星さんぞう異文化きまぐれ雑記帳

異文化に接しての雑感を気ままに、気まぐれに

ケロウナ便り(88) 秋深し

2008年10月15日 10時56分28秒 | Weblog
秋深し彼らはなにをする人ぞ

なにやら、ひたすら足元に目を凝らして落し物でも探している風情ですね。
そうなんです、あたり一面に落ちている栗の中から、開いていない栗のイガを捜しているんです。ケロウナの秋の風物詩、栗拾いの一場面です。

松茸採りと同様で、既に早朝からの先客が荒らしまわって残り少なくなった良品を必死に探しているのです。現地の人は胡桃が好みで、いわゆる「甘栗」を好んで採るのは日本人、中国人だそうです。既に中国人と思われるカップルがバケツ一杯に栗を拾い、更に下を向いて黙々と集めています。完全に出遅れたわれわれの好みを知っている係りの人が、「向こうの古木の下にはまだたくさんあるよ」と親切に教えてくれます。

熟して落ちて、開きかかったイガから茶色い顔を覗かせる大きな一級品。靴のままの両足の爪先でイガを左右に開かせ、中から大きな栗が出てくるのを見ると、枯葉の間に発見した松茸の白い頭を思い出します。松茸狩りも栗拾いも、採れた物を食べる楽しみもさることながら、この一級品を探す喜びが、実は一番の醍醐味だと気づく瞬間です。

ケロウナの対岸、オカナガン湖の西側湖岸にひろがる町WestBankにあるGellatly Nut Farmには栗の他にも胡桃 、ヘーゼルナッツ等いろいろの種類のナッツ林が広がり、地域の公園としても開放されているので、栗拾いする人のほかにもただのんびりと散策している家族連れも大勢います。栗林を抜けると、対岸のなだらかな丘陵を背景にして静かに横たわるオカナガン湖が目の前に広がり、いかにもカナダらしい、悠揚迫らぬ景色に肩の力がす~っと抜けていくような感じに襲われます。

10月も半ば近くなると日中の気温は10~16度くらいで推移し、夜間は零下5~6度にも下がります。空気中の湿度が低いためマイナス6度といっても、さほど寒くは感じず、体感温度としては日本の3~5℃くらいでしょうか。

カナダの錦秋はつとに有名ですが、それはオンタリオ州から東側の地方での話で、ここBC州では自生する木々は白樺や銀杏系が多いため「紅葉」は少なく「黄葉」に包まれます。オカナガン湖の斜面に広がるぶどう畑に西日が射して黄金色に輝く様は、極楽浄土を彷彿とさせるものがあります。(まだ見たことはありませんが・・)

ケロウナの短い秋は今が盛り。10月末にはゴルフ場も閉まり、本格的なスキーシーズンの始まる1月までは何も出来ない、退屈な退屈な「ケロウナで一番いやな季節」と呼ばれています。大自然を相手に果樹園や農業を営む人々にとっては体を休める時期であり、この時期に中南米やアメリカ南部のリゾートに避寒に出かける人たちも多くいるようです。

日本からの渡り鳥も、そろそろ羽づくろいして太平洋を渡る準備をしなくっちゃ。

ケロウナ便り(87) ほんまもん日本食レストラン

2008年10月04日 03時06分10秒 | Weblog
ケロウナの観光協会が発行する2008年版ガイドブックによれば、ケロウナには9軒の日本食レストラン、寿司バーがあります。外国人受けを狙った「フジヤマ・ゲイシャ」風の名前をつけた店が少ないので、てっきり日本人の経営かと思っていたら、中国、韓国、ベトナムその他アジア系のオウナーシェフが切り盛りするレストランばかりのようです。

寿司、刺身など魚介類の生の自然食材を多用することから、ヘルシーフードの代名詞のように評価されるJapanese foods。健康志向、ダイエット志向のカナダ人の間でも、日本食をたしなむことがインテリ層のある種のステイタス・シンボルとして受け入れられてきていることが背景にあっての日本食ブームなのでしょう。

日本人の間で「あそこが一番まとも」と評されていたレストランに3年前に一度入り、生姜の香りのまったくしない生姜焼き定食に懲りてからは、二度と足を運んだことがありません。他は推して知るべしと、その後は他の一軒も試してすらいません。Tempura, Teriyaki, Sukiyaki, Sushiが売り物のJapanese Restaurantはあっても、日本人の舌に合う本物の日本食レストランは見当たらなかったのです。

「日本の味」にこだわる日本人が少ないケロウナではやむをえないことと諦めていましたが、ついにケロウナにも「日本人の、日本人による、日本人のための」ほんまもんの、10軒目の日本食レストランが誕生しました!

