なぜ「母殺し」は難しいのか。斎藤環著、NHKブックス
精神科医が一般向けに著した「母娘問題」。
男性の視点で、「ここはピンと来ない」と率直に書いてくれているので、
とても好感が持てる文章だった。
内容は、我が身に置き換えて「ピンと来る」ところもあれば、
「自分の状況とは、かなり違うな」と思えるところもあった。
それは当然。
母親の言葉が「呪い」だと思うようになったのはつい最近。
思い返してみると、幼稚園の頃、父や義母との関係がおかしくなりつつあった当時、
母が私に繰り返し言うようになった言葉が「呪い」のはじまり。
「私の人生は辛く悲しいことばかりで、ぜんぜん幸せではなかったけど、
あなたを産んだことだけは、本当に喜び。私の娘として生まれて来てくれてありがとね。」
聞いた話ではあるけれど、私の母の前半生は、
そりゃ小説では?というほど、不幸の連続だったようだ。
母は自分に不幸が訪れるのを、ある意味当然と思って諦めているフシもあった。
そして、上に書いたような感謝の言葉を聞くたびに、私は、
もし、私に父方の血が流れてなくて母の血だけだったら、それで私がよい子だったら、
母はそのとき本当に喜んでくれるのではないか、と思ったものだった。
幼稚園の頃、ほぼ毎晩そんなことを考えていた記憶がある。
そう。私の願望は、私の人生を、母の人生として捧げ、
母が自分のものとして生きなおすことだった。
そんなバカな話はないんだけど、これが意識ではありえた。
ここまでくると「呪い」ではなく「憑衣」だな。
でも、そんな「呪い」も近頃は少しずつ客観視できるようになってきたので、
いろいろな母との会話を思い出しては、
「それはもし思っていたとしても、言ってはいけない一言だよ。お母さん」と心の中で思って、
ようやく母とのあいだに適当な距離感というものを構築し始めた。
この距離感、結局、母が生きている間は、育むことが出来なかったなあ。
精神科医が一般向けに著した「母娘問題」。
男性の視点で、「ここはピンと来ない」と率直に書いてくれているので、
とても好感が持てる文章だった。
内容は、我が身に置き換えて「ピンと来る」ところもあれば、
「自分の状況とは、かなり違うな」と思えるところもあった。
それは当然。
母親の言葉が「呪い」だと思うようになったのはつい最近。
思い返してみると、幼稚園の頃、父や義母との関係がおかしくなりつつあった当時、
母が私に繰り返し言うようになった言葉が「呪い」のはじまり。
「私の人生は辛く悲しいことばかりで、ぜんぜん幸せではなかったけど、
あなたを産んだことだけは、本当に喜び。私の娘として生まれて来てくれてありがとね。」
聞いた話ではあるけれど、私の母の前半生は、
そりゃ小説では?というほど、不幸の連続だったようだ。
母は自分に不幸が訪れるのを、ある意味当然と思って諦めているフシもあった。
そして、上に書いたような感謝の言葉を聞くたびに、私は、
もし、私に父方の血が流れてなくて母の血だけだったら、それで私がよい子だったら、
母はそのとき本当に喜んでくれるのではないか、と思ったものだった。
幼稚園の頃、ほぼ毎晩そんなことを考えていた記憶がある。
そう。私の願望は、私の人生を、母の人生として捧げ、
母が自分のものとして生きなおすことだった。
そんなバカな話はないんだけど、これが意識ではありえた。
ここまでくると「呪い」ではなく「憑衣」だな。
でも、そんな「呪い」も近頃は少しずつ客観視できるようになってきたので、
いろいろな母との会話を思い出しては、
「それはもし思っていたとしても、言ってはいけない一言だよ。お母さん」と心の中で思って、
ようやく母とのあいだに適当な距離感というものを構築し始めた。
この距離感、結局、母が生きている間は、育むことが出来なかったなあ。