逃げるのは今だ
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「女性の頭部の習作」ウィリアム・アドルフ・ブグロー作(1898年)
ブグロー作の数多の女性像の中で「習作」という言葉がつく作品はこれだけだと思うが・・・。それにしても拡大画像を見ると、極めて細密に描かれている。完成度の高い作品である。モデルが素晴らしいのか、描く技法が優れているのか、ぐっと引き込まれる。ブログ連載500回を飾るにふさわしい名作である。これもご縁というものである。
私は春子さんという「母」に出会ってからしばらく何もできくななっていました。私は過去から抜け出たはずだったが、また過去に引き戻されたような気持ちになり、これからどうしていいか分からなくなっていました。「見守る」。何をどうすればいいのだ。無為、無作。それはどういうことか。何もしないでいいということか。いや、どうも違うようだ。どうやら私はいろんなことを抱え込みすぎたようだ。長柄さんとの出会いから予想もつかない世界に引っ張られて出てしまった。絵画、演劇、陶芸。私はちっとも得意ではない。そういう男があれこれ口を出していた。私は特定の女性に関心を持っていたのかもしれない。そういうやましい心が根底にあったからこういう風に悩んでいるのかも知れない。
そうだ。何事もご縁だと考えていた。ご縁が新たなご縁を生み、人間関係が莫大広がってきた。これからそういう一芸に秀でた逸材と無能な私はどう関わっていけばいいのか。そうだ。ご縁というものは人を拘束する力が潜んでいる。ご縁だからとすべてを喜んで受け容れていた。どんどんそのご縁の縄が私にからまって身動きがとれなくなっている。やっと私は気がついた。また、新たな若い人材がここ出雲に集まってきた。そういう若者たちの将来を素人の私はどう保証するのか。全く分からない。・・・そうだ、逃げよう。逃げるのなら今だ。今しかない。・・・そうだ。逃げよう。今しかない。夜中、うなされるようにそう呟いていると、携帯の呼び出し音が鳴った。私は最近着メロは「ジュピター」にしている。特に理由はない。夜中の「ジュピター」はこの世のものではないような音色に聞こえました。
もし、もし、畝本ですが・・・。
ああ、俺だ、俺だ。ご免、こんな夜更けに。・・・長柄さんだった。
何ですか。
いや、何だか変な夢を見てね。
どんな・・・。
お前がどこかへ行ってしまうのではと思ったんだ。
えっ、まさか。
そうか、それで安心した。お前、この前お母さんの妹に会ったんだって。
ええ。誰が喋ったんですか。
誰でもいい。・・・おい、お前は、今度農家にやってきた若者たちを見捨てはしないだろうな。
まさか。
そうか。それならいいが・・・。
で、何の用事ですか。
若者見守り隊を作ろう。
見守り隊ですか。
そうだ。いろいろ口に出せない悩みや不安を抱えていると思う。なに、難しく考える必要はない。農家に出向いて雑談の相手をしてやれば気持ちがほぐれるかもしれない。
ほぐれる。
そうだ。それが出来るのはお前と私しかいない。当事者同士は気を使うからな。
ええ、ええ、それはいいですね。・・・私はそれまで考えていたこととは全く違う返事をしていました。
東日本大震災へのクリック募金
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「女性の頭部の習作」ウィリアム・アドルフ・ブグロー作(1898年)
ブグロー作の数多の女性像の中で「習作」という言葉がつく作品はこれだけだと思うが・・・。それにしても拡大画像を見ると、極めて細密に描かれている。完成度の高い作品である。モデルが素晴らしいのか、描く技法が優れているのか、ぐっと引き込まれる。ブログ連載500回を飾るにふさわしい名作である。これもご縁というものである。
私は春子さんという「母」に出会ってからしばらく何もできくななっていました。私は過去から抜け出たはずだったが、また過去に引き戻されたような気持ちになり、これからどうしていいか分からなくなっていました。「見守る」。何をどうすればいいのだ。無為、無作。それはどういうことか。何もしないでいいということか。いや、どうも違うようだ。どうやら私はいろんなことを抱え込みすぎたようだ。長柄さんとの出会いから予想もつかない世界に引っ張られて出てしまった。絵画、演劇、陶芸。私はちっとも得意ではない。そういう男があれこれ口を出していた。私は特定の女性に関心を持っていたのかもしれない。そういうやましい心が根底にあったからこういう風に悩んでいるのかも知れない。
そうだ。何事もご縁だと考えていた。ご縁が新たなご縁を生み、人間関係が莫大広がってきた。これからそういう一芸に秀でた逸材と無能な私はどう関わっていけばいいのか。そうだ。ご縁というものは人を拘束する力が潜んでいる。ご縁だからとすべてを喜んで受け容れていた。どんどんそのご縁の縄が私にからまって身動きがとれなくなっている。やっと私は気がついた。また、新たな若い人材がここ出雲に集まってきた。そういう若者たちの将来を素人の私はどう保証するのか。全く分からない。・・・そうだ、逃げよう。逃げるのなら今だ。今しかない。・・・そうだ。逃げよう。今しかない。夜中、うなされるようにそう呟いていると、携帯の呼び出し音が鳴った。私は最近着メロは「ジュピター」にしている。特に理由はない。夜中の「ジュピター」はこの世のものではないような音色に聞こえました。
もし、もし、畝本ですが・・・。
ああ、俺だ、俺だ。ご免、こんな夜更けに。・・・長柄さんだった。
何ですか。
いや、何だか変な夢を見てね。
どんな・・・。
お前がどこかへ行ってしまうのではと思ったんだ。
えっ、まさか。
そうか、それで安心した。お前、この前お母さんの妹に会ったんだって。
ええ。誰が喋ったんですか。
誰でもいい。・・・おい、お前は、今度農家にやってきた若者たちを見捨てはしないだろうな。
まさか。
そうか。それならいいが・・・。
で、何の用事ですか。
若者見守り隊を作ろう。
見守り隊ですか。
そうだ。いろいろ口に出せない悩みや不安を抱えていると思う。なに、難しく考える必要はない。農家に出向いて雑談の相手をしてやれば気持ちがほぐれるかもしれない。
ほぐれる。
そうだ。それが出来るのはお前と私しかいない。当事者同士は気を使うからな。
ええ、ええ、それはいいですね。・・・私はそれまで考えていたこととは全く違う返事をしていました。
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