オウナーシェフを初めとして、キッチンスタッフも接客のフロアスタッフも全員が日本人(正確には日系カナダ人を含む)、店の名前もフジヤマ・ゲイシャの対極を行く「ワサビ(WASABI)」。日本食通を自負するカナダ人のプライドをくすぐる一方で、普通のカナダ人にはチンプンカンプンのネーミングがなんともビミョーです。

他のJapanese Restaurantとは一線を画して、WASABIは若いオウナーの感性で「居酒屋風創作和食」を目指す独自路線を走り出しました。居酒屋系だけに、酒との相性を配慮してか、味がやや濃い目かなとの印象を持ちましたが、正真正銘のホンマモン和食店です。「似非和食」に染まったカナダ人の好みをどこまで引きつけられるか、徐々に増えつつある日本人旅行者、留学生をどこまでリピーターとして取り込めるか、課題山積ですが、なんとも頼もしい、前途洋洋たるWASABIの成長が楽しみです。

因みに、私のゴルフの師匠にしてスキーの同期生、Kちゃんの息子J君がオウナーシェフだからというのでエールを贈っているわけではありません。どれを食べても実に美味なのです。「焼きうどん」「鶏からあげ丼」「たこやき」が秀逸です。

そういえば、私のスキーとアウトドアの師匠でもある豆腐屋のHさんも、ケロウナから50キロ北にあるバーノンで、ほんまもんの和食レストラン「まほろば」の経営を昨年から始めましたので、オカナガンでの日本食事情は大幅に改善されたことになりますね。

WASABIにラーメンと揚げ出し豆腐(もちろんHさん製)でも食べに行って来ようかな!



ケロウナ便り(86) 中古車物語(3)

2008年10月03日 12時27分12秒 | Weblog
二度あることは三度ある。カウボーイからもう一度ゆっくり車を見せてくれとの電話が来て、三回目の商談に出かけて行きました。

「三度目の正直」より「仏の顔も三度まで」の予感が的中し、約束の時間より15分遅れてきて、「娘は三台のバイクを載せたいとのことで、やはりサイズに問題あって、どうも乗り気ではない」とカウボーイ。

おいおい、昨日まではそんな話は無かったじゃん。大型撮影機材が載せられるかどうかと訊いてたじゃん。あんたと同じネンキンマンだから、そりゃたしかに俺も閑だよ。でも、そんな話なら電話で済ませばよかったじゃん!声にならない私の心の叫びを聞いて聞かない振りをするかのように、カウボーイはまだ未練たらしく車の細部をチェックし続けています。そして、「もう一度15~6分試乗させてもらっていい?」だと。もうこの話し流れたんじゃなかったの?

でも、性善説を信じる私に否やはありません。ましてやお世話になっているケロウナの善良な市民のはずのオールド・カウボーイの願いとあってはオッケーするしかありません。俺も試乗するからあんたのキーも置いてって、とキーを預かったものの、今更未練たらしく試乗してナンになる(でも惜しいことしたなぁ。あの車、結構気に入ってたのになぁ・・・私も未練タラタラです)。傍らのコーヒーショップで時間を潰すこと15分、人手に渡りそこなったサイドキックの勇姿がショッピングセンター駐車場に戻ってきました。

車から降りたカウボーイ、妙に恥ずかしそうに、もじもじしながら喋りだします。

家まで行って女房に見せたら、女房がすっかり気に入って「これこれこれ!私が欲しかったのはこんな車なの!今の車は大きすぎて駐車にも難儀するし、あれはあなたが乗って。私はこれに乗るっ!」だって。"You can't win." (女房にゃ逆らえない)。娘にはつべこべ言わせないと元気だったカウボーイも奥さんの前では従順な子牛みたいになるらしく、なんともユーモラスな、憎めないオヤジです。

末娘にはさんざん踊らされましたが、末娘に代わってオッカサンが登場。オッカサンの一言で物々交換は無事に一件落着となったのでした。どこの国でもオッカサンの発言力は侮れませんね。でも、末娘は本当にいたんだろうか?カウボーイのあのはにかみようはナンだったのか?聞かぬが武士の情けかな?

