星さんぞう異文化きまぐれ雑記帳

異文化に接しての雑感を気ままに、気まぐれに

古文書は面白い!!

2006年04月30日 00時52分10秒 | Weblog

「古文書はこんなに面白い」(油井宏子著、柏書房刊)を読みました。

漢字文化に育ちながら草書体、崩し字が読めず歯がゆい思いをしていることは前にも書きました。書道の楷書→行書→草書と段階を踏んで勉強するのが正攻法であることは解っていても、手持ち時間に限りがある身ゆえ即効性のある勉強方法はないものかと思案していたときに、この本の存在を知り、渡りに舟とばかりに読んでみたわけです。

京都府のある素封家に伝わる古文書をテキストにして読み解くもので、寺子屋の話からスタートします。

寺子屋の子供相手に書かれた、ということは江戸時代の子供でも読めたはずの簡単な文書のはずです。読み進むうちに、書かれている中身は、寺子屋の校則、寺子達が守らなければならない心得であることがわかります。寺子屋の行き帰りに買い食いはするな、予習復習はきちんとやれ、寺子屋の中では他人の筆記用具をみだりに使うな等々、小学校、中学校時代に言われたことを思い出すような内容です。

しかし、驚くべきことは、当時の寺子がこれを読めたということです。愕然とします。大学を出て、サラリーマン生活を40年近く送り終えた、「大の大人」であるはずの自分にはチンプンカンプンの「絵」としか思えず、まったく読めないんです。江戸時代の識字率の高さ、なかんずく子供達の教育程度の高さにただただ驚くばかりです。

この本のよさは、崩し字がまったくわからない読者にも、懇切丁寧にどう崩されているのかを説明し、何度も何度もくどいくらいに繰り返して判読・解読方法を解説しくれるのです。そして、読めたら次にそれを声に出して何度も繰り返して「音読」するように指導しています。これが実に気持ちのいい作業なのです。

私は自分でも嫌になるほどの生来の早口ですが、この「そうろう文」を音読するには私のような早口ではサマにならないのです。「そうろう文」には独特のリズムがあって音読を繰り返すうちに、なにやら自分の早口までも矯正されるような気がするのです。気がするだけではなくて、実は間違いなく「早口矯正効果」のあることが実感されるのです。時代劇の役者に早口が少ないのは、このリズムのせいだと変なところで納得してしまいました。

寺子屋の話の次は、日本橋の呉服屋「白木屋」の病弱な小僧さんが、入社2年足らずで職場に嫌気が差し、店の品物をネコババして故郷へ逃げ帰ろうと企てながら失敗して、店に連れ戻される顛末が書かれている古文書がテキストです。昔も今も変わらぬ「社内懲戒委員会」の様子を垣間見るような面白さを発見し、小説を読むような楽しさを感じながら、読み進むにしたがって自然と崩し字の解読できる割合が高まるような構成にできているのです、この本は。

古文書ファンを増やしたいという著者の心意気、心遣いが随所に感じられる、実に素晴らしい「古文書入門書」だと思います。(他を知らないので比較はできませんが・・・)

推理小説を読むようなスリルと、江戸時代の子供に少しでも追いつけそうな興奮とを体感しながら、早口まで直してくれるなんて、本当に「古文書はこんなに面白い」と実感して、続編の「古文書はこんなに魅力的」まで購入してしまいました。

 


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