とぎれとぎれの物語

瀬本あきらのHP「風の言葉」をここで復活させました。小説・エッセイをとぎれとぎれに連載します。

逸材現る

2013-08-14 06:34:16 | 日記
逸材現る




「ペール・ラクロワの家」ポール・セザンヌ[ナショナル・ギャラリー1873収蔵 (ワシントン)]

 セザンヌには民家を描いた作品がいくつかある。構図、色彩配置ともに自由な発想で描かれている。それでいて、見る者に臨場感を感じさせる。さすがだと私は思っている。


 彩湖の会の活動が動き出しました。資金は最初はご縁市場の関係者が出資するという形である程度の額に達しました。協力していただく農家が十軒以上になったので、募集を開始したところ男女合わせて6名が出雲の地に集まりました。寄宿先の割り当てが終わり、この会は実際に動き出しました。人数は、演劇志望が一番多く、次いで絵画志望、焼き物志望の順でした。・・・そういう情報を娘の治子が電話で教えてくれました。


・・・それから、農場の岡田さんから聞いた話だけど、・・・ああ、郁子さんが以前働いていた農場の岡田さん、覚えてる。

 何言ってるんだ、忘れはしないよ。

 ごめんなさい、その岡田さんの近所の農家、・・・確か近本さんだったと思う、その農家に凰佐久良(おおとり さくら)という舞台経験のある方が来たらしいの・・・。

 舞台俳優がどうして・・・。

 今までミュージカルのような音楽中心の劇をしていて、躓いたと言うと失礼だけど、まあ、自分には別の道がふさわしいと考えだしたらしいの。

 でも、どうして農作業してまで・・・。

 そこなんだけど、自分を見つめなおしたいと思ったらしいの。すごく体格がよくて、力仕事もこなせるし、郁子さんのように農業機械の運転もできるみたいで、もう、近本さんの家族に溶け込んで楽しんで作業しているらしいの。

 へえー、それは有望だな。で、古賀所長はその方にどういう指導方針を示しているんだ。

 所長さんは、やはり、新阿国座の一つの看板にしたいと仰っているみたい。

 みたいって、直接聞いたんじゃないのか、

 いや、私は美術館の坂本さんから聞きました。

 そうか、・・・おおとり さくら、いい名前だ。ぜひ大舞台に立たせたい。・・・それで湖笛の松江さんには連絡したのか。

 そりゃ抜け目がありません。松江さんはその人を知ってました。歌が旨いし、踊りもできる、演技も抜群、湖笛の新しい舞台が実現する、と言ってました。

 そんな人なら湖笛で修業する必要はないと思うけど・・・。

 お父さん、湖笛を低く見ているんじゃないの、失礼ね。その方は新しい演技を身につけたいと思って出雲に・・・。

 ごめん、ごめん、分かった。彩湖の会の見通しが明るくなった。・・・私はそう言いながら笙子さんのことを考え、旨くコンビを組んでほしいと願っていました。

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