http://www.nikkei.com/article/DGXNZO43472470X00C12A7TJ2000/
交流サイト(SNS)フェイスブックで「迷惑メール」が広がっている。友人からのメッセージに答えると、自分の意思とは無関係に複数の友人に同じメッセージを送ったり、個人の登録情報を抜き取られたりする。利用者の善意に任せるというフェイスブックの運営方針を悪用したアプリが原因で、開発者団体などが注意を呼びかけている。
「このアプリで画面の色を変更しませんか」。6月初旬に流行したあるアプリの場合、まずアプリを利用した知人からこんなメッセージが届く。薦めに応じてアプリを使うと、今度は自分が知らないうちに複数の知人に同じメッセージを送ってしまう。それを受け取った人も「あの人の言うことなら」と同様にアプリを利用。被害はねずみ算式に広がった。
フェイスブックでやり取りされるメッセージは実名で、ほとんどが顔見知りからのもの。これがインターネットや携帯電話のメールアドレスに届く身元不明の迷惑メールとの違いだ。さらにメールだけなら「迷惑」で済むが、アプリ経由で個人情報が抜き取られ第三者に渡る恐れがある。
【利用する前】 |
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【利用してしまったら】 |
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フェイスブックのアプリは使い始める時に利用者の登録情報のいくつかを渡すよう要求する。「名前の由来を教えます」という迷惑メールアプリの場合、生年月日や性別、メールアドレスのほか、位置情報や写真、友人の位置情報まで求めていた。情報がどう使われているのか利用者にはまったく分からない。
運営会社の米フェイスブックは利用者から迷惑メールアプリの通報を受け付ける窓口を設け、ある程度集まると削除するといった手立てを講じている。「最大限の努力をする」(同社)というが、情報技術コンサルタントの森雅秀氏によると「削除されたとしてもすぐに亜種が登場し、いたちごっこになっている」。
フェイスブックは利用者の善意を尊重し、運営側ができるだけ管理しない環境づくりを重視する。アプリの開発も電話番号かクレジットカード番号を登録すれば誰でもできる。アプリを公開するための事前審査もない。この哲学が危険なアプリ横行の背景にある。
まっとうなアプリまで危険とみなされる恐れがあるため、開発者団体も抑止に動き出した。サイバードが主催し約3000人の開発者が参加する「fbデベロッパーズプラス」は迷惑アプリの種類や対策をサイトで公開している。ただ「最後は利用者自身が気を付けるしかない」と話すのはネットに詳しい経営コンサルタントの坂田誠氏だ。
フェイスブックは日本でも利用者が1000万人を超える。迷惑メールが犯罪などに発展した例はまだ表面化していないが、事態の改善を図らなければ利用者離れにつながりかねない。