幹線にも乗れます。私もほし~い。
「日本はとてもファニーな国で、言葉がぜんぜん違うね」とヨハン。
「このPassには英語が書かれているけれど、ほかのチケットには書かれていないから、数字を見て自分の座席を推理するしかないんだ」
たしかに、かいじの特急券には、一切英語表記はなく、彼の切符は「大月→新宿」という日本語のみ。
これじゃあ不親切ですね。
JR、国際化めざして頑張ってー!

「レストランに入っても、お店の人は英語が話せなくて、質問しても答えてくれずにメニューを置いてすぐいなくなるし、そのメニューも日本語だけで、さっぱりわからないんだよね、ハハハ」
困難を楽しむタイプの人なので、そんな日本旅行をそれなりにエンジョイしているようですが、首都東京でさえ、まだまだ外国人には住みづらい場所なんだなあと、話を聞いて強く思いました。
タフな外国人しか受け入れられない、日本はまだまだミステリアスな国のようです。
オリンピックの頃までには、改善されればいいんですが。

話し込んでいるうちに電車は終点新宿に到着し、彼の旅の無事を祈ってお別れしました。
そして私達も、ホームで解散。
このくらいの一泊旅行も、気軽に行けて楽しいものですね。
ぶどうの収穫の恵みを受けた今回の旅。なかなかの珍道中で、おもしろかったです。

後日、レーシングカー関係に詳しい友人に鈴鹿GPでのポイントを聞いて、ヨハンに伝えておきました。
GPについていろいろ教えてもらい、自分も気になりだしたので、TV観戦しようっと!


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