ローカル線の旅の話。今回は富山県です。
高岡市には路面電車が走っている。泊まったホテルの前の道を電車が駆け抜けていった。
少し歩いた所にJR氷見(ひみ)線の越中(えっちゅう)中川駅があった。町中の小さな駅は高岡駅に向かう高校生で賑わっていた。私は逆の方向の氷見(ひみ)行きに乗る。
氷見線はしばらく高岡の町中を走ると、やがて製紙工場の工業地帯に入った。あまりローカル線っぽくない風景だけれど車両は古びたディーゼルカーで風情はある。
伏木を出た辺りから前方に日本海が見えてきた。線路は海に向かって真っすぐ伸び、だんだん海が大きく見え始めた頃、直角に左に曲がった。そこからは海岸線の横を走る。義経と弁慶が雨宿りをしたという雨晴(あまはらし)海岸と雨晴駅を過ぎると終点の氷見。
氷見は北前船の港町でブリが名物だけど、まだ朝なのでそういう気分になれずにいると少年が写真を撮ってくださいと声をかけてきた。駅名標と少年の2ジョットを撮ってあげた。
少年は新宿区に住む高校生で周遊券で北陸を旅していた。私も同じ切符だけれど、それは特急と急行の自由席がタダになるので便利だからだ。北陸は特急が多い。しかし彼はとんでもない使い方をしていた。大阪~新潟を走る夜行急行「きたぐに」の自由席を宿代わりにしていたのだ。自由席だから座席である。
今日もこれから新潟方面に移動して夜は大阪行の「きたぐに」で寝るそうだ。明日は福井県あたりをブラブラして新潟行の「きたぐに」で寝るのだろう。そんな旅を10日ほどするらしい。
そんな彼と旅の話をしながら高岡行きに乗って氷見線を引き返した。訪れた駅で記念写真を撮ってるという彼の話は明るかった。
高岡駅に着き、金沢方面のホームに向かうために跨線橋の上で彼と手を振りながら別れた。「良い旅を!」と、お互い笑顔だ。いろんな形の旅がある。だから面白いのだなと後ろ姿を見送った。