10番ホールに駆けつけると、顔なじみのstarterのJohnがいつものひょうきんな口調で、
"Hey Sanzo, where is your lady pro this morning? "
と軽口を叩きます。いつも一緒にプレイしている女房の姿が見あたらないからです。
"Being an assistant to the lady pro, I have to keep practicing even when she is taking a beauty rest. Tough life, John."
てな調子の気楽なやり取りを楽しみながらプレイ前の緊張感を解きほぐします。
Johnもわれわれと同年代でリタイア後にケロウナに移り住み、ゴルフ場のスタッフとしてアルバイトをしているシニア世代です。週2~3日働くだけでも従業員は休みの日にゴルフが出来る特典がつくので、ゴルフ好きのシニアには格好の仕事のようです。bag drop areaでのbag boy やbag girlにも同じ特典が与えられるので、ゴルフ場でのアルバイトは大学生には人気が高いようです。
一緒にプレイするsingleのBobは30歳代半ば、ズングリムックリで腕っ節も強そう。素振り(practice swing)を見るだけで飛距離に命を懸けるhard hitterである雰囲気が伝わってきます。
Bob:You guys go ahead. I will wait until the group ahead of us has gone out of sight.
前の組に打ち込みたくないから最後に打つとは飛距離に自信満々です。
私: All right, let me tee off first then.
因みにフットボールはkick off、バスケットボールはjump off、ホッケーはface offで試合開始ですが、ゴルフはtee offで始まります。出だしとしてはまずまずの気持ちの良い当たりでフェアウエイセンターをキープしました。距離もまずまずで満足です。
Bob:Good hit, Sanzo! You've got a very nice and smooth swing.
ナイスショット!の意味ではGood shot! Good hit! Great drive! などと言い、Nice shot!とは言わないようです。意味は通じますがね。飛距離を重んじるBobの目には私のショットは褒める距離でなかったらしく、スイングを褒めてくれました。なかなかの気遣いをする男ですね。
私:Thanks. Not too bad, eh?
褒められたら素直に I like that. とか That will play. と応じておきましょう。
いよいよ次はBobの打順です。tee boxでブルンブルンとクラブを振り回します。tee ground上の二つのtee marks を結ぶ線と、その線の後方ツークラブの(2 club length)範囲をtee boxと呼びます。野球のバッターボックス、相撲の土俵のようなものですから、プレイヤーが精神を集中するためのルーティン(pre-shot routines)を始めたら他の者はおしゃべりしたり物音を立てるのは厳禁です。こういう場面ではカートのバッグからクラブを出し入れしてガチャガチャ音をたてたり、プレイヤーの視野の中に入るほどtee boxの近くに立ってポケットの中の小銭やティーをカチャカチャさせるのはマナー違反です。当然のことながら、われわれは息を潜めてBobの第一打を待ちました。
ぐしゃっとつぶれるような音を残してボールがクラブヘッドを離れフェアウエイセンターに向けて飛び出しました。まさに全身全霊をこめて「ひっぱたいた」状態です。こういうシーンで使うようにと身につけた、とっておきの表現が活かせます。
Wow! What a drive! You really killed the ball, didn't you, Bob?
あれあれあれれれ・・・、次の瞬間ボールはセンターからスライスと言うより右折するような勢いでぐんぐん右前方45度に進路を変えて進みだしたではありませんか。
Turn! Hang on! Come back!
Bobが声の限りを尽くしてボールに叫び続けています。
ヤバイ!こんなときなんと言ったらいいんだろう・・・・?