ゆっくり読書

読んだ本の感想を中心に、日々、思ったことをつれづれに記します。

ノモンハン戦争

2010-08-13 20:17:57 | Weblog
今日はお盆休みなんだ。
朝の電車や会社は人が少なくて静かだった。
自分の周囲に、今日くらいのスペースがあると、
人はあえて自己主張をせず、譲り合えると思う。

さて、『ノモンハン戦争―モンゴルと満洲国』(田中克彦著、岩波新書)を読み終わった。
これは先日読んだ『墓標なき草原』への理解も補ってくれた。

ノモンハンでの戦いは、
1939年5月から同年9月にかけて、
満州国とモンゴル人民共和国の間の国境線をめぐって発生した
日本とソビエト、そしてモンゴルによる国境紛争だ。

モンゴルは、ソビエト、中国、そして満州によって分割されてしまった。
そして、ソビエトが崩壊してから、ようやくモンゴルは国史研究ができるようになった。
この本は、そういった最新の研究も盛り込まれている。

これまでのノモンハン事件に関する本は、
日本側の死者数などの話や、戦略がどうだという研究書が多かったけれど、
日本、ロシア、そしてモンゴルがそれぞれ、
どんな思惑を持っていたのかを論証する、とても面白い内容だった。

ノモンハンの戦いは、現地の日本の部隊の暴走といわれているけれど、
ロシアの人たちは、そんな勝手なことができるわけがない、と言っているようだ。
これは、ロシア人に限らず、外国の人たちがよく指摘する点だと思う。

あと、日本のアジア侵略の根拠だと思っていた、
田中上奏文が、偽文書だったという説が強いと知って、とても驚いた。

田中上奏文は、
「世界を征服せんと欲せば、必ず支那を征服せざるべからず。
もし支那にして完全に我が国のために征服せられんか、
他の小アジア、インド、南洋のごとき畏服の民族は
必ず我を敬畏して我に降服すべく、
世界をして我が国の東洋たるべきを知らしめ、
永久にあえて我が国を侵略することなからしむに至るべし」
というものだ。

高校時代に、ものすごい左翼だった社会の先生が、
授業中、日本を憎んでいるかのようにこの上奏文を語り、
その説得力がすごかったから、とても印象に残ったし、信じていた。

人が言っていることは、簡単に信じてはいけない。
少なくとも印象に残っている話は、ちゃんと自分で調べるべきだな。