2022年/140分/ドイツ、オランダ、イタリア
監督:ファティ・アキン
出演:エミリオ・サクラヤ、カルド・ラザーディ、モナ・ピルザダ、アルマン・カシャニ、フセイン・トップ、ソゴル・ファガーニ
ストーリー:ジワ・ハジャビはクルド系音楽家のもとに生まれ、パリに亡命し音楽教育を受け、ドイツのボンに移り住むが、両親は離婚、貧困を味わう。ある日、街の不良たちにブチのめされ、やり返したい一心でボクシングを覚え、カター(Xatar:危険なヤツ)となったジワは、ドラッグの売人や用心棒などで金を稼ぐようになり、さらには、金塊強盗までしてしまう。世界的指名手配犯となり、逃亡中のシリアで拘束され、送還されたドイツの刑務所内でレコーディングした曲でデビュー、本物の"ギャングスタ・ラッパー"となり、音楽プロデューサーとして成功する......。破天荒な実話に基づく奇想天外なサクセスストーリー。
新聞の映画紹介欄の記事を読んでいてファティ・アキンの名前に「これは絶対観たい」!
ファティ・アキンと言えばトルコ系ドイツ人の映画監督で、その作品は音楽と深く結びついているという印象をずっと持っている。
この作品で彼の作品は6作目なのだが、この「ラインゴールド」もこれまでに観た5作同様音楽と深く結びついている。
先ずその題名、「ラインゴールド」・・・ん?ラインの黄金?ワーグナーじゃん。
主人公のカターはドイツで有名なラッパー、しかもそのデビューは刑務所内でレコーディングしたという!
彼のたどってきた道の険しさ、困難さに観ていて身体が硬直してきてしまう。
クルド人として生まれたことで、様々な差別、支配、それも暴力に満ちた、にさらされ続けながら生き抜いていく。
難民キャンプについて報道によって画像では見てはいるが、それは外側からのテントが並んでいる画像のみを見ているだけだったということに気付かされる。
そこで暮らしている人々の困難さを観客の目の前にさらけ出してみせる。
時間の流れとともに、主人公のジワ(後のカター)の生きている場所も変化する。その点からいえば、ある意味ロード・ムービーでもあるかもしれないが、でもぬぐえない、途切れないひりひり感。
しかし、そこに流れるカターを始めとするラップのパワフルで圧倒的な魅力に救われていた。
そして作品の中でワーグナーの「ラインの黄金」は関係していて、その取り合わせも面白く感じられた。