ゆっくり読書

読んだ本の感想を中心に、日々、思ったことをつれづれに記します。

ブリューゲル版画の世界

2010-08-14 18:50:25 | Weblog
1週間でこれだけ育った。
ゴーヤさん、すばらしい。

1週間前と今日のゴーヤ。
 

午後は、友人と渋谷まで「ブリューゲル版画の世界」を観に行った。
黒の線による濃淡だけで風景から人間まで表現する版画は、
小さい頃からとても好きだ。
むかしはこんな挿絵がよく本に載っていた。

150点あまりが来ていて、ボリュームも十分。
ベルギー王立図書館所蔵という、とても質の高いものが多くて、
ここ最近で観に行った展示会のなかでも、満足度が高かった。

1作品が小さいし、とても細かいので、
見終わると、文字校正を猛烈な勢いでやったあとのような疲労感がある。

ブリューゲルは、構図が上手だし、発想も面白い。
それに、きっと版画にしやすい原画を描く人だったのだろう。

その原画をもとに、版画の版を作った職人さんたちも、
きっとワクワクしながら仕事をしたんだろうと思う。
関わった人すべてのレベルが高いから、ブリューゲルの版画は、
同じような他の版画に比べても、一段も二段も素晴らしい。
あの版を作った職人さんたち、名前は残っていないだろうけど、本当にすばらしい!

いい仕事を見せていただきました!という気分になった。

大きな自然の中の愛すべき人間たち、キリスト教の世界や風刺画。
「七つの罪源」シリーズのなかの「怠慢」では、
だらけた人々の周りに、たくさんカタツムリがいた。
「いやいや、カタツムリは、普通があのペースですから」と、
ブリューゲル氏がいたら、声をかけただろう。

「七つの罪源」シリーズは面白くて、いろいろ見入ってしまったけれど、
そのあとに続く「七つの徳目」シリーズは、普通で真面目で、さらっと見るにとどまった。
人肌の感じとか、布の感じとか、それはもう技術レベルは高いのだけど、
「愛徳」なんて、そのまんまだった。
あたりまえなんだけど。

真面目に、スゴく真面目に仕事をする職人さんたちが、
人間のちょっと「どうしようもないところ」を描くから、
とても面白くなる。
そんなふうに思った。

少しでも興味がある人は、ぜひ行ったほうがいいと思う展示会だった。

ノモンハン もうひとつ

2010-08-14 00:05:00 | Weblog
映画の「20世紀少年」を見ながら、
一時期、浦沢直樹氏の作品にハマっていたころのことを思い出した。

といっても、読んだことがあるのは『MASTERキートン』『MONSTER』、
そして『20世紀少年』だけだから、ハマったと言うと、ファンに怒らるかも。

『MONSTER』のラストシーンについては、きっといまでも徹夜で語れる。
『MASTERキートン』は、大学生のときに読み、将来キートン先生のようになりたいと思った。
ただし、軍隊の地獄の訓練について行くだけの運動神経も精神力もないことは、よくわかっていた。

「砂漠のカーリマン」という話を思い出し、タクラマカン砂漠が目の前に広がった。
こうなるともう、連想がとまらない。

いくつか作品中の思い出深いシーンが心に浮かび、
最後に、昨日読み終わったばかりのノモンハンに、ピタッとたどりついた。
『MASTERキートン』には出てこないテーマだけど。

『MASTERキートン』にハマっていたころ、モンゴルにもハマっていた。
いまから15年くらい前の話だ。

友人からのウワサで、満州里というところに、
すごく美しい草原が広がると聞いた。
その後、モンゴル人と満州里をはじめ、あの辺り一帯の話をする機会があった。

内モンゴル自治区とはちがい、中国の東北部とモンゴルとの国境付近には、
まだ手つかずの草原が残っていると言うことだった。

私は「行ってみたいなあ。でも、こんな不便なところおいそれとは行けない」と、
憧憬のまなざしで語っていた。
ノモンハン事件があったのはそのあたりなのに、
日本史で勉強していたのに、知識と実際の地名がリンクしていなかった。
モンゴル人に、「むかし日本とそこで戦争があったよ」と言われた。
それでも、ノモンハン事件とは結びつかなかった。

最近の高校の日本史の教科書を見たら、
ノモンハン事件による日本側の死者は、約8700名と出ていた。たしか。
一説には2万人とも言われているけど、文科省は少なめ説を採用しているようだ。

それでも、やはり、私にとってはノモンハン事件というよりも、
写真で見た、あの美しい満州里の草原なんだ。申し訳ないけど。

馬のひづめの音、馬上のモンゴル人のかけ声、
自分の靴が、少し湿った大地を踏みしめる音、
私の足に驚いて、急いで逃げる小さな虫たち、
ボーッとしていると踏みそうになる家畜のフン。
想像することは、もうたくさんあった。

そんなことを考えながら歩いていたら、踏切に突っ込みそうになった。
目の前にはアスファルトの道ではなくて、草原が広がっていたから、
もうすっかり、バーが降りていることに気がつかなかった。

だから、クルマの運転はしないことにしている。
他人に迷惑をかけることになりそうだから。
今日、改めて、事故は自分1人で、と思った。