紆余曲折はありましたが、スワップ成立したからには善は急げです。お互いに気の変わらないうちに、本日BC州保険事務所に出向き売買手続(売買価格ゼロの物々交換手続き)を済ませてきました。両者が書類にサインして、交換に応じてそれぞれの保険を書き換え、元のナンバープレートを新しい車に付け替えるだけでした。手続きのすべては一時間たらずで終了です。書き換えにかかった費用は11ドル。日本での手続きと経費を思うと、まさに別世界としか言いようがありません。

初めての出会いでお互いに一目ぼれ。一気に愛を育てて6日後には電撃入籍と言うに等しい愛縁奇縁。日本ではまず出来ない経験をカナダでさせてもらいました。

余計な出費無しで新しい車を手に入れた、日本とカナダのネンキンマンの物語。これで一巻の終わりです。長々とお付き合いいただき、有難うございました。

因みに、サイドキックちゃんに代わる我が家の新愛車はマツダ製のMPV というバンですが、今後の活躍に期待を込めて「MVP」と命名しました。以後お見知りおきを!

年式は訊かないのが武士の情けというものです。

ケロウナ便り(85) 中古車物語(2)

2008年10月01日 00時59分21秒 | Weblog
物々交換を言い出しては見たものの、本当にあれで良かったのか?サイドキックが向こうの車と本当に同じ価値があるのか?いささか心配になったので、早速調べて見ました。アメリカで中古車の相場を知るに際して必読の「Kelley Blue Book」がカナダもカバーしてくれていました。

Kelley Blue Book (http://www.kbb.com/)にメーカー、車種、年式、走行距離ほかの詳細データをインプットすると、「業者の買い取り価格」「個人取引の価格」「業者の販売価格」の三段階の相場が即座に表示されます。例えば、業者が6千ドルで引き取り、整備を施し綺麗に仕上げて1万ドルで売る中古車の場合、これを個人間の直接売買なら中間の7~8千ドルが相場と示されます。業者を経由することで割高になるが品質がある程度保証される「安心」を買うか、若干のリスクは伴うが割安な直接売買でコストを下げるか、選択のための判断材料データが示されます。

「FOR SALE」の張り紙をつけた車が無数に走っていること、新聞の広告欄に個人の中古車情報が氾濫している事実は、個人取引が中古車売買の形態としてかなり普及定着していることを示すものと思われます。

もっとも、私達の場合は、個人取引ではあっても「売買」ではなく「交換」しようとしているわけですから、相当先に進んでいる形態と言うべきでしょうね。見方によってはリスクだらけですよね。「性善説」を信じなくては始まりません。

閑話休題。
なんと、ブルーブックによれば、嘘じゃないかと疑いたくなるくらい、両車の三段階相場が酷似しているのです。物々交換は「アリ」なのです。サイドキックには申し訳ないけど、まさかそれほどの価値が残っていたとは気がつきませんでした。愛い奴です。それにしても、私の勘の鋭さの源はなんなんだろう?熟慮熟考が苦手で、行き当たりバッタリが信条で、失う物を持たない者の強味としか言いようがありません。

カウボーイが2回目の商談?で語ったところは、なんと私とよく似た彼の自動車観でした。

①車は輸送手段としての機能重視。新車より中古車派。

②機械音痴だから、ボンネット開けてみてもメカは分からない。エンジンルームが汚れていないか、車体の外見、エンジンの音等の感覚的判断しかできない。

③一般的にアメリカ車は新車から2~3年走って悪い所が一通り出る。アメリカ車は新車より中古車がベター。日本車はオイル交換をきちんとやり、定期点検整備をやっておきさえすれば20万キロ以上何の問題も無く走り続ける。日本車以外には乗る気が無い。

④これまでも中古車はすべて個人売買であり、中古車業者は利用したくない。

今日はスワップに向けての第二ステップで、お互いの車に試乗することと、娘のニーズに適うサイズかを具体的に検証することです。この期に及んでまで、カウボーイはサイドキックの脇に立って歩測でサイズ確認しようとしています。マニュアル見ればすべて書いてあるじゃん!お父さん大丈夫ぅ?娘さんの話って本当?

"Nothing fancy. But it's a great runner!" 試乗後の第一声です。サイドキックの本質を見抜いた、なかなかのコメントです。私も3000ccのパワーに魅了され、こいつは「お買い得」だから、スワップが成立しなくてもなんとかして手に入れたいと、すっかりその気になってしまいました。

「あとはビクトリアの娘に最終確認してから連絡する。」 またまた末娘の登場です。

4人娘のうち3人は結婚してバンクーバーに住み、28歳独身の末娘がビクトリアで写真家として仕事をしている、奥方はケロウナ総合病院(先日破傷風でお世話になった、あの病院です!)で看護士として働いていると淡々と語る70歳のオールド・カウボーイに嘘は無さそうですが、商談不成立の場合の布石として娘を「方便」に使っているのではないかと疑いたくなるほどの慎重さです。辛抱強いカウボーイではあります。

あんまりグジャグジャ言うんならやめちゃうぞぉ!