現役サラリーマンであった1990年代にカリフォルニア州で自動車を運転していた頃から気になっていながら、意味の分からなかったことがあります。Adopt a Highwayと書かれた立て札というか小さな看板のようなものでした。ハイウエイの出入り口近くに立てられていますが、割合と小さな看板であるため、高速で運転してると細部にまで目を通すゆとりがなく、疑問を晴らさずに放置して今日に至ってしまいました。
高校時代のアメリカ留学はホストファミリーの家族の一員となる建前のプログラムでしたから、This is our adopted son from Japan, Sanzo.と紹介され、「おれは貰われてきたのか?」とちょっと驚いた記憶があります。「里親になる」「子供を養子にする」意味のadoptです。Let's adopt this solution to solve that problem.で「採り入れる」「採用する」と訳す、あのadoptです。その延長からは「highwayをadoptする」ことの意味が分からなかったのです。
ケロウナで目にしたAdopt a roadなる看板が、長年眠っていた私の疑問を呼び覚ましました。アメリカのHighwayがケロウナではRoadと書かれている違いはありますが、その看板の数は10年前よりも間違いなく目立つ存在に育っているように感じられます。
何人かの友人に聞いても確答が得られませんでしたがインターネットで答一発でした。便利な世の中になったものです。詳細は下のウエブサイトを見てください。
1985年にテキサス州でスタートしたハイウエイの美化運動で、いまやアメリカ合衆国50州のうち49州が採り入れている活動であり、お隣のカナダでも広く普及している運動なのです。ウエブサイトはワシントン州のものですが、どの自治体にも似たようなサイトがあり、運動の更なる普及を呼びかけています。
道路のごみ拾い、雑草取りなどの美化活動に実際に労働奉仕するボランティア活動からスタートして、清掃は専門業者に任せてその費用に充てるための資金を寄付で集める運動に発展したようです。地方自治体と一般市民・企業とが共同で進める運動で、ハイウエイHighwayにとどまらず一般道路Roadまでも対象とする幅広い運動に発展したようです。
道路美化のための資金を寄付をした個人・団体は道路の一定区間の「里親」と認定され、その道路にたてる看板にその個人・団体の名前が記されて、いわば顕彰されるとの見返りがあります。環境にやさしい企業・団体とのイメージアップにつながるので大企業が大規模な寄付をこぞって進めるとの好循環も産んでいるようです。
持てる者が持たざる者を助ける、自分の生活を少し切り詰めてでも他者への手助けを惜しまない、奉仕精神の豊かなアメリカ人、カナダ人の懐の深さを表す運動と思うのは思い入れが強すぎますかねぇ?
ポイ捨てされた空き缶、空き袋が目立つ日本の道路をついつい思い出してしまい、公徳心の彼我の差を痛感するとともに、「おらがみち運動」なんてのが日本でも始まらないかなと期待してしまいます。