サモワールを囲んで

日本ユーラシア協会愛知県連ブログ

第98回ロシア語サロン報告

2022年11月22日 | ロシア語サロン
11月13日(日)午後1時から愛知民主会館3階の第4会議室で
第98回ロシア語サロンが開催されました。実に4年ぶりのサロン
です。今回はゲストに山崎タチアナ先生をお迎えして参加者8名が
ロシアの詩についてのお話をうかがいました。

先生のお話はまず「金の時代」の天才詩人プーシキンから始まり
ました。彼の詩には多くの下書きが残っていて 彼が何度も詩を
手直しして、豊かな語彙の中からもっともふさわしい言葉を選び
抜いたことがわかります。また彼は単純な擬音語を使わずに、
その選び抜かれた言葉で音を表現するので、読者はまるでその
場にいるように光景を思い浮かべることができるのです。

その後に続いたレールモントフもロシアの自然について美しい詩を
書きましたが彼は軍人でもありました。コーカサスでの血まみれの
戦いの後で彼は「人間は哀れなものだ。自然は気高く静かなのに、
人間だけが絶え間なく、無駄に敵対しあうのだ」と嘆きます。
ロシアのウクライナ侵攻が続く今、この言葉は重く私たちの胸に
響きます。彼は決闘をして27歳で死んでしまいました。

お話はさらに日本ではあまり知られていないバラティンスキーや
ロシアの自然を美しく歌ったフェートの紹介へ。
フェートの「つばめはいなくなった」という有名な詩について詳しい
説明がありました。チュッチェフの「春の雷雨」はロシアの学校では
必ず暗唱する詩なのだそうです。5月の初めの晴れた日の青空に雷雨が
近づいている様子がみごとに描かれているのですが その表現にも
言葉は選び抜かれ、雷雨を思わせます。そしてこの詩を読むと「覚え
やすく、記憶に残りやすい」という詩の特徴がよくわかります。それ
ぞれ詩の一部を朗読されながらお話は続きました。

後半は「銀の時代」のお話です。1917年の革命とその後の内戦の
時代にロシアから200人近くの詩人が亡命してしまいました。
中にはソ連にもどってきた人もあったのですが彼らを待っていたのは
自分自身や家族の逮捕、銃殺、生活苦、自殺、子供の餓死など悲惨な
運命でした。

この時代の最も有名な詩人はボリス・パステルナーク(亡命せず)、
マリーナ・ツヴェターエワ、アンナ・アフマートヴァ、オシップ・
マンデリシュタムです。パステルナークは1958年にノーベル
文学賞を受賞した「ドクトルジバゴ」が有名ですが、素晴らしい
詩人でもありました。

郷愁に満ちた美しい詩を書いたゲオルギー・イヴァーノフと哲学的な
詩を書いたウラジスラフ・ハダセーヴィッチは亡命した詩人ですが
ずっとロシアを愛し、恋しく思い出していました。

通訳を含めて約90分のスピーチには詩を愛する山崎先生の情熱が
ほとばしり、遠く祖国を離れてロシアを愛し懐かしんだ亡命詩人たちの
ことは涙も流されながらのお話で、参加者は熱心に耳を傾けました。

紅茶とお菓子でちょっと休憩してから、みなさんに感想をうかがったり、
質問をお聞きしたりしました。「人間はなぜ詩を書くのか」という
難しい質問も出て、先生は「これにはたった一つの答えはないだろう
が、たとえば子守歌や子供を遊ばせるときの歌は子供にとって快い
言葉が使われているはずで、それは自然に詩になっている。最初の
詩は歌であっただろうと思う」とおっしゃっていました。また天才
プーシキンが頭にうかんだことをそのままさっと詩に書いたのでは
なく、何度も推敲していたことは誰も知らなかったことでした。

詩の翻訳はとても難しく、なかなか素晴らしさが伝えられないという
話も出ました(日本ではドストエフスキーやトルストイは有名ですが
ロシアの国民詩人プーシキンは知られていません。その理由の一つは
これかもしれませんね)。ロシア語を勉強している私たちは詩人たちが
書いたその言葉を直接味わうことができるわけです。なんという幸せ
でしょう!(深く理解するには、もちろん、もっと勉強しなければ
ならないのでしょうけれど)。「ロシア語を勉強しているけれど詩は
難しそうでなかなか読めない。今日のお話を聞いて読んでみる気に
なりました。」と言ってくださった方もありました。

「ロシア人が故郷の風景として思い浮かべるのはどんな景色?」という
話から、山崎先生のふるさとについての話になり、先生から幼いころを
過ごしたロストフ州の草原の景色、その後引っ越したウクライナの町
では森がすぐそばにあったこと、また就職先のヴォルガ川中流地方の
川と山の雄大な景色についてのお話も聞きました。話がはずんで時間を
30分ほど過ぎてしてしまいましたが楽しい時間でした。

山崎先生のお話に出てきたヴォルガ川中流地方の景勝地「ジグリ」には
「ステンカ・ラージンの崖」というところがあって先生もそこに登られた
ことがあったそうです。頂上まで登ると眼下にヴォルガの流れと雄大な
風景が広がり、だれでも思わず両手を広げて上に差し上げるポーズを
してしまう、(映画「タイタニック」のヒロインのように)という
お話の後でしたので最後の記念撮影ではみんなでそのポーズをして
みました。


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