天候が連日イマイチで、晴れの日を待ちわびていた8月のとある週末。
今からちょうど20年前に、一度訪れた事のある霧ケ峰高原の奥に広がる“八島ヶ原湿原”から“旧御射山(もとみさやま)遺跡”へと再訪して参りました。
湿原散策の起点となる広場 ここから散策開始です。
八島ヶ原湿原は、標高1,630mに位置し総面積は43.2ヘクタールあるそうです。湿原の周囲には遊歩道が整備され、素晴らしい景観を見させてくれます。
湿原の周辺には、この地だけに見られる「キリガミネ」と名が付く特異種を含む年間約360種類もの植物が自生し草原に彩りを添えています。
遊歩道より見る湿原(写真クリックで拡大)
湿原は、一周90分で巡ることが出来ます。
我々は、目的地が旧御射山神社でしたので、行って引き返すルートを選択しました。
素晴らしい眺望を眺めながら遊歩道を歩くこと30分ほどで、旧御射山遺跡に到着です。
御射山社は、もともと諏訪大社が御狩神事を行った祭場で、諏訪大社上下社どちらにもあって、ここはかつて下社の元(旧)御射山社だった場所です。
現在の下社御射山社は、秋宮から北東に3キロ行った山の中に鎮座しています。
以下は、現地案内板からの転載となります。
霧ヶ峰一帯は旧石器時代の遺跡が多く、また国内有数の黒曜石の産地です。ここは旧御射山といい、諏訪神社下社大祝金刺氏の禁猟地で、太古から御射山祭が行われた所です。
鎌倉、室町時代は信濃武士、鎌倉武士が参加する全国的な大祭として盛大でした。『諏方大明神画詞』から、中世の下社御射山祭を想い描いてみましょう。
旧暦7月26日、大祝、神官、社人、御頭役(祭の当番)一行が山に登り、尾花(ススキ)で葺いた穂屋に五日間籠りました。周囲に見える人工の土壇は、穂屋の敷地跡です。別名穂屋祭りと言われる由縁です。
この頃ちょうど二百十日に当るので、風雨を鎮め五穀豊穣を祈るため狩猟を行い、その幸を山宮の神に供えました。この間奉幣、狩猟、饗膳(神と人が相嘗する式)があり、29日の矢抜き儀には鹿を射止めた者に、尾花を添えた尖矢が授けられました。
参集の武将たちは小笠懸、相撲、草鹿、武射、揚馬など競い馬乗に秀でた諏訪の武士は名声をあげ人々の心を引き付けました。また鎌倉幕府の篤い崇敬により諏訪神の武神としての信仰が確立したといわれています。
諸国から白拍子、田楽、巫女、呪師などが山に群集し、祭場は里のような賑わいであったと和歌にも詠まれています。この祭りを機縁に諏訪神が広く勧請されていきました。各地の諏訪神社の多くが27日を祭日としているのも故あることです。
江戸時代の中頃、御射山の祭場は秋宮近くの山中に遷され、以来旧御射山は遺跡地となりました。ここに鎮まる石祠を「本御射山神社」といい、建御名方神をお祀りしております。
付近には清水が湧き、風そよぐススキは秋の稔りをほうふつさせます。 旧御射山は諏訪大社下社の山宮、水霊の籠るお山であり、諏訪信仰の原点です。
尾花ふく穂屋のめぐりのひとむらにしばし里あり秋の御射山 下社大祝 金刺盛久
ススキ箸 見たばかりでも 涼しいぞ 小林一茶
雪散るや 穂屋のススキの 刈り残し 松尾芭蕉
(以上 現地案内板より)
現地案内板(クリックして拡大)
大規模な土壇跡 やはりここへ来ると気になるのがこの階段状の土壇跡です。
ここを紹介する記事などに良く「日本の古代のコロシアムとか円形桟敷式野外競技場」とか記述しているものがあるのですが、実は自分もここを再度訪れるまで、かつてここで行われた数々の競技を観戦するための観客席だと思っていました。
しかし、桟敷の様に見える場所は、実は解説文にもあるように『穂屋の敷地跡』つまり遠方からの来客者たちの為に整地しススキの穂を使って建てた簡易宿泊施設が建ち並んでいた場所だったのが真相のようです。
信濃奇勝録・下諏方舊御射山圖 “御射山の祭の話/伊藤富雄著”より転載
(絵図をクリックすると拡大します)
絵図の〇〇桟敷とある場所は、穂屋(仮屋)が建てられていた場所と思われます。(巨石好きには、絵図に書かれた石の文字や右端のカイル石など気になるところです。(^^;)
諏訪の武神としての信仰は、既に平安初期から成立していたそうですが、鎌倉幕府の崇敬によりますます盛んとなり全国に広まって行く事になります。
以前京都の烏丸通から少し入った両替町通り沿いにあるにウィークリーマンションを借り半月ほどスティした際、近所を散歩していたら御射山公園という場所があって気になっていました。
御射山公園@京都府京都市中京区御射山町(撮影:2004年7月)
四条烏丸から北へ少し入ったこの辺りは“御射山町”といい、御射山公園近くには、かつて諏訪神社が鎮座していたそうす。時の将軍足利尊氏からも崇敬熱かった神社だったそうで祇園祭には「御射山」という山鉾を出すほどだったそうです。
巨石の土台に乗った史跡碑
旧御射山遺跡全景 パノラマ写真(写真クリックで拡大)
20年ぶりに訪れた“霧ヶ峰高原” ニッコウキスゲの開花には、まだちょっと早かった様でしたが、東京から行くとなれば一泊は覚悟しなければなりませんが、自宅から高速で行けば、1時間半もかからず行くことが出来ます。
いずれまた、来年の夏にでも湿原を一周しに再訪しに行きたいと思いました。
(10/ 7写真追加)
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